世界で唯一の天職【配信者】と判明した僕は剣聖一家を追放される〜ジョブの固有スキルで視界を全世界に共有したら、世界中から探し求められてしまう〜

マグローK

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第48話 姫様は自分の兵を話したい:姫セスティーナ視点

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「それで? お姫様一人残ってなんのつもりだ?」

「なんのつもり、とは、どういった意味でしょうか」

 この様子だと、私の考えは読まれていると思っておいた方がよさそうですね。

 とぼけてみたものの、そう時間は稼げないでしょう。

 利用したことのあるお店で軽くお話をしようと思っただけですが、思っていたよりも難しいかもしれません。

 リストーマ様を狙う強力な気配。先ほどの弟さんは確実に違うでしょう。

 今、目の前にいるお二方こそ、それらに該当すると思っていますが、それだけ確かめられればよしとしましょうか。

「本当にただ感謝したいだけなのか?」

「私としてはそのつもりでしたが」

「……そう、なのか……?」

「それならあの子をここに置いておいてもいいわよね? そうしないってことは、何か考えがあるんじゃないかしら?」

 警戒すべきと思っていた方はさほどでもなく、付け入るスキのありそうな方が油断できない。

 会話とは、このようなものですね。

「コイツの言葉で考え直すのは癪だが、ワタシたちと彼を遠ざけたということは、何か考えがあってのことか?」

「どうでしょう」

「シラを切るのか? これ以上続けるつもりなら……」

 これ以上道化を演じると、おそらく私を含め誰も助からない。

 いえ、リストーマ様を除いて、誰も助からないでしょう。

 今の重圧だけでも十分力はわかりましたし、私の本当にやりたかったことに移ることにしますか。

「すみません。その通りです。お二方とリストーマ様と距離を置きたかったんです。お二方ともキレイで、何より能力が高い。私の考えも見透かされているようですし。その、リストーマ様を取られたくなかったので……」

「それは当たり前よ。だってアタシたちいててててて!」

「余計なことを言うな。どうせ信じない」

「なら言ってもいいでしょ?」

「本当に仲がいいんですね」

「よくない。そこは否定させてもらう」

「えー。ひどーい」

 世界が違いすぎて、何を考えているのかまったく予想がつきません。

 本当に、お話の相手として私の求めていたような方々です。

「ささ、食べないのはもったいないです。好みはありますか? お好きなものをどうぞ。ただの香りがいいお紅茶です」

 この流れからでは信じてもらえないかもしれない。

 だから、出てきた紅茶を私から口に運ぶ。

 いい香り。

 本当はゆっくりリストーマ様と楽しみたいものですが、リストーマ様は忙しそうにしているので、そこは我慢です。

「はあ、美味しい……。それで、その、お話をしませんか? 本来の目的はそちらですので」

 二人して顔を見合わせてから、お二人もそっと紅茶に口をつけた。

「ふむ。不要と断じていたが、これは面白い」

「普通に美味しい!」

「お口に合ってよかったです」

 こうしているだけなら、危険度は低いように感じられるものでも、国に接近していた極大の反応は目の前の二人でしょう。

 この二人にリストーマ様が話しかけられたからこそ、私は少し取り乱してしまいました。

 それだけじゃありません。ここ最近、他のことでも恥ずかしいところをさらしてしまいました。

 素直に助けていただいた好意は感じていたものの、それ以上は私もあまりよくわかっていませんでした。

 だから話したいのです。最近は、リストーマ様のお力になりたく、さらにはもっと親密になりたい。そんな気持ちを。

 そのうえ、リストーマ様が他の方といると、胸が落ち着かなく、自分が自分でなくなったようになってしまうこの気持ちを。

 超常と言えそうな目の前のお二方だから、素直にお話しできるというもの。

「率直に聞きます。お二方はリストーマ様のどこがお好きですか」

「……は? なんのことだ?」

「あっははっ! そういうこと? そういうことが話したかったの?」

「……わ、笑わないでください。これでも、勇気を出して聞いたのです……」

 もう少し優しく受け止めてくれるかと思っていたのに、笑われてしまった。恥ずかしい……。

 もしかしたら、これが強者なりの反応なのかもしれないのですが、私には判断がつきません。

「恋バナってやつだ! 姫さんもそういうお年頃なんだねぇ」

「話についていけていないのだが」

「お二人になら話しても問題がないかと思って。それに、今、この店の方々は、私たちの話を記憶できないようにしてありますから」

「ふぅん。そこまでしてくれたんなら、乗らないわけにはいかないわねぇ」

「だから、なんの話だ?」

「リストーマって子のどこがいいのかって聞いてるの」

 考え込む白い女性。

 名前も聞けたらよかったのですが、ここではそのままにしておきましょう。

「……力がある。優秀。能力が高く魔獣相手にも器用に立ち回れる。とかか……? わ、わからん! 急に言われてもわからん!」

「ふっへー。照れちゃってー。かわいい!」

「黙れ! そういう貴様はどうなんだ!」

「え? そうねぇ……」

 今度は黒い女性が考えだしました。

 でも、リストーマ様のお力は確かに魅力的ですし。そうですね……。

「流されないところは見どころだけど、アタシとしては気に食わないところでもあるかな。ま、なんにせよ。力があるってことは否定しないし、そこは惹かれるところ。あと、ただ流されないだけじゃなくて、相手を見かけだけで判断しないってのが、厄介だけど、人間なら美点なんじゃない?」

「ふふっ」

「貴様、笑われてるぞ」

「違うわよ。あれは、嬉しいのよ」

「は?」

「あ、あの……すみません。人の話を聞いて笑ってしまうなんて……。でも、おっしゃる通り、嬉しくなってしまいました、リストーマ様の魅力を他の方から聞けることなんてなく、こんな体験初めてで」

 思わずほほがほころんでしまうなんて……。

「でも姫さん? アタシたちにだけ言わせて、自分は言わないってのはフェアじゃないんじゃない?」

「そう、ですね。でも、リストーマ様には内緒にしてくださいね?」

「わかってるわかってる。それで? 姫さんはどこが好みなのさ」

「……リストーマ様はお優しいんです。名も知らぬ時から私を助けてくださり、力になってくださる。それを謙遜するところが、また謙虚で素晴らしい方なんです」

「優しい、か」

「そうだろうねぇ」

「でも、私は、そばにいてくれるだけでいいんです。リストーマ様だけなんです。私をただの女の子として扱ってくださるのは、他の方はもっと気品ある私を求めているので……」

 ずっと一緒にいれたらいい。それが私の素直な気持ちです。

 でも、私はリストーマ様の可能性まで縛る権力は持っていません。

 今の関係さえ本来なら過干渉ですが、少しの間だけでもこんな夢のような時間を過ごせたら……。

「人は楽しそうでいいな……。そうだ。あまり長居しているとさすがに迷惑だろう」

「まだ時間は」

「いいのいいの。そこの人たちに負担でしょ。アタシたちの目的にも、ちょっと難しくなりそうな雰囲気だし」

「そう、なのですか……」

「また会える。さらばだ」
「バイバイ」

「……っ。消え、た……?」

 まるで化かされていたような気分です。

 でも、確かに、飲み切ったカップがあって、食べたお菓子はなくなっている……。

 不思議な方たちでした。

 それに思っていたよりも、危険度は低そうで安心しました。

「ありがとうございました」

 きっとあの方々なら大丈夫でしょう。

「大丈夫でしたか!」

「リストーマ様? ええ。大丈夫でしたよ?」

 なるほど、外からリストーマ様の気配を感じて……。

 ただものではなかったようですね。

 でもやはり、

「……そういうところですよ。リストーマ様」
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