23 / 32
第23話 VSブリザードドラゴン
しおりを挟む
「危ない!」
「え?」
氷結の洞窟にて、ドラゴンと対面した俺はいきなりマイルに押し倒された。
「あ、ありがとう。マイルのサポートがなかったら俺どうなってたか」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
「そうだな」
「当たってたら終わりだったのよ?」
一面、氷でできた空間には、いつの間にか一本の氷の柱が生えていた。
ちょうど俺たちがいた場所だった。
開幕から食らえば、瀕死級の攻撃をぶつけてくるとはさすがドラゴン。
だが、かわされることを考えていなかったのか、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
知能があると言われるドラゴン。面白い表情をするじゃないか。
「しかし、ドラゴンともあろう存在が不意打ちとは、さすがに卑怯なもんだな」
俺は雪を払いながら立ち上がると、さすがにムッとしている気がする。
やはり感情が表に出やすいタイプらしい。
「と言うことはだ。実際はそこまで強くないんじゃないか? 図体ばかりがデカく、一撃は強いが、あくまでそれは当たればの話。見た目に見入ってるやつに、先制で一撃を食らわせないと勝てないようなそんな存在だったんだろ?」
「ちょっと! なんだか洞窟揺れてるんだけど、ねえ、怒ってるみたいなんだけど」
マイルの言う通り、許せないとばかりに、ドラゴンは洞窟を揺らすほど身を震わせている。
人間でもないのにここまで感情の起伏があると、親近感も湧いてくるがそうも言っていられない。
なんせ俺はアリサを氷漬けにされている。
ここで仲良くしましょうなんてことはできない。
「マイル。支援魔法って今ので最大か? 移動だけのしか使ってないんじゃないか?」
「確かにまだまだ色々と使えるよ? でも、ワタシもリルさんやヤングに使ってみた時は、逆に身動き取れなくなっちゃって」
「面白い」
「何が?」
呆れた様子のマイルだが、今は少しでも力がほしい。
あおって冷静さを奪ってみたものの、どうやらすでに次の攻撃に備えているらしい。
つまり。
「多分、俺たちに残された時間は次の攻撃までの間だと思う。次の攻撃を許せば普通にアウト。背中を見せて逃げれば、一撃をモロに食らうからアウト。そう考えると、残された選択肢は」
「あれをその次の攻撃までに倒すってこと?」
「え? 今までそう言う話じゃなかったの?」
「いや、そのつもりだったけど、もう少しやりあうもんだと思ってた」
俺がマイルの予定を崩したということか。
俺のやってしまったという表情が出ていたのか、マイルの視線がじっとりとしたものに変わった気がした。
「だからこそのマイルの支援魔法だ」
「うーん」
まだ躊躇しているのか、マイルはためらいがちに腕を組んだ。
「大丈夫。どうせ成功しても勝てなきゃ助からないんだから。俺のことは気にせずにやってくれ。なんなら使った後に俺を置いて逃げてもいい」
「そんなに自信あるの? でも、さすがにワタシもドーラを置いて逃げるほど薄情じゃないわよ。わかった。でも、本当に何もできなくなっても知らないからね?」
「ああ。その時はその時。一緒に散るだけさ」
「本当はもっと森の主の賞金で色々とやりたかったのに!」
文句を言いつつもマイルは詠唱を始めた。
何かに気づいたのか、ドラゴンも一瞬だけ攻撃の準備をやめ、こちらの様子をうかがった気がした。
しかし、人間の行動などさほど気にしていないのか、すぐに攻撃準備に戻った。
「行くよ!」
「ああ。こい!」
長ったらしいドラゴンの準備と異なり、マイルの準備はすぐに済んだようだ。
「『オールブースト』!」
マイルの声とともに、俺の踏む地面に特大の魔法陣が広がった。
そこから光が放たれると、みるみる力が湧いてくるのを感じる。
すごい。今ならなんでもできそうな気がする。
ドラゴンの動きもやたらとゆっくりに見える。
「さあ、後は任せたよ」
後ろではマイルの声の後に倒れるような音がした。
どうやら、使う側も消耗が激しいらしい。
「任された。いいかクソドラゴン。よくもアリサを氷漬けにしてくれたな。それにマイルの手をわずらわせやがって。本当ならこんなことする必要はなかったが一発食らわせてやる。パチモンに負けたとなれば他のドラゴンにも馬鹿にされるだろうな」
俺は最後の最後にもう一度煽ってから息を一気に吸い込んだ。
「『ファイアブレス』!」
技の出の速さ。それは俺の特技の一つだ。
大技の準備に勤しんでるところ残念だったな。
俺は心の中でガッツポーズした。
「私に匹敵する力を持つ存在がやっと現れた」
だが、どこか喜びが混じる声が聞こえてきた気がした。
俺はその場に片膝をついて倒れ込んだ。
なんだか不思議な感覚がある。まるで少しの間動きを止められていたような。
きっとマイルの支援魔法の反動なのだろう。
しかし。
「い、いない?」
あれだけの巨体。少しくらいは残骸が残っていてもよさそうなものだが、森の主の時と違い何一つ痕跡が残っていなかった。
だだっ広い空間に氷漬けにされた人たちと俺にマイルだけが残されていた。
伝説の存在であるドラゴン。まだわからないことも多いらしいが、ブリザードドラゴンにファイアブレスを使ったせいで溶けて無くなってしまったということだろうか?
いや、そんなことより。
「アリサ! それにマイル! 大丈夫か?」
「ワタシ? ワタシはとりあえず大丈夫だから、アリサさんの方へ行ってあげなよ」
「ありがとう」
まだ倒れたままだがそんなことを言ってくれるマイルに感謝し、俺はアリサの方へと駆け出した。
「え?」
氷結の洞窟にて、ドラゴンと対面した俺はいきなりマイルに押し倒された。
「あ、ありがとう。マイルのサポートがなかったら俺どうなってたか」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
「そうだな」
「当たってたら終わりだったのよ?」
一面、氷でできた空間には、いつの間にか一本の氷の柱が生えていた。
ちょうど俺たちがいた場所だった。
開幕から食らえば、瀕死級の攻撃をぶつけてくるとはさすがドラゴン。
だが、かわされることを考えていなかったのか、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
知能があると言われるドラゴン。面白い表情をするじゃないか。
「しかし、ドラゴンともあろう存在が不意打ちとは、さすがに卑怯なもんだな」
俺は雪を払いながら立ち上がると、さすがにムッとしている気がする。
やはり感情が表に出やすいタイプらしい。
「と言うことはだ。実際はそこまで強くないんじゃないか? 図体ばかりがデカく、一撃は強いが、あくまでそれは当たればの話。見た目に見入ってるやつに、先制で一撃を食らわせないと勝てないようなそんな存在だったんだろ?」
「ちょっと! なんだか洞窟揺れてるんだけど、ねえ、怒ってるみたいなんだけど」
マイルの言う通り、許せないとばかりに、ドラゴンは洞窟を揺らすほど身を震わせている。
人間でもないのにここまで感情の起伏があると、親近感も湧いてくるがそうも言っていられない。
なんせ俺はアリサを氷漬けにされている。
ここで仲良くしましょうなんてことはできない。
「マイル。支援魔法って今ので最大か? 移動だけのしか使ってないんじゃないか?」
「確かにまだまだ色々と使えるよ? でも、ワタシもリルさんやヤングに使ってみた時は、逆に身動き取れなくなっちゃって」
「面白い」
「何が?」
呆れた様子のマイルだが、今は少しでも力がほしい。
あおって冷静さを奪ってみたものの、どうやらすでに次の攻撃に備えているらしい。
つまり。
「多分、俺たちに残された時間は次の攻撃までの間だと思う。次の攻撃を許せば普通にアウト。背中を見せて逃げれば、一撃をモロに食らうからアウト。そう考えると、残された選択肢は」
「あれをその次の攻撃までに倒すってこと?」
「え? 今までそう言う話じゃなかったの?」
「いや、そのつもりだったけど、もう少しやりあうもんだと思ってた」
俺がマイルの予定を崩したということか。
俺のやってしまったという表情が出ていたのか、マイルの視線がじっとりとしたものに変わった気がした。
「だからこそのマイルの支援魔法だ」
「うーん」
まだ躊躇しているのか、マイルはためらいがちに腕を組んだ。
「大丈夫。どうせ成功しても勝てなきゃ助からないんだから。俺のことは気にせずにやってくれ。なんなら使った後に俺を置いて逃げてもいい」
「そんなに自信あるの? でも、さすがにワタシもドーラを置いて逃げるほど薄情じゃないわよ。わかった。でも、本当に何もできなくなっても知らないからね?」
「ああ。その時はその時。一緒に散るだけさ」
「本当はもっと森の主の賞金で色々とやりたかったのに!」
文句を言いつつもマイルは詠唱を始めた。
何かに気づいたのか、ドラゴンも一瞬だけ攻撃の準備をやめ、こちらの様子をうかがった気がした。
しかし、人間の行動などさほど気にしていないのか、すぐに攻撃準備に戻った。
「行くよ!」
「ああ。こい!」
長ったらしいドラゴンの準備と異なり、マイルの準備はすぐに済んだようだ。
「『オールブースト』!」
マイルの声とともに、俺の踏む地面に特大の魔法陣が広がった。
そこから光が放たれると、みるみる力が湧いてくるのを感じる。
すごい。今ならなんでもできそうな気がする。
ドラゴンの動きもやたらとゆっくりに見える。
「さあ、後は任せたよ」
後ろではマイルの声の後に倒れるような音がした。
どうやら、使う側も消耗が激しいらしい。
「任された。いいかクソドラゴン。よくもアリサを氷漬けにしてくれたな。それにマイルの手をわずらわせやがって。本当ならこんなことする必要はなかったが一発食らわせてやる。パチモンに負けたとなれば他のドラゴンにも馬鹿にされるだろうな」
俺は最後の最後にもう一度煽ってから息を一気に吸い込んだ。
「『ファイアブレス』!」
技の出の速さ。それは俺の特技の一つだ。
大技の準備に勤しんでるところ残念だったな。
俺は心の中でガッツポーズした。
「私に匹敵する力を持つ存在がやっと現れた」
だが、どこか喜びが混じる声が聞こえてきた気がした。
俺はその場に片膝をついて倒れ込んだ。
なんだか不思議な感覚がある。まるで少しの間動きを止められていたような。
きっとマイルの支援魔法の反動なのだろう。
しかし。
「い、いない?」
あれだけの巨体。少しくらいは残骸が残っていてもよさそうなものだが、森の主の時と違い何一つ痕跡が残っていなかった。
だだっ広い空間に氷漬けにされた人たちと俺にマイルだけが残されていた。
伝説の存在であるドラゴン。まだわからないことも多いらしいが、ブリザードドラゴンにファイアブレスを使ったせいで溶けて無くなってしまったということだろうか?
いや、そんなことより。
「アリサ! それにマイル! 大丈夫か?」
「ワタシ? ワタシはとりあえず大丈夫だから、アリサさんの方へ行ってあげなよ」
「ありがとう」
まだ倒れたままだがそんなことを言ってくれるマイルに感謝し、俺はアリサの方へと駆け出した。
0
あなたにおすすめの小説
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる