見捨てられたのは私

梅雨の人

文字の大きさ
63 / 147

59

しおりを挟む
翌日朝の支度を終えて部屋を出ると、亮真様が壁に寄りかかって私が部屋から出てくるのを待っておられました。 

「一緒に朝食に行こうと待っていた。君の足が不自由な頃毎日抱きかかえて行っていたのが懐かしいな。」 

「…そうですね。」 

(---なぜ今そんなことを言うの?) 

「小雪、昨日は大丈夫だったか?」 

「大丈夫とは、何のことでございますか?」 

「一人で帰らせてしまった。」 

「ええ。それはもちろん」 

「もちろん…か。そうか。それはそうと、一宮氏のことだが以前君が墓参りの途中で大変だった時に助けてくれたのが彼だったというのは本当か?」 

「ええ、その通りでございます。そのようにお伝えしていたはずですが?」 

「あ、ああ。そうだったな。いや、あの時は忙しくて私もそこまで気に留めていなかったから。」 

(妻が外出中に熱で倒れた時に、忙しくて気に留めることが出来ないのですね――。すこし、白けてしまうわ…。) 

「小雪?」 

「それで、亮真様は何がおっしゃりたいのでしょうか?」 

「何がというか、意外で。」 

「意外とは?」 

「いや、君が私以外の男と知り合いだということが…いや、なんでもない。今日は、君は何をする予定なんだ?」 

「今日は屋敷の使用人へこの季節風邪をひかないように、厚手の上着を手配する予定です。お屋敷の管理費の計算とお給料の日も近いので、その準備にもそろそろ取り掛かる予定ですが。」 

「そうか、それは忙しそうだな。それなら外に行く暇もないだろうな…小雪、出来たらしばらく外出は控えてくれないか?」 

「それは…それはなぜなのですか?」 

「君をあの男と…いや、君はまだ体調が全開になったわけではないのだし、屋敷で暖かくしていてほしいんだ。」 

「ずっと屋敷にこもることは出来かねますが…」 

「それでも出来るだけ外に出ないでほしい。」 

普段声を感情をあらわにしない亮真様が必死に言い募るのを初めて目にしました。 

それでも、この屋敷にずっとこもっているだなんて私にはできそうもありませんが… 
「理由をお伺いしても?」 

「それは、君が…」 

「私がどうしたのでしょう。」 

「いや、なんでもない。」 

「そうですか…ではご馳走様でした。」 

「小雪、もういいのか?あまり食べていないじゃないか。」 

「いえ…もう十分頂きましたので。申し訳ございませんがお先に失礼させて頂きます。」 

 
◇◇◇◇

「タカさん、使用人の上着について最終確認したいの。いくつか案があったけど最後は多数決で決めるというのはどうかしらね。」 

「あら、奥様がお決めにならなくてよろしいのですか?」 

「私はどの案も素晴らしいと思っているから後は着るほうが選んでくれたらいいのよ。一度みんなを集めて聞いてくれるかしら?それが終わったらみんなの寸法は測っているから発注するだけね。何とか今日中に終わらせましょう。出来るだけ早くみんなに身に着けてもらいたいものね。」 

「奥様…ありがとうございます。」 

「後それから、みんなのお給料の手配と、この屋敷の管理費の計算と…」 

「奥様、頑張りすぎですよ。お体を崩されては元も子もありませんからね。一人で無理なさらないで、私たちをどんどんこき使ってくださいませ。」 

「どんどんこき使うなんてできないわよっふふふっ」 

この屋敷の使用人が入れ替わってからというもの、タカさんを筆頭に皆がとても私を慕ってくれているようです。 

出来るだけ外に出てほしくないと亮真様に言われたからではありませんが、結局その後予定よりも一日延びて四日間屋敷に缶詰め状態になりました。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

処理中です...