見捨てられたのは私

梅雨の人

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「妙子、小雪さんが来てくれたよ。」 

「まあ、小雪様」 

「妙子様ごきげんよう。お加減が宜しくないと伺って図々しくも妙子さまに会いに来てしまいましたわ。」 

「図々しいなんてそんな事絶対にありえませんわ、このような姿でお迎えしてしまってごめんなさいね。」 

 

妙子さまの旦那様は気を使って下り私と妙子さまを残して部屋を出ていかれました。 

出ていかれる際に、妙子さまの肩に優しくショールをおかけになって、お二人がほほ笑みあっておられます。
本当に二人はお似合いの夫婦だと素直に羨ましく感じてしまいます。 

妙子さまと子供の頃、二人でお茶を共にした時に、偶然現れた子猫の後を思わず二人でつけて行ってお茶会どころではなくなってしまったこと。 

孝一郎お兄様のご学友に二人して憧れを抱いたこと。 

そして亮真様と婚約したことを妙子様になかなか言い出せなくて、気まずくなってしばらくぎくしゃくしてしまったことなど昔の思い出話に花を咲かせておりました。 

本当に懐かしくてあっという間に時間が過ぎてしまいました。 

「小雪様、今日は訪ねてきてくださって本当にうれしかったわ。本当に…本当に、ありがとう。小雪様がお友達で私とても幸せよ。」 

「妙子様、私も妙子さまのようなお友達がいてくださって本当に幸せですわ。また是非お邪魔させてくださいませ。」 

「ええ、もちろんよ小雪様。いつでもいらっしゃってね。あと、私はいつでも小雪様の見方よ。いつまでも小雪様のことを応援しているわ。だから、どうか、どうかお幸せにね…。」 

「妙子様?」 

ポロリと涙を流す妙子様をすかさずぬぐって差し上げている妙子さまの旦那様が私に静かに頭を下げられます。 

お二人の仲の睦まじさに心が温まります。私はお二人に頭を下げその場を後にさせていただきました。 

 

それから三週間後、妙子さまは静かにお亡くなりになりました。 

  

妙子さまに最後まで寄り添っておられた妙子さまの旦那様は憔悴しておられました。 

「最後に妙子があなたと話をしたいのだという願いをかなえられてよかった。ありがとうございました。」 

「何も知らずに暢気に昔話に花を咲かせただけで何も気が利いたことがあの時できずに申し訳ございませんでした…。」  


葬儀はしめやかに執り行なわれました。私は涙を抑えることができずにおりました。 

それからは心にぽっかりと穴が開いたようで食事ものどを通らなくなってしまいました。 

幸か不幸か、だからと言ってそんなわたくしの様子にここではだれも気がついてはおりません。 

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