もう少し早く気が付けば君を失わずに済んだのだろうか、なんて後悔をあなたはきっとしない。

梅雨の人

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「……ヒギンス公爵令息様、シャーロットお姉さまとデイビッドお義兄様が、先日正式に離縁されたことをご存じですか?あの優しく素晴らしいデイビッドお義兄様が離縁を望まれたのです。次期侯爵の座を捨ててまで…

幸いお義兄様はキンブリーの血縁であられるので我が家の大きな領地を任せられることになりました。行く行くは妻帯もお考えになると思われますが、なぜお義兄様がこのような目に合わなければならなかったのでしょう…そうさせたのはどなたかお忘れでしょうか…?ローズもシャーロットお姉さまも未だに部屋から一歩も出ることを許させておりませんのよ?」 

「ああ…その件に関しては…申し訳なかったな…」 

「申し訳ないと思うのなら「しかしその理由までは表沙汰にはできないだろう?君の家族に大変迷惑をかけてしまったのは事実だ。そして真実を公にできないことも。だからその分私がこれから君とキンブリー侯爵家を支えて行くと約束しよう。」 

「そのような約束必要ありません。」 

「何の問題があるマリア?これから君は世界で一番幸せな女性になるのだよ。もちろん私の隣で。」」 

「イリス、申し訳ないけれどヒギンス公爵令息様をお見送りして差し上げて?」 

「かしこまりましたお嬢様。」 

「また来るよマリア。ああ、それと婚姻式の準備はすべて私に任せてくれ。君を世界一幸せな花嫁にして見せよう。」 

「さようならヒギンス公爵令息様。」 

どうして今更アベラルド様は私に執着してくるのでしょうか。逃げても逃げて行き場を無くしていく私をアベラルド様が平気な顔をして追い詰めて来ます。 


「助けてほしいか、マリア嬢?」 

そうおっしゃったフェリックス様の伸びてきたその腕に…吸いつかれるように私の腕は伸ばしておりました。
そして気が付けばフェリックス様に縋りついていたのです。

「マリア嬢、本当に君はあいつと婚約破棄を望むか?」 

「…望む...と言ってもどうにもならないわ…」 

「それはどうかな。なあ、マリア嬢。もしも本当にあいつと婚約解消が出来たら今度は俺と夫婦になってくれないだろうか?」 

突然の申し出にもかかわらず、私はどこかでフェリックス様がそうおっしゃってくれるのをずっと待っていたような気がしておりました。

胸のざわめきが僅かな高鳴りに変わっていった瞬間でした。
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