57 / 69
第57話 悪魔遊び:悪魔メフェ視点
しおりを挟む
~悪魔メフェ視点~
「ババアども! よくも、母様をおおおおお!」
「あ、いたんだ。存在が希薄すぎて気づかなかった」
「……! んだとお! よくもかわしたな!」
さすがにノルキーちゃんのやったことだから、ザコな彼の母を戻してあげらんないけど、仲良しなんだなぁ。
この二人は。
「一撃かわしたくらいで調子に乗るなよ。ザコ呼ばわりしてたくせに。お前らは俺に勝ったことは一度もないんだからな」
「あっはは。まだ負けてないつもりなんだ? あーんな恥をさらすような形で逃げてったのに?」
「くっ。黙れ黙れ黙れえ! あれはお前らに負けたんじゃないからな!」
「でも、不意打ち狙いとは卑怯だね」
「違う! これは、そんなんじゃない!」
しっかし、以前よりもさらにでたらめな動きで剣を振り回してくるけど、当たらない当たらない。
面白いくらいに当たらない。
「母親がいなくなっちゃったことがそんなにさみしいの? かわいそうにねぇ?」
「うるさいうるさい!」
「あーあ。泣いちゃって。さみしいんでちゅーって?」
「うああああ!」
幼稚だなぁ。
からかいがいがあるなぁ。
バランス感覚がないしスキだらけだから、ちょっと押してあげるだけで転んじゃった。
「うっ……」
ノルキーちゃんと一緒でなかなか好きなようにできなかったし、ちょっと興奮してきたかも。
「負けてないなんて、どーの口が言ってるのかなぁ?」
「ワタシの出る幕はなさそうだな」
「止めないの?」
「そいつに加減は必要ない」
「そっか。じゃあ遠慮なく」
「へっ。一人ずつか。ヨユーヨユー」
「アタシたち二人を相手にするつもりだったの? 無理よアンタじゃ」
「なめるな。俺はまだ本気じゃないんだ」
「それじゃ、見せてもらおうかしら? その本気ってやつ」
「ふん。今までのを俺の実力だと思ってるなら、痛い目見るぞ」
「おーこわー」
今ならノルキーちゃんに何も言われず、鬱憤晴らしができそうだし。チャンスチャンス。
「準備運動はこれくらいにしとくか」
「へー、準備だったんだ。長いねぇ」
「俺の勝手だろ」
「そうだね。でも、まるでアタシたちが悪みたいに言ってたけどさ。アンタは自分の母親が飛ばされる瞬間、怖くて動けなくなってただけでしょ」
「なっ。そ、そんなことはない! 俺が来た時にはもう」
「えー。嘘だよー。だってここ、なにも起こった様子はないよね? 来た時にはもういなかったんなら、どうして母親の仇討ちみたいにアタシたちを責められるわけ?」
「……」
「図星? 図星かな? いいねぇその顔。いい感情。全部の光景を見てたのに、一人で動けなかったから他人を責めて、情けない自分を肯定してたんでしょ? ああいい。久しぶりだわぁ。ああ。すごくいい」
「……うるさい」
「なに?」
「うるさいってんだよ」
「そればっかりだなぁ。根性なし、意気地なし」
「……それは……」
「そろそろ認めなよ。誰よりも才能がないって。誰よりも力がないって。誰よりもひ弱で、両親に守ってもらわないとなにもできないってことを」
「黙れ! いい加減怒ったからな」
はあ。
アタシには感情なんて手に取るようにわかるのに。
隠したって無駄なのにね。
「ちょっとだけ自覚してるから、がんばって否定してないと自分を保てないってこと、アタシにはわかってるよ? ね? 認めちゃおうよ」
「うるさいうるさいうるさい! 俺はザコじゃない。あの野郎の相手をした時は手加減してたんだ。あんたら二人くらいなら、軽くぶっ飛ばしてやるんだからな」
「ほら、ほら。どこから来る? 今のところ攻撃は当たりそうもないよ?」
「うおおおお!」
母親の方は仮にもノルキーちゃんの正体に勘づいてたのに、こっちの子はオーラを出しても気づけないくらいには余裕がないみたい。
残念な生き物だなぁ。
こうまでしないと自分を保てないなんて。
ま、アタシにとってはそこがかわいいんだけどね。
「ふふっ」
「なにを笑ってやがる。今のをかわしたからって、それで終わりじゃないからな!」
「もしかしてさ、一回取り押さえられてたこと忘れちゃった? ねえ? そうなの?」
「やめろぉ! それ以上言うなー!」
ビュンビュン振っても当たらない。
本当に才能ないのかな?
「パキン!」
「え、どうして俺の剣が……」
「はーい。ざーんねん。武器がなくっちゃ戦えないねぇ」
「……」
「もう少し早く人の心を持ってたなら、こんなことにならずに済んだかもしれないのにね。情けないなぁ」
剣にも見放されて、能力は元からなくって、かわいそうな子。
とーってもかわいそう。
ぐずぐずしたドス黒い感情が渦巻いてて、そんな感情が刺激的でいい。
人間相手はこうでなくっちゃ。
「う、うあああああ!」
「あーあー。今度は拳? 女の子相手に拳で?」
「うあああああ!」
「もう言葉も話せないくらいには理性が飛んじゃってるのかな」
拳だって、でたらめに振っても当たらないのに。
叫び声うるさいし、これ以上はもう味わえなさそうだなぁ。
「ね、アンタの母親とおんなじところへ連れてってあげるって言ったら、どうする?」
「うあ、あ?」
「どう? 興味湧いちゃった? 湧いちゃったんでしょ」
「そんなこと、できるのか?」
「できるよ。じゃ、合意ってことで、行っちゃおー!」
「うああああああ!」
綺麗に飛んでった。多分、おんなじ方向だね。
「ババアども! よくも、母様をおおおおお!」
「あ、いたんだ。存在が希薄すぎて気づかなかった」
「……! んだとお! よくもかわしたな!」
さすがにノルキーちゃんのやったことだから、ザコな彼の母を戻してあげらんないけど、仲良しなんだなぁ。
この二人は。
「一撃かわしたくらいで調子に乗るなよ。ザコ呼ばわりしてたくせに。お前らは俺に勝ったことは一度もないんだからな」
「あっはは。まだ負けてないつもりなんだ? あーんな恥をさらすような形で逃げてったのに?」
「くっ。黙れ黙れ黙れえ! あれはお前らに負けたんじゃないからな!」
「でも、不意打ち狙いとは卑怯だね」
「違う! これは、そんなんじゃない!」
しっかし、以前よりもさらにでたらめな動きで剣を振り回してくるけど、当たらない当たらない。
面白いくらいに当たらない。
「母親がいなくなっちゃったことがそんなにさみしいの? かわいそうにねぇ?」
「うるさいうるさい!」
「あーあ。泣いちゃって。さみしいんでちゅーって?」
「うああああ!」
幼稚だなぁ。
からかいがいがあるなぁ。
バランス感覚がないしスキだらけだから、ちょっと押してあげるだけで転んじゃった。
「うっ……」
ノルキーちゃんと一緒でなかなか好きなようにできなかったし、ちょっと興奮してきたかも。
「負けてないなんて、どーの口が言ってるのかなぁ?」
「ワタシの出る幕はなさそうだな」
「止めないの?」
「そいつに加減は必要ない」
「そっか。じゃあ遠慮なく」
「へっ。一人ずつか。ヨユーヨユー」
「アタシたち二人を相手にするつもりだったの? 無理よアンタじゃ」
「なめるな。俺はまだ本気じゃないんだ」
「それじゃ、見せてもらおうかしら? その本気ってやつ」
「ふん。今までのを俺の実力だと思ってるなら、痛い目見るぞ」
「おーこわー」
今ならノルキーちゃんに何も言われず、鬱憤晴らしができそうだし。チャンスチャンス。
「準備運動はこれくらいにしとくか」
「へー、準備だったんだ。長いねぇ」
「俺の勝手だろ」
「そうだね。でも、まるでアタシたちが悪みたいに言ってたけどさ。アンタは自分の母親が飛ばされる瞬間、怖くて動けなくなってただけでしょ」
「なっ。そ、そんなことはない! 俺が来た時にはもう」
「えー。嘘だよー。だってここ、なにも起こった様子はないよね? 来た時にはもういなかったんなら、どうして母親の仇討ちみたいにアタシたちを責められるわけ?」
「……」
「図星? 図星かな? いいねぇその顔。いい感情。全部の光景を見てたのに、一人で動けなかったから他人を責めて、情けない自分を肯定してたんでしょ? ああいい。久しぶりだわぁ。ああ。すごくいい」
「……うるさい」
「なに?」
「うるさいってんだよ」
「そればっかりだなぁ。根性なし、意気地なし」
「……それは……」
「そろそろ認めなよ。誰よりも才能がないって。誰よりも力がないって。誰よりもひ弱で、両親に守ってもらわないとなにもできないってことを」
「黙れ! いい加減怒ったからな」
はあ。
アタシには感情なんて手に取るようにわかるのに。
隠したって無駄なのにね。
「ちょっとだけ自覚してるから、がんばって否定してないと自分を保てないってこと、アタシにはわかってるよ? ね? 認めちゃおうよ」
「うるさいうるさいうるさい! 俺はザコじゃない。あの野郎の相手をした時は手加減してたんだ。あんたら二人くらいなら、軽くぶっ飛ばしてやるんだからな」
「ほら、ほら。どこから来る? 今のところ攻撃は当たりそうもないよ?」
「うおおおお!」
母親の方は仮にもノルキーちゃんの正体に勘づいてたのに、こっちの子はオーラを出しても気づけないくらいには余裕がないみたい。
残念な生き物だなぁ。
こうまでしないと自分を保てないなんて。
ま、アタシにとってはそこがかわいいんだけどね。
「ふふっ」
「なにを笑ってやがる。今のをかわしたからって、それで終わりじゃないからな!」
「もしかしてさ、一回取り押さえられてたこと忘れちゃった? ねえ? そうなの?」
「やめろぉ! それ以上言うなー!」
ビュンビュン振っても当たらない。
本当に才能ないのかな?
「パキン!」
「え、どうして俺の剣が……」
「はーい。ざーんねん。武器がなくっちゃ戦えないねぇ」
「……」
「もう少し早く人の心を持ってたなら、こんなことにならずに済んだかもしれないのにね。情けないなぁ」
剣にも見放されて、能力は元からなくって、かわいそうな子。
とーってもかわいそう。
ぐずぐずしたドス黒い感情が渦巻いてて、そんな感情が刺激的でいい。
人間相手はこうでなくっちゃ。
「う、うあああああ!」
「あーあー。今度は拳? 女の子相手に拳で?」
「うあああああ!」
「もう言葉も話せないくらいには理性が飛んじゃってるのかな」
拳だって、でたらめに振っても当たらないのに。
叫び声うるさいし、これ以上はもう味わえなさそうだなぁ。
「ね、アンタの母親とおんなじところへ連れてってあげるって言ったら、どうする?」
「うあ、あ?」
「どう? 興味湧いちゃった? 湧いちゃったんでしょ」
「そんなこと、できるのか?」
「できるよ。じゃ、合意ってことで、行っちゃおー!」
「うああああああ!」
綺麗に飛んでった。多分、おんなじ方向だね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる