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第66話 相対す
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フロニアさんが指し示してくれたおかげで闘技場の場所は分かった。
街の中でも一際大きな建築物。
円形の、人が大量に入れるそこは、僕が足を踏み入れた事のない独特な雰囲気を放っている。
人と人が戦う事を求めている空気。
ダンジョンに入る時のように肌がピリつく。
「来たか……」
「ああ」
問題なく通してもらえた会場内。
広いフィールドのど真ん中に、ポツンと立つ一人の男。
目深に被ったフードのせいで顔はよく見えない。
だが、身につけている剣によって、その者が何者なのかは誰の目からも明らかだった。
「剣聖。どうしてこんな事をしているんだ! どうしてサーピィを、フロニアさんを切った!」
「どうして、どうしてか……」
もったいぶるようにして顎をかく男の口は笑っていた。
「そんなの決まってるだろ。一人はお前と同じようなにおいがしたからだ。腹が立ったから怒りに任せて切ってやった」
「そんな理由で……」
「そんな理由と言うが、オレにとっては重大な理由だ。で、もう一人だが、そいつはオレの道を邪魔したから切ってやった。理由としては十分だろ?」
「どこが! 身勝手すぎる……」
「本当に、魔王よりタチが悪い?」
「おいおい。オレが身勝手だって? 魔王よりタチが悪いって? 冗談はよしてくれよ。誰のせいでこんなことになってると思ってる。剣聖が街を追われ、国を追われ、命を狙われるなんて、前代未聞の事だぞ」
「全て自業自得じゃないか」
「あ?」
「自分のやった行いのツケが回ってきただけだろう」
「そーかよそーかよ」
こんな奴だって知っていた。
僕は何度となく体感してきた。
だが、育ての父だ。少しくらいはと期待してしまう心があった。
でも、もう捨てよう。なかなか捨てられなかった気持ちを、今捨てよう。
一度勝った相手だ。武器が違えど負ける気はしない。
気がかりなのは、他の仲間、僕以外の誰かが犠牲になること……。
「おいおい。よく見たら女連れじゃねぇか! ええ? ……いや、あいつは。ククッ!」
「何がおかしい」
「オマエが抱えているもののせいで、オマエはどん底に落ちるんだよ! ここにいるアホ面ども。よーく聞け。そこのガキが連れてる女は、魔王の娘だ! 我々人類に仇なす魔王の愛娘! こいつは人類に対する裏切り者だ!」
「な!」
剣聖もフラータの正体に気づいた……?
「……」
「ほら見てみろ! 今の反応を! どう見ても図星って様子だぜ? 魔王の娘を連れ込んで、こいつはこの国を、いや、我々人類を陥れようとしているに違いない!」
「……」
「どうだ? オマエのせいでオマエは苦しむ。剣聖に楯突くからこうなるんだよ」
「違う!」
「は?」
「違うぞー!」
「そんなことない!」
「リストーマさんはそんなことしない!」
「な、どうして……? オマエ、どうしてこんなどこの誰とも知らない奴にまで名前を覚えられてるんだよ!」
「僕は皆のために力を使ってきた。それだけだ。そして、皆の言う通り、彼女は、フラータは平和が好きな女の子だ。決して魔王とは違う!」
「そうだそうだ!」
「お前の話なんて聞くに耐えない!」
「リストーマ様、早くやってしまってください!」
「ありがとう。リストーマくん」
「本当のことでしょ?」
「うん!」
「チッ! どいつもこいつも買収してたのか」
「周りの人たちもフラータのことを理解してくれているだけだ」
そう。フラータの本質をわかってくれているのだ。
お金でどうこうできる問題じゃない。
そんな短絡的な思考をしてるってことは、ペットの怪鳥にも金が無くなって愛想を尽かされたんだろう。
「さて、剣聖の企みはどうやら失敗したみたいだな」
「クソが。仲良しこよしかよ。気持ち悪い」
「今のあなたがひとりぼっちなだけでしょう。可哀想に」
「ほざけ! こんなことで周りを味方につけたからって勝った気になるなよ。むしろ、ここで終わらなかった事を後悔するんだな!」
街の中でも一際大きな建築物。
円形の、人が大量に入れるそこは、僕が足を踏み入れた事のない独特な雰囲気を放っている。
人と人が戦う事を求めている空気。
ダンジョンに入る時のように肌がピリつく。
「来たか……」
「ああ」
問題なく通してもらえた会場内。
広いフィールドのど真ん中に、ポツンと立つ一人の男。
目深に被ったフードのせいで顔はよく見えない。
だが、身につけている剣によって、その者が何者なのかは誰の目からも明らかだった。
「剣聖。どうしてこんな事をしているんだ! どうしてサーピィを、フロニアさんを切った!」
「どうして、どうしてか……」
もったいぶるようにして顎をかく男の口は笑っていた。
「そんなの決まってるだろ。一人はお前と同じようなにおいがしたからだ。腹が立ったから怒りに任せて切ってやった」
「そんな理由で……」
「そんな理由と言うが、オレにとっては重大な理由だ。で、もう一人だが、そいつはオレの道を邪魔したから切ってやった。理由としては十分だろ?」
「どこが! 身勝手すぎる……」
「本当に、魔王よりタチが悪い?」
「おいおい。オレが身勝手だって? 魔王よりタチが悪いって? 冗談はよしてくれよ。誰のせいでこんなことになってると思ってる。剣聖が街を追われ、国を追われ、命を狙われるなんて、前代未聞の事だぞ」
「全て自業自得じゃないか」
「あ?」
「自分のやった行いのツケが回ってきただけだろう」
「そーかよそーかよ」
こんな奴だって知っていた。
僕は何度となく体感してきた。
だが、育ての父だ。少しくらいはと期待してしまう心があった。
でも、もう捨てよう。なかなか捨てられなかった気持ちを、今捨てよう。
一度勝った相手だ。武器が違えど負ける気はしない。
気がかりなのは、他の仲間、僕以外の誰かが犠牲になること……。
「おいおい。よく見たら女連れじゃねぇか! ええ? ……いや、あいつは。ククッ!」
「何がおかしい」
「オマエが抱えているもののせいで、オマエはどん底に落ちるんだよ! ここにいるアホ面ども。よーく聞け。そこのガキが連れてる女は、魔王の娘だ! 我々人類に仇なす魔王の愛娘! こいつは人類に対する裏切り者だ!」
「な!」
剣聖もフラータの正体に気づいた……?
「……」
「ほら見てみろ! 今の反応を! どう見ても図星って様子だぜ? 魔王の娘を連れ込んで、こいつはこの国を、いや、我々人類を陥れようとしているに違いない!」
「……」
「どうだ? オマエのせいでオマエは苦しむ。剣聖に楯突くからこうなるんだよ」
「違う!」
「は?」
「違うぞー!」
「そんなことない!」
「リストーマさんはそんなことしない!」
「な、どうして……? オマエ、どうしてこんなどこの誰とも知らない奴にまで名前を覚えられてるんだよ!」
「僕は皆のために力を使ってきた。それだけだ。そして、皆の言う通り、彼女は、フラータは平和が好きな女の子だ。決して魔王とは違う!」
「そうだそうだ!」
「お前の話なんて聞くに耐えない!」
「リストーマ様、早くやってしまってください!」
「ありがとう。リストーマくん」
「本当のことでしょ?」
「うん!」
「チッ! どいつもこいつも買収してたのか」
「周りの人たちもフラータのことを理解してくれているだけだ」
そう。フラータの本質をわかってくれているのだ。
お金でどうこうできる問題じゃない。
そんな短絡的な思考をしてるってことは、ペットの怪鳥にも金が無くなって愛想を尽かされたんだろう。
「さて、剣聖の企みはどうやら失敗したみたいだな」
「クソが。仲良しこよしかよ。気持ち悪い」
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