愛を知ってしまった君は

梅雨の人

文字の大きさ
45 / 49

ノア:君が去った後で

しおりを挟む
ルビーが去っていった。 



最初は私たちの恋愛感情など必要なかった。自分の婚約者だと初めて紹介されたのは14の時だった。 

一つ年下の彼女は物静かで、一見大人しいだけかと思ったが真のあるしっかりした女性だとすぐに気が付いた。 

長いまつげが大きな綺麗な瞳に影を作り、神秘的で物憂げで、いつの間にかその瞳に吸い寄せられたように目が離せなくなっていた。

他の奴らの目に触れさせたくない、自分だけを見てほしい。その透き通るような声も、甘く爽やかに香るしなやかな肢体も全て自分のものに出来たのだと結婚後は浮かれていた。 

甘やかせてずっと閉じ込めておきたかった。それほどまでにルビーを愛していたのに。 

突然ルビーの親友だったカミラからルビーの誕生日に贈るものを一緒に選んでほしいのだと手紙を貰い、何も考えずに買い物に共に出かけた。 

何かと身体を寄せてくるその女にこんな女だったのかと不快感を抱いたがルビーの親友だと思いぐっとこらえた。 

でも、愚かな私はずっと自分のことを想っていた、ルビーと出来ないことでも何でもするからと懇願され流されるままに関係を持ってしまった。

ルビーには絶対に出来ないことをしても歓喜に震える女は、それから次第に自分にとって都合の良い存在となっていた。だが、そんな日々も長続きせず、ルビーにばらすと脅された。 

結婚記念日にルビーがずっと行きたいと願っていた街へ女を連れていく羽目になった。 

そしてついには、屋敷の夫婦の寝室で過ごしたいと押し切られた。 

そして夫婦の寝室であの女とやけくそな気持ちで交わっていたのをルビーに目撃された。心臓がえぐられる思いがした。 

それからというもの、必死にルビーを自分につなぎ留めたくてあの誓約書にサインをした直後、あの男がルビーの前に現れるようになった。 

二人で出かけるようになり、しまいには、私がいつかルビーを連れていきたかったソルトー街に二人で行ってしまった。 

ソルト-街から帰って来てからルビーはジョーンズと距離を置いていた。
ホッとしたのもつかの間、ジョーンズを見つめるルビーの表情を見て遂に愛を知ってしまったのだと悟った。 

彼女を手放すのは身を切られるほどつらかった。

こんなはずではなかった。 

ルビーのいない世界は白黒の世界のようだ。



養子となった息子が屋敷で生活するようになった。

非常に優秀な子で、あとを継がせることに何の問題もなさそうで安堵している。

母親がいないことに申し訳なさを感じるが。

それでも私はこれからもルビーの幸せを祈って、この子と二人で生きてく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

最初から間違っていたんですよ

わらびもち
恋愛
二人の門出を祝う晴れの日に、彼は別の女性の手を取った。 花嫁を置き去りにして駆け落ちする花婿。 でも不思議、どうしてそれで幸せになれると思ったの……?

比べないでください

わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」 「ビクトリアならそんなことは言わない」  前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。  もう、うんざりです。  そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……  

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路

今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。 すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。 ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。 それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。 そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ…… ※短い……はず

【完結】私の婚約者は、妹を選ぶ。

❄️冬は つとめて
恋愛
【本編完結】私の婚約者は、妹に会うために家に訪れる。 【楽しい旅行】続きです。

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです

よどら文鳥
恋愛
 貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。  どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。  ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。  旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。  現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。  貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。  それすら理解せずに堂々と……。  仕方がありません。  旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。  ただし、平和的に叶えられるかは別です。  政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?  ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。  折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

処理中です...