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第62話 街の雰囲気がおかしい
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なんだろう。普段こんなことないのに街の人たちが騒がしい。
「なんだかただならぬ雰囲気だけど、いつもこんな感じなの?」
「ううん。そんなことない。普段ならもっとみんな楽しそうにしてるんだけど……」
今日はどういうわけか緊迫した雰囲気だ。
少し、リトートが僕を襲おうとした時に似ている気がする。
「ん? あれは……」
「どうしたの?」
「ついてきて」
なんだか嫌な予感がする。
見覚えのある武器が見えたような、いや気のせいであってくれ……。
「すみません! すみませんすみません」
「こりゃひでぇな。誰のしわざだよ」
「助かるのか?」
「なあ、なあ。誰か!」
「大丈夫ですか!」
「……い、一応……」
「ひどい……」
息はしてるけどって感じだ。
ケガどころの騒ぎじゃない。
傷の具合はサーピィのものと似ている。場所も近い。
おそらく同一人物によるしわざ。
「きみ! 勝手に近づいちゃ」
「待て。あなたはリストーマ様ではありませんか?」
「そう、ですけど……」
「リストーマ? 誰です。とてもこの状況を解決できるようには」
「説明は後だ。彼なら何か考えがあるはず。お願いします」
「は、はい……」
なんだったんだろう。
い、いや、任されてしまったんだ。やれるだけやってみよう。
とはいえ、僕に力があればと悔やんでも仕方ない。
僕だけじゃない。この場に誰も目の前の男性を治せるだけの力を持った人がいなかったんだ。
今はどうするべきかを考えるだけ。
「どうするの?」
「大丈夫。サーピィには使えなかったけど、念のため姫様に持たせてもらっているポーションがある。それを使う」
ダンジョンで魔獣から受けた傷にも使えるんだ。きっと効くはず。
「大丈夫ですよ」
「……うっ。くっ……」
「初めは痛むかもしれませんが、そこを我慢すれば治ります」
「……! 本当だ、痛みが引いた。体が、動く!」
「すごい……」
「は? ケガが治ったのか?」
「いったい何をしたんだよ!」
「マジかよ。神かよ!」
よかった。
「な、治った! あなたは高明な冒険者の方ですか? すごい。本当になんともないです」
「あまり動かない方がいいですよ。傷口が開くかもしれないので」
「はい。気をつけます。ありがとうございます」
「すごいぞ。マジで治しやがった」
「マジかよ。ヤベェ!」
「死にかけだったろ? なあ? そうだよな!」
「なんとお礼を言っていいのやら」
「お礼なら大丈夫です。それより、誰がこんなことをしたのか教えてもらえませんか? 魔獣の侵入じゃありませんよね? 入口の方に異常はなかったと思いますし」
「…………」
誰がやったのか聞いた途端、全員が暗い雰囲気になった。
やはり、突然つむじ風のように発生したとかじゃなさそうだ。
誰かのしわざ。
「多分、男だと思います。その男はフードを目深に被り、顔までははっきり見せませんでした。ただ、血まみれでよく入れたなと思ったのです。そのため、話を聞こうと思い近づいたら、切られました」
「え」
「私も驚きました。ですが、その男はそれから闘技場へ来い! こんな騒ぎが起きるのはやだろう? 姫さん! そして、その犬! と叫び、この剣を置いて去って行きました。それで、気づけばこんな騒ぎに……」
「……っ! ……やはり剣聖の仕業」
でも、姫様は犬を飼ってないぞ。
何かの暗号か……?
「ありがとうございます」
「まさか闘技場へ向かうのですか?」
「そのつもりですが」
「いくらあなたのような腕利きの冒険者でも危険です。これはワナです。助けていただいた方が傷つくのは嫌です」
「その気持ちはありがたいです。ですが、この剣の男とは僕が決着をつけないといけないんです」
「剣が特別……? もしかして、つい先日追放された剣聖と何か関係が?」
「なに、そうなのか? どおりで優秀なわけだ」
「やっぱりやめときな兄ちゃん」
「相手をするべきじゃない」
「ありがとうございます。でも、剣聖なら僕が行くしかありません」
「なんだかただならぬ雰囲気だけど、いつもこんな感じなの?」
「ううん。そんなことない。普段ならもっとみんな楽しそうにしてるんだけど……」
今日はどういうわけか緊迫した雰囲気だ。
少し、リトートが僕を襲おうとした時に似ている気がする。
「ん? あれは……」
「どうしたの?」
「ついてきて」
なんだか嫌な予感がする。
見覚えのある武器が見えたような、いや気のせいであってくれ……。
「すみません! すみませんすみません」
「こりゃひでぇな。誰のしわざだよ」
「助かるのか?」
「なあ、なあ。誰か!」
「大丈夫ですか!」
「……い、一応……」
「ひどい……」
息はしてるけどって感じだ。
ケガどころの騒ぎじゃない。
傷の具合はサーピィのものと似ている。場所も近い。
おそらく同一人物によるしわざ。
「きみ! 勝手に近づいちゃ」
「待て。あなたはリストーマ様ではありませんか?」
「そう、ですけど……」
「リストーマ? 誰です。とてもこの状況を解決できるようには」
「説明は後だ。彼なら何か考えがあるはず。お願いします」
「は、はい……」
なんだったんだろう。
い、いや、任されてしまったんだ。やれるだけやってみよう。
とはいえ、僕に力があればと悔やんでも仕方ない。
僕だけじゃない。この場に誰も目の前の男性を治せるだけの力を持った人がいなかったんだ。
今はどうするべきかを考えるだけ。
「どうするの?」
「大丈夫。サーピィには使えなかったけど、念のため姫様に持たせてもらっているポーションがある。それを使う」
ダンジョンで魔獣から受けた傷にも使えるんだ。きっと効くはず。
「大丈夫ですよ」
「……うっ。くっ……」
「初めは痛むかもしれませんが、そこを我慢すれば治ります」
「……! 本当だ、痛みが引いた。体が、動く!」
「すごい……」
「は? ケガが治ったのか?」
「いったい何をしたんだよ!」
「マジかよ。神かよ!」
よかった。
「な、治った! あなたは高明な冒険者の方ですか? すごい。本当になんともないです」
「あまり動かない方がいいですよ。傷口が開くかもしれないので」
「はい。気をつけます。ありがとうございます」
「すごいぞ。マジで治しやがった」
「マジかよ。ヤベェ!」
「死にかけだったろ? なあ? そうだよな!」
「なんとお礼を言っていいのやら」
「お礼なら大丈夫です。それより、誰がこんなことをしたのか教えてもらえませんか? 魔獣の侵入じゃありませんよね? 入口の方に異常はなかったと思いますし」
「…………」
誰がやったのか聞いた途端、全員が暗い雰囲気になった。
やはり、突然つむじ風のように発生したとかじゃなさそうだ。
誰かのしわざ。
「多分、男だと思います。その男はフードを目深に被り、顔までははっきり見せませんでした。ただ、血まみれでよく入れたなと思ったのです。そのため、話を聞こうと思い近づいたら、切られました」
「え」
「私も驚きました。ですが、その男はそれから闘技場へ来い! こんな騒ぎが起きるのはやだろう? 姫さん! そして、その犬! と叫び、この剣を置いて去って行きました。それで、気づけばこんな騒ぎに……」
「……っ! ……やはり剣聖の仕業」
でも、姫様は犬を飼ってないぞ。
何かの暗号か……?
「ありがとうございます」
「まさか闘技場へ向かうのですか?」
「そのつもりですが」
「いくらあなたのような腕利きの冒険者でも危険です。これはワナです。助けていただいた方が傷つくのは嫌です」
「その気持ちはありがたいです。ですが、この剣の男とは僕が決着をつけないといけないんです」
「剣が特別……? もしかして、つい先日追放された剣聖と何か関係が?」
「なに、そうなのか? どおりで優秀なわけだ」
「やっぱりやめときな兄ちゃん」
「相手をするべきじゃない」
「ありがとうございます。でも、剣聖なら僕が行くしかありません」
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