待つだけだった私にさようなら ー私だけを見てほしかったー

梅雨の人

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「あなたが私を見てくれるのをずっと待っていました。でも待つのは疲れてしまったの。私だけを一番に考えてほしいのです。案外私はわがままで子供っぽいのだと今回やっと自覚したのですけれども…」 

「私が…私が今度は君にちゃんと見てもらえるように頑張るよ。君をこれからは一番に考える。いや、最初から君のことばかり考えていたのにきちんと伝える勇気がなかった私が悪かった。今、子供っぽい君が見れて嬉しい。君のことがもっと好きになったよ。…愛しているんだ。」 

「アレクサンダー様なら私を絶対に幸せにしてくれるんですって。絶対に。何があっても何を置いても必ず私のところに一番に駆け付けるし、私を一番に大事にするって言ってくれましたの。 

私が悪人になろうが大失敗しようが、絶対にあの人だけは私の味方になってくれるって言ってくれましたの。 

目の前で誰かが困っていても私が一番大事だって…そんなこと言われたら...もう私…あの人について行こうと思ったのに、それでも旦那様が……っ…」 

「……それは…非常にまずいな……私は君を本当に攫われてしまうところだった…。ああ、これ以上ぼうっとして負けてはいられない。」 

未だ肩を震わせて泣く私を旦那様が抱きしめます。 

「今まですまなかった」旦那様は震えて涙を流す私をそれからずっと抱きしめておりました。 

  

「あーーー、きつい…」 

「あっ!…ごめんなさい。…いえ、ありがとう、アレクサンダー様…」 

「妻をここまで送り届けてくれて心から感謝する。」 

両掌を顔に当て空を見上げておられるアレクサンダー様に気が付いて、慌てて旦那様から離れます。

「グレース夫人、今度こそ幸せになるんだぞ…」 

「アレクサンダー様…ありがとうございました…」 

その後、旦那様と二人でアレクサンダー様が見えなくなるまでお見送りをしたのでした。 



「行ってしまったな…」 
「ええ、素敵な方でしたね。」
「悔しいが、否定はできないな。あーー…口下手だから…そんなくだらない理由で君に捨てられたくないからこれからは思ったことをどんどん口に出すようにしようと思う。君もなんでも私に喋ってくれないか?もっと君のことが知りたいんだ。
でないと、こんなふうに君を真剣に私から攫って行こうとする男たちがいつ現れるか知れたものじゃない…。これまで君を不安にさせてしまって本当に申し訳なかった。後、君にお願いがあるんだ。」

「お願いですか?」

「ずっと君と…一緒に夜を過ごしたい…君がいないと不安で眠れないんだ…後…これからたまに私のことを名前で…イライジャと呼んでくれないか?」 

「イライジャ様…ですか?」 

「ああ。ありがとうグレース...先ほどアレクサンダー殿のことを名前で呼んでいるのを聞いて嫉妬してしまった…でも…実は、旦那様も捨てがたいから…半分半分で頼むよ。」 

「まあ…案外我儘なのですね…」 

「そうかな...?恥ずかしいな…」 

こんなに落ち着いて旦那様と会話をしながら夫婦の寝室に共に足を踏み入れる日が来るだなんて、思ってもおりませんでした。

閨を旦那様と共にしたその日、ようやく旦那様と本当の夫婦になれたのだと感じることが出来たのでした。
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