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第2話 仲間殺しの勇者
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「少し待っててくれって、いつまで待たせるのよ」
おにいが勇者に呼び出されてからだいぶ時間が経つ。
拠点にわたしを置いて行ってそのままだ。
気がつけば他のパーティメンバーまでどこか行ってるし、みんなして何してるんだろ。
「おにいの反応も動いてないし。本当にただ話してるだけ?」
スキルのおかげでおにいの居場所は大体わかる。高さまではわからないが、スキルの反応があれば距離感はわかる。
それを頼りにすれば戦う相手が選べるくらいには、わたしもスキルについて詳しくなってきたはずだ。
子供の頃、おにい以外の家族を殺されたあの日から、わたしたちは魔王軍を滅ぼすために生きてきた。
これ以上わたしたちのような悲しい思いをする人を出さないため、目覚めたスキルを使ってきた。
だからわたしは、「阿吽の呼吸」というスキルを家族からの贈り物だと信じている。
「はー」
最初は二人だったわたしたちは、活躍を聞きつけた勇者パーティにスカウトされ、順風満帆、魔王までの道を着実に進んでると思っていたんだけど、最近その勇者の様子がおかしい。
前はもっとリーダーって感じで頼れる人って感じだったけど、最近はどうも強欲というかなんというか。
おにいは信頼しきってるけど、絶対裏があるよ。
そんなことを考えていたら、どこかへ行っていた人たちはダラダラと帰ってきた。
「お待たせアルカ。暇にして悪かったね」
「……」
勇者は最近、おにいにだけ笑顔を見せない。
誰にでも優しい模範のような人だったのに、本当になんなんだろ。
「無視はベルトレット様に失礼です」
「そんなことよりおにいは?」
「ラウルのこと? そんなに兄のことが心配なの? 大好きなのね」
「そうですよ。家族ですから。そもそもおかしいじゃないですか。てっきり全員揃って戻ってくると思ったのに」
「パーティだからと言って、常に一緒に行動というわけではありません。ラウル様は少し用があるとおっしゃっていました。すぐに戻ってくると思われますが」
「あーもう!」
いっつもおにいはふらっとどこかへ行っちゃうんだから。
わたしが一緒じゃないとただの一般人なのに。そういうことわかってないのかな?
全く世話が焼ける。
「わたし、おにいの迎えに行ってきます。皆さんはここで待っててください」
「ちょっと待つので」
勇者がカーテットさんを止め首を横に振った。
どういう風の吹き回しかわからないが、行っていいってことでしょ。
あんたに言われなくてもわたしはおにいのところに行くから。
「よかったんです? アルカを止めないで」
カーテットの疑問はもっともだろう。
今ラウルのいる場所まで向かわせたら、死んでいることがバレてしまう。
だが、だからどうしたというのだ? 誰が俺を疑うことができる?
ちょっと用がある。その後に襲われた可能性だってあるじゃないか。最後に話をしたのが俺とは限らない。俺はただ、ラウルを呼び出して話をしただけだ。その後のことは何も知らない。
「いいのさ。ここで向かわなければもう会えないかもしれないだろう?」
「ベルトレット様やっさしー。そうよね。いくらダメな兄でも別れは済ませておかないとね」
「そういうことさ。別れを済ませることできっと強くなる。それがいいんだ。リマの言う通りどんなダメな兄だとしても家族は家族なのだから」
「そうですね。アルカ様の様子ですと、家族は何よりも大切なようでした。ですが、ワタクシどもと同じようにベルトレット様を信仰なさればいいのに」
「無理はないさ。君たちと比べれば知り合って日が浅い。兄を失ったとしても優しくしてくれた。だからこそ俺を信じるってものだろ」
そう。ストーリーが大事なのだ。
ただ仲良くなるだけではいけない。俺たちは勇者パーティ。危機的状況を乗り越えて絆を深めてこその仲間だ。
カーテットもリマもペクターも俺のことを心から信じてくれている。
それはストーリーがあったからだ。
まあ、そもそも女は誰だってそうなる。俺は勇者なのだから。誰より強い人類唯一の希望なのだから。
「しかしあっけなかったな。アルカと一緒なら俺の攻撃なんてかすりもしないラウルがただの短剣、それもその先についた毒でくたばるなんてな」
そこら中に俺たちの笑い声が響き渡る。
楽しそうな雰囲気に流され、周囲の人間もつられて笑っている。
そう、これでいい。これでいいんだ。みんな俺のことが大好きだからな。
「唯一の解毒薬は俺たちの手の中にある。そして、蘇生できる可能性のある人間は始末しておいた。蘇生魔法なんて使えるはずないからな。実在しないものが存在するなんて言っている嘘つきは、処刑されて当然だ。不届き者は成敗しないとな」
「その通りです」
「ベルトレット様が一番だわ」
「なんてったってワタクシたちの神ですから」
「フハハ。はーっはっはっは。後は、傷心で帰ってきたアルカを優しく受け止め、抱きしめ、受け入れてやるだけだ。こうして落ちなかった女はいない。なぁに、いくらアルカでもその悲しみの元が造られたものだなんて気づかない。そうだろ?」
「そうです」
「その通りですわ」
「神が正しいのです」
こいつらだって、俺の作ったストーリーを与えたやつらだが、こうして他人のストーリー作りに手助けしても自分のことには当てはめて考えない。
ショックで頭がおかしくなってるのか? いや、そんなわけない。全て俺のカリスマ。
わかっていたとしても、俺から離れる方が損だと理解しての行動だ。
なんてったって、俺は勇者なのだから。
「今から帰りが楽しみだな」
おにいが勇者に呼び出されてからだいぶ時間が経つ。
拠点にわたしを置いて行ってそのままだ。
気がつけば他のパーティメンバーまでどこか行ってるし、みんなして何してるんだろ。
「おにいの反応も動いてないし。本当にただ話してるだけ?」
スキルのおかげでおにいの居場所は大体わかる。高さまではわからないが、スキルの反応があれば距離感はわかる。
それを頼りにすれば戦う相手が選べるくらいには、わたしもスキルについて詳しくなってきたはずだ。
子供の頃、おにい以外の家族を殺されたあの日から、わたしたちは魔王軍を滅ぼすために生きてきた。
これ以上わたしたちのような悲しい思いをする人を出さないため、目覚めたスキルを使ってきた。
だからわたしは、「阿吽の呼吸」というスキルを家族からの贈り物だと信じている。
「はー」
最初は二人だったわたしたちは、活躍を聞きつけた勇者パーティにスカウトされ、順風満帆、魔王までの道を着実に進んでると思っていたんだけど、最近その勇者の様子がおかしい。
前はもっとリーダーって感じで頼れる人って感じだったけど、最近はどうも強欲というかなんというか。
おにいは信頼しきってるけど、絶対裏があるよ。
そんなことを考えていたら、どこかへ行っていた人たちはダラダラと帰ってきた。
「お待たせアルカ。暇にして悪かったね」
「……」
勇者は最近、おにいにだけ笑顔を見せない。
誰にでも優しい模範のような人だったのに、本当になんなんだろ。
「無視はベルトレット様に失礼です」
「そんなことよりおにいは?」
「ラウルのこと? そんなに兄のことが心配なの? 大好きなのね」
「そうですよ。家族ですから。そもそもおかしいじゃないですか。てっきり全員揃って戻ってくると思ったのに」
「パーティだからと言って、常に一緒に行動というわけではありません。ラウル様は少し用があるとおっしゃっていました。すぐに戻ってくると思われますが」
「あーもう!」
いっつもおにいはふらっとどこかへ行っちゃうんだから。
わたしが一緒じゃないとただの一般人なのに。そういうことわかってないのかな?
全く世話が焼ける。
「わたし、おにいの迎えに行ってきます。皆さんはここで待っててください」
「ちょっと待つので」
勇者がカーテットさんを止め首を横に振った。
どういう風の吹き回しかわからないが、行っていいってことでしょ。
あんたに言われなくてもわたしはおにいのところに行くから。
「よかったんです? アルカを止めないで」
カーテットの疑問はもっともだろう。
今ラウルのいる場所まで向かわせたら、死んでいることがバレてしまう。
だが、だからどうしたというのだ? 誰が俺を疑うことができる?
ちょっと用がある。その後に襲われた可能性だってあるじゃないか。最後に話をしたのが俺とは限らない。俺はただ、ラウルを呼び出して話をしただけだ。その後のことは何も知らない。
「いいのさ。ここで向かわなければもう会えないかもしれないだろう?」
「ベルトレット様やっさしー。そうよね。いくらダメな兄でも別れは済ませておかないとね」
「そういうことさ。別れを済ませることできっと強くなる。それがいいんだ。リマの言う通りどんなダメな兄だとしても家族は家族なのだから」
「そうですね。アルカ様の様子ですと、家族は何よりも大切なようでした。ですが、ワタクシどもと同じようにベルトレット様を信仰なさればいいのに」
「無理はないさ。君たちと比べれば知り合って日が浅い。兄を失ったとしても優しくしてくれた。だからこそ俺を信じるってものだろ」
そう。ストーリーが大事なのだ。
ただ仲良くなるだけではいけない。俺たちは勇者パーティ。危機的状況を乗り越えて絆を深めてこその仲間だ。
カーテットもリマもペクターも俺のことを心から信じてくれている。
それはストーリーがあったからだ。
まあ、そもそも女は誰だってそうなる。俺は勇者なのだから。誰より強い人類唯一の希望なのだから。
「しかしあっけなかったな。アルカと一緒なら俺の攻撃なんてかすりもしないラウルがただの短剣、それもその先についた毒でくたばるなんてな」
そこら中に俺たちの笑い声が響き渡る。
楽しそうな雰囲気に流され、周囲の人間もつられて笑っている。
そう、これでいい。これでいいんだ。みんな俺のことが大好きだからな。
「唯一の解毒薬は俺たちの手の中にある。そして、蘇生できる可能性のある人間は始末しておいた。蘇生魔法なんて使えるはずないからな。実在しないものが存在するなんて言っている嘘つきは、処刑されて当然だ。不届き者は成敗しないとな」
「その通りです」
「ベルトレット様が一番だわ」
「なんてったってワタクシたちの神ですから」
「フハハ。はーっはっはっは。後は、傷心で帰ってきたアルカを優しく受け止め、抱きしめ、受け入れてやるだけだ。こうして落ちなかった女はいない。なぁに、いくらアルカでもその悲しみの元が造られたものだなんて気づかない。そうだろ?」
「そうです」
「その通りですわ」
「神が正しいのです」
こいつらだって、俺の作ったストーリーを与えたやつらだが、こうして他人のストーリー作りに手助けしても自分のことには当てはめて考えない。
ショックで頭がおかしくなってるのか? いや、そんなわけない。全て俺のカリスマ。
わかっていたとしても、俺から離れる方が損だと理解しての行動だ。
なんてったって、俺は勇者なのだから。
「今から帰りが楽しみだな」
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