愛を知ってしまった君は

梅雨の人

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おっそろしい女

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ジョーンズはその深夜、何度目かになる深く深く艶めかしいため息を吐き出していた。 

先程、目の当たりにした艶めかしいルビーを思い出すだけで容易く滾ってしまう己をなだめるため、温泉から出てずっと自分の部屋に備えつけられている浴室に籠っている。 

「……」

湯につかるために髪の毛を無造作に上へ結わえただけのルビーの艶目かしい首筋を思い出しては、そこへむしゃぶりついたらお互いにどうなるのだろうと想像しては熱いため息を溢し続けていた。 


あの時、湯を堪能したルビーが、そろそろ部屋に戻ろうと聞いてきたときに、自分はあともう少しそこに残っていると伝えるのが精いっぱいだった。 

ルビーのあんな姿を一目見ただけであり得ないほど反応してしまっていたからだ。 

仕方ないわね。じゃあ、先に行ってるわと言って、湯から立ち上がったルビー…。 

ゆっくりとした動きで立ち上がり、転ばないようにと慎重に脱衣所まで向かって行ったルビーの艶めかしい肢体の揺れ…。 

髪の毛と同じ色のものがうっすら生えている秘めたる場所、しなやかなで華奢な肢体に似合わず豊かでやわらかそうな二つの膨らみ…その全てが水分を含んだ薄い布を通してあらわになっていたことにルビーは気が付いていたのか? 

フワフワとして行く意識のなかで必死に暴れる欲望と戦いながらも、ルビーの甘く魅惑的な匂いに吸い寄せられていく自分を止めるのは、至難の業だった。 

先祖の名前を順番に頭の中で唱え続けたが効果はいまいちだったので、次の為に何か対策を考えておこうと思う… 

凶器だ…。 
あの凶器によく耐えられたと自分を褒め称えたい。 

どうしてルビーの旦那はあれで浮気が出来たんだ…? 

おっそろしいルビー…。鈍感と無自覚という名の耐えがたい暴力を人生で初めて今日味わった。

完敗だった。

その日の深夜、どうにか収まってきた熱に安堵したジョーンズは屍の如く一人ベッドに身をうずめた。 
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