雪とともに消えた記憶~冬に起きた奇跡~

梅雨の人

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セガール

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「ラシータはまだ目覚めないのか…」


ーーーこんなはずではなかった。

愛おしいラシータが賊に襲われ昏睡状態だと連絡が入ったあの日、執務室にいた私は急いでラシータのもとに向かった。


「ラシータ!!!」

慌てて病室に駆け込むとラシータは横になったまま反応しなかった。

「なぜこのようなことに…」

「セガール様、我々が駆け付けた時にはすでにラシータ様は階段から落ちた後でした。もう少し早く駆け付けることができていればと悔やんでも悔やみきれません。申し訳ございません。」

「どうして…どうしてこのようなことになったのだっ」

「ラシータ様についていた護衛3名はロナルド以外全員が突然現れた大勢の賊の急襲により倒れました。ラシータ様が階段から落ちた際、ロナルドが体を張ったおかげで奇跡的にラシータ様の命に別状はないと医師が申しております。」

「命に別状はないのか?!ああ…よかった、ラシータ…」

安堵したのもつかの間で、その後医師が、ラシータが階段から落ちた際に頭を強くうちつけたことで、いつ昏睡状態から目が覚めるかは定かでないと説明してきた。

「そんな…いつ目が覚めるかわからないなど…」

「お気の毒ですが、そればかりは私共でも測りかねます。今日目覚めるかもしれないしもしかしたら1か月後、あるいは…」

心臓が鷲掴みされるような痛みを覚えた。

「それでどこのどいつなんだラシータをこんな目に合わせたのはっ!」

「それはロナルドとラシータ様に向かって賊がセガール様と関係のあった女が依頼したとこぼしていたらしいのですが。とらえた賊も間違いないと。」

「なに?俺と関係のあった女だと?俺はラシータ以外触れたことなど誓ってないぞ!」

「カトレアという女は覚えていらっしゃいませんか?」

「カトレア?だれだそれは!」

「社交の場でセガール様と逢瀬を重ねていたという噂が出ている女ですが…」

「…ああ…早くあの女を捉えろ。地下牢に彫り込んでおくんだ!!」

興味もなかったので名前など知ろうともしなかったが、あの女がラシータをこんな目に合わせたのかーーー。

死ぬより痛い目を見せてやるーーー。
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