23 / 68
24
しおりを挟む
「お嬢様…今日は夜会を欠席なさってはいかがですか。またアベラルド様にお会いにならなければならないなんて…今日もほとんど何も口にしていらっしゃらなかったではないですか…」
「イリス、今日の夜会を欠席できるものなら私だってそうさせてもらいたいのよ…でも王宮での夜会はよほどのことがない限り欠席はしてはならないのだから…仕方がないわ…」
先日、アベラルド様とあんなことがありましたのに、これから二人で着飾って共に夜会に向かわなければならないのです。
一歩足を進めるたびに、重くなっていく足を引きずるような思いで階段を下りていくと、そこにはすでにアベラルド様がいて、私を見るやいなや階段を駆け上がって来られました。
「マリア…綺麗だよ。」
ふわりとほほ笑みかけてくるアベラルド様はまるでいつもと変わらない態度で私に接してこられます。 アベラルド様の中では私がすべてを飲み込み、アベラルド様をただひたすら愛する婚約者だと思っておられるのでしょう。そんなふうに思ってしまうだけで一々落ち込んでしまう自分が嫌になってしまいます。
馬車の中で目の前のアベラルド様と目が合うたびにぞわりぞわりとした感覚が沸き上がります。そして気が付けば夜会会場である王宮に足を踏み入れていたのでした。
「マリア、悪いが少し待っていてくれないか。すぐに......いや、今日は君のそばにいることにするよ。」
「そう…なのですか。御用がおありなのではございませんか?」
「気にしないでくれ。ところでこんなに綺麗な私の婚約者殿は元気がないようだね?」
そう言って私の腰に手を添えて美しい瞳を細めているアベラルド様に、周囲の女性たちの息を吞む音が聞こえてまいりました。
珍しくしばらく私にぴったりと寄り添っておられたアベラルド様は、遠くからこちらに視線を送ってくるテリーヌ前伯爵夫人を無視しておりましたが、結局私をおいてそちらへ向かわれることにしたようです。
「マリア。」
立ち去る際に振り向いて私の名を呼んだアベラルド様の声に気が付きながらも、その視線にも声にも気が付かない風を装って、私は反対方向へ足を進め始めたのでした。
「イリス、今日の夜会を欠席できるものなら私だってそうさせてもらいたいのよ…でも王宮での夜会はよほどのことがない限り欠席はしてはならないのだから…仕方がないわ…」
先日、アベラルド様とあんなことがありましたのに、これから二人で着飾って共に夜会に向かわなければならないのです。
一歩足を進めるたびに、重くなっていく足を引きずるような思いで階段を下りていくと、そこにはすでにアベラルド様がいて、私を見るやいなや階段を駆け上がって来られました。
「マリア…綺麗だよ。」
ふわりとほほ笑みかけてくるアベラルド様はまるでいつもと変わらない態度で私に接してこられます。 アベラルド様の中では私がすべてを飲み込み、アベラルド様をただひたすら愛する婚約者だと思っておられるのでしょう。そんなふうに思ってしまうだけで一々落ち込んでしまう自分が嫌になってしまいます。
馬車の中で目の前のアベラルド様と目が合うたびにぞわりぞわりとした感覚が沸き上がります。そして気が付けば夜会会場である王宮に足を踏み入れていたのでした。
「マリア、悪いが少し待っていてくれないか。すぐに......いや、今日は君のそばにいることにするよ。」
「そう…なのですか。御用がおありなのではございませんか?」
「気にしないでくれ。ところでこんなに綺麗な私の婚約者殿は元気がないようだね?」
そう言って私の腰に手を添えて美しい瞳を細めているアベラルド様に、周囲の女性たちの息を吞む音が聞こえてまいりました。
珍しくしばらく私にぴったりと寄り添っておられたアベラルド様は、遠くからこちらに視線を送ってくるテリーヌ前伯爵夫人を無視しておりましたが、結局私をおいてそちらへ向かわれることにしたようです。
「マリア。」
立ち去る際に振り向いて私の名を呼んだアベラルド様の声に気が付きながらも、その視線にも声にも気が付かない風を装って、私は反対方向へ足を進め始めたのでした。
2,122
あなたにおすすめの小説
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
あなたの姿をもう追う事はありません
彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。
王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。
なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?
わたしはカイルの姿を見て追っていく。
ずっと、ずっと・・・。
でも、もういいのかもしれない。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる