キセキなんか滅んでしまえ!〜ようやくドロドロに溶けた肉体が戻ったと思ったら、美少女と肉体が入れ替わっている〜

マグローK

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第15話 カーストの壁をぶち壊せ

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 嫌味を言ってきた吉良さんだが、行動力だけはあるらしく、チーム分けも決まっているので、準備はすぐに済んだようだ。

 準備が終わるとサッカーの試合が始まった。

 マッチメイクは僕らC組対D組。

「しっかし、一応チームメイトのはずなんだけどなぁ」

 吉良さんにチーム外とか言われたことを思い出しながら、僕はなんとなくボールを目で追っていた。

「あの様子だと、きっと私たちにボールを触らせる気すらないんでしょうね」

「だな」

 僕とタレカは、当然のことのようにフォワードとキーパーの間で立っているように脅されていた。そんな位置だからかボールは回ってこないようだった。いや、意図的か。

 タレカと入れ替わってから、初めての他人との接触がこれって、なんとも悲しい現実だ。

「お。攻められてる。へい、へい!」

「……」

 自陣でボールを奪ったようだったので、前へ上げるよう僕が手を挙げて呼びかけてみたが、ボールは一切僕らの方へと回ってこない。

 それどころか、守備らしい守備すらさせてもらえず、僕ら二人はコートの中でただ立っているだけのデクノボーだった。

「考えがあるみたいに言ってたけど、どうするの? 吉良さんの言葉じゃないけど、サッカーはチームプレーが必要だろうし、何かやろうにも難しいんじゃない? 奪ってオウンゴールでもするの?」

「流石に試合に負けるのは私だって嫌よ。ただそれなら、私たちが活躍すればいい話でしょ。うまくいけば、吉良さんたちも不満爆発って感じだと思わない?」」

「そりゃ、さっきの感じで期待してないってのはよーくわかったし、活躍したら不満爆発だろうね。それにデートだっけ? そのデート権獲得に僕らの力が必要だったと考えるのは相当嫌だろうさ」

 とかなんとか話していると、吉良さんは僕らの力を借りずに点を決めたようだった。

 僕らのことを指さして、言った通りだったでしょとでも言いたげだ。

「なんだか腹立つな」

「私たちが怒ってどうするのよ」

「まあ、一応勝ってるし、あ」

 天下を取っていた時間は非常に短く、油断した隙に速攻で点を取り返されてしまった。

「授業時間もあるし、あんまりダラダラしている余裕もなさそうね」

「まだ時間はあると思うよ」

「じゃあ、メイトはゴール前にいて」

「守備すらさせてもらえないのに?」

「逆よ」

「逆?」

 やっぱりオウンゴールでも狙うのかと思ったが、タレカは僕らC組のゴールとは真反対、D組のゴールの方を指差した。

「あっちのゴール付近にいてちょうだい」

「確かにゴールできたら見返すことはできるかもしれないけど、いてもパスは回ってこないんじゃないかな?」

「お姉ちゃんに任せなさい」

「それ言っとけば誤魔化せると思ってない?」

「それじゃ」

「あ、おい!」

 タレカは走っていってしまった。

 どこへと言えばボールの方へ。

 何をしたいのかさっぱりだが、おそらく僕にボールが回せるようにどうにかしたいということなのだろう。

 僕もタレカの作戦を達成するため、ゴールの方へと走り出した。

 一進一退の攻防の中で、タレカは元男子の肉体かつスライムにもなった僕の体を上手に活用し、D組から素早くボールを奪った。

「お」

 僕を警戒して守備が残っていることもあるが、多分普通の女の子たちくらいなら突破できると思う。

 スルーパスを期待して腕を上げるも、僕にボールが回ってくるより先に、吉良さんたちがタレカからボールを奪い取ってしまった。それからグングンとD組コートを駆け上がってくる。

 いい位置にいる僕の方には目もくれず、一人ドリブルでゴールを目指す。

 吉良さんは普段から王田くんとやらとサッカーで遊ぶのかもしれない。そんな気迫のあるドリブルでキーパーすら突破すると、吉良さんはまたしても点を決めてしまった。

「成山。いい加減にしなさいよ。ここはあたしたちがやるから。あんたは大人しくしてなさい」

「まるで怪我を心配されてるみたいなセリフだ」

「は? あたしがあんたの心配なんかするわけないでしょ」

「ツンデレかな?」

「そんなわけないじゃない!」

 なんだからやたらキレられてプンスカとC組コートへと走っていった。

 あの様子だと、王田くんにも散々言われているのかもしれないな。しかし、本人はあまり嬉しくなさそうだ。

 そうこうしているうちにまたしても点を取り返され、スコアは二対二。残り時間も刻一刻と少なくなっている。

 タレカも少しは僕の体を使いこなせるようになってきたみたいだが、いかんせん他人の体で少しバランスが取りづらいように見える。

 身長も高いわけではないので、体をぶつけ合うと、どうしても競り勝つのが難しいみたいだ。

 こうなったら、僕も団子の一団に加わろうかと思ったが、少し動いた僕の方へとタレカはアイコンタクトを送ってきた。

 残り時間的におそらくラストチャンス。

 吉良さんもこのまま引き分けで終わらせたくないようで焦っているように見える。

 D組もやるなら勝ちたい様子だった。

「余計なことすんじゃないわよ!」

 そうして張り合うタレカに対して吉良さんが飛びかかった。

「勝ちたいんでしょ?」

「それは……」

 すぐに顔をうつむける吉良さん。

 僕の方まで叫びが聞こえたが、何事だろうか。

 いや、そんなのは隙を与えるだけだ。二人のいざこざで守備の薄くなったところをD組が攻め入っていた。

 吉良さんがタレカをにらんでいるのが見える。

 だが、タレカは足だけでC組コートへ全速力で戻っていく。

 残りのメンバーを突破するため、D組の生徒がパスを出した瞬間、タレカはその間に割って入ってボールを奪った。

「メイト!」

 言われるより早く、僕の体は動いていた。

 飛んできたロングパスをワントラップで受け、目の前にいるディフェンスをフェイントで軽くかわした。

「うまっ」

 感嘆の声を背に受けつつ、体を大きくするゴールキーパーが股を通さないようシュートに備えてかがみ込んだ瞬間、僕はボールを軽く跳ね上げた。

「あっ」

 キーパーの小さな悲鳴が聞こえた。

 反応しようにもしゃがんでしまったキーパーは動くことができず、ボールはポンポンと跳ねながら優しくネットを揺らした。

 そこでホイッスルの音が校庭に響いた。

「はーい! 試合終了ー!」

 山郷先生の間延びした声が試合終了の合図だった。

 僕が急に現れたことであっけに取られた様子のD組の子たちを見つつ、僕は小さくガッツポーズした。

「メイトー!」

 バシンと強めに背中を叩かれるも、なんだか痛いというより気持ちよかった。

「流石、あれだけで理解してくれるなんて私の妹ね」

「姉妹の協力プレイってことだったのか?」

「そうよ。当然でしょ」

 手を挙げるタレカに、僕はわからず手を挙げた。

「ノリ悪いわね。イエーイ!」

「いえーい」

 ノリの悪いハイタッチをして苦笑する。

 こんなのひとりぼっちじゃできなかった。

 そうだ。今日の僕らはふたりぼっち。

 さっと自陣に顔を向けると、遠くからは苦々しげな表情を浮かべた吉良さんの顔が見えた。

 全くもっていい気味だ。

 作戦成功。今日はよく眠れそうである。
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