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しおりを挟むお父様がフェリックス様に匿われている私を訪ねてきたあの日からひと月が立ったころ、キンブリー侯爵家の屋敷にそろそろも戻る必要がありそうだとお父様からお手紙をいただきました。
あの夜会で私が崖から落ちた日以来、アベラルド様が時間が許す限り私を血眼で未だに探し続けているようです。
未だ見つかっていない私との婚約を継続することをあまりにも強く望むアベラルド様に押さているのでしょう。ヒギンス公爵様も王太子殿下も、お父様がしぶとく願い出ている私とアベラルド様の婚約破棄をのらりくらりとかわし続けておられるようです。
結果、私は未だアベラルド様の婚約者という立場なのだそうです。
私が崖から落ち、未だ生存が確認されていないという事実やその理由が、王家やヒギンス公爵家及びお父様の中で内密にされている限りは、公爵家と侯爵家の婚約を陛下が介入して破棄にするのはどちらにしても難しいのだそうです。
それからあの日アベラルド様と抱き合っていた女性は、今はもうこの国にはいないのだとお父様が教えてくださいました。詳しいことは教えてくださいませんでしたが。
それと、アベラルド様が急に女性たちとの遊びをピタリとやめてしまったようです。婚約者であるキンブリー侯爵家の次女である私が姿を見せない状況がさらに輪をかけてしまって、私やアベラルド様に何か起こったのではないかと貴族間でささやかれるようになったそうです。
このままではアベラルド様が私を探し続けていることが公になり、あの夜会の日に実は私が崖から落ちたのだと知られてしまうのも時間の問題です。
崖から落ちた侯爵令嬢など悪い噂にしかならないのは目に見えておりますので、お父様もそれは避けたいのでしょう。
これ以上隠れているのはおそらく得策ではないだろう、陛下やヒギンス公爵家に私が見つかったと連絡をし、そろそろ屋敷に戻ってきた方がいいと、お父様が手紙をしたためて私のところへと送ってくださっていたのです。
「マリア嬢、まだ体も完治していない。私のところにもうしばらくいるといい。貴族連中のうわさなど俺がどうとでもしてやる。」
「フェリックス様、そうおっしゃって下さりありがとうございます。でもこれ以上私がこちらにいることで、フェリックス様にまで悪い火の粉が降りかかってしまうのは私自身が許せないのです。本当はこうして毎日ゆっくりと過ごしていたい……ですけれども…」
「マリア嬢」
「たまには弱音もこうしてはけるようになりましたもの。これもフェリックス様のおかげです。」
「じゃあ、マリア嬢が向こうの屋敷に戻ったら、たまに会いに行って、いつもみたいにどうしようもない話を聞いてもらってもいいか?」
「ええ、楽しみにしていますわ。」
「そうか」
フェリックス様とのお別れの時間が迫ってきておりました。
あの夜会で私が崖から落ちた日以来、アベラルド様が時間が許す限り私を血眼で未だに探し続けているようです。
未だ見つかっていない私との婚約を継続することをあまりにも強く望むアベラルド様に押さているのでしょう。ヒギンス公爵様も王太子殿下も、お父様がしぶとく願い出ている私とアベラルド様の婚約破棄をのらりくらりとかわし続けておられるようです。
結果、私は未だアベラルド様の婚約者という立場なのだそうです。
私が崖から落ち、未だ生存が確認されていないという事実やその理由が、王家やヒギンス公爵家及びお父様の中で内密にされている限りは、公爵家と侯爵家の婚約を陛下が介入して破棄にするのはどちらにしても難しいのだそうです。
それからあの日アベラルド様と抱き合っていた女性は、今はもうこの国にはいないのだとお父様が教えてくださいました。詳しいことは教えてくださいませんでしたが。
それと、アベラルド様が急に女性たちとの遊びをピタリとやめてしまったようです。婚約者であるキンブリー侯爵家の次女である私が姿を見せない状況がさらに輪をかけてしまって、私やアベラルド様に何か起こったのではないかと貴族間でささやかれるようになったそうです。
このままではアベラルド様が私を探し続けていることが公になり、あの夜会の日に実は私が崖から落ちたのだと知られてしまうのも時間の問題です。
崖から落ちた侯爵令嬢など悪い噂にしかならないのは目に見えておりますので、お父様もそれは避けたいのでしょう。
これ以上隠れているのはおそらく得策ではないだろう、陛下やヒギンス公爵家に私が見つかったと連絡をし、そろそろ屋敷に戻ってきた方がいいと、お父様が手紙をしたためて私のところへと送ってくださっていたのです。
「マリア嬢、まだ体も完治していない。私のところにもうしばらくいるといい。貴族連中のうわさなど俺がどうとでもしてやる。」
「フェリックス様、そうおっしゃって下さりありがとうございます。でもこれ以上私がこちらにいることで、フェリックス様にまで悪い火の粉が降りかかってしまうのは私自身が許せないのです。本当はこうして毎日ゆっくりと過ごしていたい……ですけれども…」
「マリア嬢」
「たまには弱音もこうしてはけるようになりましたもの。これもフェリックス様のおかげです。」
「じゃあ、マリア嬢が向こうの屋敷に戻ったら、たまに会いに行って、いつもみたいにどうしようもない話を聞いてもらってもいいか?」
「ええ、楽しみにしていますわ。」
「そうか」
フェリックス様とのお別れの時間が迫ってきておりました。
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