愛を知ってしまった君は

梅雨の人

文字の大きさ
36 / 49

鈍感で残酷な女2

しおりを挟む
それからジョーンズがその場を離れたのを確認し、ゆっくりと服を脱いで同じく薄い布を体に巻いたルビーは後を追った。 


「ジョーンズ、いるの?」 

薄暗く湯気が視界を塞いでいるため、目がまだ慣れていないルビーは立ち止まってジョーンズに話しかけた。

「あっ…ああ、ルビーここだ。ここ。」 

「うわぁ…すごく綺麗ね。湯気と光が綺麗に交じりあっていて幻想的…。夢みたい…。」 

「ああ…本当に…綺麗だ…夢みたいだ……」 

ゆっくりと湯の中に足をつけるルビーに出来るものなら手を差し伸べたいのに、湯から立ち上がることが困難になってしまったジョーンズは、ただただルビーのその艶めかしい姿に釘付けになってしまっていた。 

一歩一歩ルビーが自分に近づいてくるたびに、今までどうやって息をしていたのか忘れかけてしまったジョーンズは生唾をどうにか飲み込んだ。

「すごくあたたかいわ。気持ちがいいわね、ジョー。…ジョー?」 

「はっ…あっああ。ごめん、なんだって?」 

「どうしたの、ジョー?気持ちいいわねって言ったのよ?」  

「ああ、本当に気持ちいいものだな。俺も初めて入ったが癖になりそうだ。」  

「すごい、お湯が少しヌルヌルしてるのね。お茶会で友人が話してた通り、お肌がつやつやになりそうだわ。ほらみて、肌がこんなにすべすべしてる。」 

「…うっ……」 

「どうしたの?ジョー?大丈夫?」 

「…大丈夫だ、ルビー。俺のことは気にしないで温泉を楽しんでくれ…。」 

「どうしちゃったの?ジョー?おかしな人ね。ふふっ」 

その後、少し熱くなってきたからと言っては温泉の淵に腰かけては再び温泉に浸かることを繰り返したルビーは、その真っ白い全身の肌をうっすらと薄紅色に変えていた。

鈍感で残酷なルビーと一緒に湯につかってしまったことに幸運を感じると同時に、これはいったい何の罰ゲームだと自問自答を続けるジョーンズだった。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路

今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。 すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。 ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。 それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。 そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ…… ※短い……はず

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです

よどら文鳥
恋愛
 貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。  どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。  ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。  旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。  現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。  貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。  それすら理解せずに堂々と……。  仕方がありません。  旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。  ただし、平和的に叶えられるかは別です。  政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?  ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。  折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...