今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

新王太子夫妻

ようやく寝室から出てきたダグラス王太子の機嫌はすこぶる良く、王太子の業務も完璧にこなしていた。 

そして、エルザは以前にもまして艶やかになっていた。

エルザは過去に王太子妃の仕事を肩代わりしてきたこともあり、しかも今回は優秀な複数の側近からの十分な手助けが与えられたので、文句のつけようもないほど王太子妃としての仕事を迅速かつ完璧にこなしていった。

前王太子の退任及び、前王太子妃の不祥事で王家に不安を感じていた周囲の者達は、この夫婦仲の良い新たな王太子夫妻の素晴らしい活躍に安堵した。 

ダグラスとエルザは時間が合えば常に寄り添っており、王宮内ではその姿を多くの者達が目にしていた。 

ルーカスは依然、エルザに少しでも近づこうと試行錯誤していたが、周囲がそれを許すことはなかった。

よって、エルザが城に居を構えた今となってもルーカスがエルザと二人で話す機会さえ与えられていなかった。 

ただ遠目にだけしかエルザを眺めることのできないルーカスであったが、エルザを支えようと与えられた仕事を確実にこなしていったので、その点においては徐々にだが周囲の信頼を取り戻しつつもあった。 


そして、エルザとダグラスが夫婦となって四か月経った頃、二人の愛が実りエルザは懐妊した。 

つわりに苦しむエルザを常に労わり続けるダグラスに、安心しきったように身を任せ寄り添うエルザの姿を周囲の者達も温かく見守り、その様子からしてもルーカスの付け入る隙などは到底残されていなかった。 

エルザのつわりが治まった頃からは、日課のようにダグラスと寄り添って庭園を散策する姿が見られた。 

日に日に大きくなるエルザの腹に耳を当て話しかけ、時には口づけを落としているダグラスに、エルザは愛おしい眼差しをおくっていた。