見捨てられたのは私

梅雨の人

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妙子様がなくなられてしばらく経ちました。

無性に妙子様が恋しくて時折お墓参りに出かけるようになりました。 

今日もこれから出かける前に執務室の部屋の前を通っておりますと少し扉が開いておりました。

中から声が漏れ聞こえてきます。 
 

「琴葉義姉さん。あなたは俺の憧れの人なんだからずっと幸せでいてほしい。」 

「まあ…亮真さん…」 

 

聞き間違えでなければそれは亮真様と琴葉お義姉様。 

ちらりと扉の隙間から見えたのは見つめ合われるお二人の姿でした。 

息苦しくてやっとの思いで呼吸を繰り返しながら車へ乗り込みました。 

運転手に行先を告げ窓の外に目をやります。 

うすうす分かっておりましたが、先ほどの光景を思い出すと心の奥が軋みます。
家族の皆にあんなに亮真様との婚姻を考え直すように言われておりましたのに、わがままを押し通して亮真様と夫婦になってもただただ虚しいだけでございます。

「奥様、到着いたしました。」
「ありがとう。」 

いつのまにかお寺に到着していた私は、一人妙子さまのもとに向かいます。この角を曲がってすぐのところに妙子さまの眠られるお墓があるのですが、今日はそこには妙子さまの旦那様がいらっしゃいました。 

お二人の邪魔をしたくありませんのでしばらく陰になっているこの角っこで待たせて頂きます。 

妙子さまがこんなに早く亡くなられるなんて神様はなぜこのようなことをなさるのでしょうか。 

どうせなら愛されていない私が代わりに天に召され、このように愛される妙子様こそ旦那様とお幸せに長生き出来たらよかったのに…。 

雲行きが怪しくなりついに雨が降ってまいりました。 


引き返して雨が止むのを待っておりましたが一向に止む気配が見受けられませんので、傘を貸していただいてお参りに伺うことにいたしました。

妙子さまの旦那様もさすがにもうお帰りになられたとばかり思っておりましたのに、なんと妙子さまのお墓の前で倒れられておりました。 

「大変っ」 

慌てて妙子さまの旦那様に駆け付けます。  

うつろな目をした妙子さまの旦那様を肩にもたれかけさせて引きずるようにもと来た道を戻ります。  

驚いたことに思っていたよりもずいぶんと軽くやせ細っておられる妙子さまの旦那様の御様子に胸騒ぎがいたします。 

女で一人で成人男性を支えるのは大変なことで、私の息はあがって肺で息を吸うのも難しいほど息切れをおこしてしまいました。 

体中の力をかき集めるようにどうにか前に進んでいきます。 

ずぶ濡れでお世辞にも水も滴る何とかな女とは言えませんが、そんなことを気にしている余裕もございません。 
視界もぼやけて見えてきたところでふっと肩が軽くなるのを感じました。 

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