見捨てられたのは私

梅雨の人

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廊下で立ち止まった亮真様が急に足を止められました。 

「亮真さんっ…」 

「ああっ!!お待ちください琴葉様!」

早く体を亮真様から離さなければと足掻きますのに亮真様はそれでも私を腕に抱いたまま手放してはくれません。 


「亮真様、おろしてくださいませ…」 

「小雪…」 

 

「亮真さんっ…!!」 

 

「…義姉さん。もう来ないようにさっき伝えたばかりだがだが?」 

「お願い…お願いだから…助けて、亮真さん!!最後のお願いよ!」 

 

「…はぁ…客間で待っていてくれ…。」 

「ありがとう、亮真さんっ!!」 

 

「…行くぞ、小雪。」 

 

ゆったりとした足取りで私を抱えて部屋に戻った亮真様は、無言でじっと私を見つめた後に部屋を出ていかれました。いつもなら私が部屋から出られないように外側から鍵をかける音がカチャリと聞こえますのに今は何も聞こえてまいりません。 

今なら逃げ出すことが出来るでしょう。ですのに亮真様と琴葉お義姉様が今何をしているのかこの目で確かめなければという衝動で体が勝手に動き出します。私の手が、足が、本能がどんどんと客間の方へ私の体を押し進めて行っております。 

廊下ですれ違う使用人が驚きと戸惑いの表情で一人で歩みを進める私を見ておりますが誰も私を止めようとはしません。 

ドクンドクンとうるさい鼓動で頭の中がしびれそうになるのをぐっとこらえて客間の扉の前到着いたしました。
私の隣では、無言の数名の使用人が私をその場を離れるように必死に頭を下げております。 

「っふ…亮真さんだけ…亮真さんだけなの…もう亮真さんだけなのよ…一度だけでいいの…お願い…私を、私を…なぜ誰も私を愛してくれないの?もう太賀は私に見向きもしない。亮真さんお願い…今だけでいいの。愛されてるって今だけでも感じさせてほしいっ…お願いっ」 

「駄目だ義姉さん、やめてくれ。」 

「お願い…お願いよっ。ずっと、ずっと亮真さんを支えてきたのは…小さなころからあなたを支えてきたのは小雪さんじゃないわ。私よ…私がっ私が亮真さんを支えてきたのよっ…「 

「それは…そうだが…それでも…」 

「お願い…お願いっ…今だけでいいの…」 

少し開けた扉の隙間から中をのぞくと、一方的にお義姉様が亮真様に縋って口づけをしております。 

「小雪さんのっ…小雪さんの代わりでもいいから…一度だけでいいのっ…お願い…お願い…」 

「っ…」 

立ちすくむ亮真様はお義姉様にされるがままになっておりましたがやがてお義姉様に押し倒されるように長椅子に共に倒れこみました。

その様子に私が呆然となっておりますと、亮真様の体に密着したお義姉様がこちらを見てニヤリと目を細められたのでした。
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