今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

梅雨の人

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苦し紛れの言い訳

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その日の夕餉をいつものように執務室でダグラスと取りながら寛いでいたエルザの元に、ルーカスの側近が現れ、そのルーカスの伝言が届けられた。 

「エルザ第二妃様。ルーカス殿下より伝言でございます。」

エルザはその伝言を確認するや否や絶望の表情を浮かべた。 


「何を馬鹿な!今更、初夜のやり直しなど!エルザ様を馬鹿にするのにも程があるぞ!」 

困ったように立ち尽くすルーカスの側近は、しかし本心ではダグラスの主張に激しく同意していたのだった。

幼き頃よりルーカスに尽くしたエルザが、自分のせいで未だ処女であると知られたくなかったルーカスと、今になってはそれでよかったと安堵していたエルザは対照的で、エルザを快く思っている者達にとっては今更初夜のやり直しをするなど愚かとしか言いようがない出来事だった。 

しかし一応はルーカスの第二妃であるエルザにとって、王太子であるルーカスとの閨を拒否するわけにもいかなかった。 

沈黙が続く部屋で、側近はエルザの返事を静かに待った。 


「殿下にお伝えしていただけますでしょうか。生憎今は月の物が始まってしまいましたのでご遠慮させていただきますと…。申し訳ございません。このようなことを男性であるあなたに伝言を頼んでしまって…。」 

 「いえ…。エルザ第二王妃様。確かにルーカス殿下へのご返事を承りました。」 

そう言い残して、その側近が去っていくのを確認したエルザとダグラスは、深い溜息を吐いた。 

苦し紛れの嘘でその場をしのいだエルザは、おそらくあの側近もうすうすは自分がその場しのぎの嘘をついたことを勘付いていただろうに大人しくそれで引き下がってくれたことに安堵した。

なぜ今になって初夜のやり直しなどふざけたことを言ってきたのだろうと、ルーカスが何を考えているのかなどエルザには理解することは到底できなかった。
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