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第5話
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いつも通りの土曜日の朝。小鳥のさえずりがかすかに聞こえ、カーテンの隙間からまぶしい光が差し込んできて、目が覚める。なんてさわやかな朝の気配だろうか。
ゆっくりと目を開いていくと、薄ぼやけた視界で、誰かがこちらを覗き込んでいる。
「想、おはよう」
「…えへへっ」
頬を撫でる手が気持ちよくて、顔を擦り付けると、かすかに笑い声が聞こえる。
「想のお母さんが朝ごはん出来たよって」
「…う、ん」
「お腹空いてない?」
「…すいてる」
背中に腕が差し入れられ、ゆっくりと起き上がる。
「…あ、れ」
徐々にはっきりしてくる視界の真ん中には、唯斗の顔…
「…っ、唯斗!?」
「うん。おはよう、想」
「な、なんで、唯斗がここにっ?」
間近で致死量の唯斗を浴びて、朝からもう瀕死状態だ。目の前の唯斗はきちんと着替えているのに、こちとらまだ寝間着で顔も洗っていない。とてもじゃないけれど、好きな人にゼロ距離で見られるに耐えうる顔面ではない。
せめてものごまかしとして顔を手で隠すと、唯斗はまた笑った。
「想のお母さんが昨日朝ごはんに誘ってくれたから」
「…そうだ、今日は唯斗の絵を見に行く日!」
「うん、デートだね」
「で、…」
楽しそうにその単語を口にした唯斗に、徐々に頬に熱が集まってくる。
「ふふっ、顔が真っ赤」
「…だって」
だって、唯斗とデートなんて、何回目でも緊張するに決まってる。こんなにかっこよくて、こんなに優しい、俺の幼馴染兼、恋人。
「あの絵は、想に見てほしいから」
「うん。ちょっと…恥ずかしいけど」
「しっかり見てね。しっかり見て、僕の気持ち、ちゃんと受け取って?」
今日ふたりで見に行く約束をしているのは、唯斗が大賞を取った、『放課後に見た夢』だ。
「…もう、いっぱいいっぱいかも…」
普段から、唯斗の表情に、言葉に、指先に、愛しさや優しさがこもっていて、これ以上となると、もう絶対にパンクする。ちょっとは手加減をしてくれないと困る。
「まだ足りないよ。想への気持ちが、枯れることなく溢れてくるから」
「…あえっ、と…」
そう言って微笑んでくる唯斗に、こちらの脳みそは沸騰しそうだ。比喩どころの話ではなく本気で、視界と思考が沸騰直前の鍋のフタみたいに、ぐらぐら揺れてきている。
「ほら、朝ごはん食べに行こう?」
そして、フィルターもかけられない肉眼なのに、唯斗にはきらきらと光るエフェクトが付いている。朝にふさわしい、なんて爽やかな雰囲気。対して、唯斗の言動ひとつひとつに振り回されているこちらは、さっきから全く顔の表面温度が下がらない。
「…ちょっと、顔洗ってくるから、先に行ってて」
ゆっくりと目を開いていくと、薄ぼやけた視界で、誰かがこちらを覗き込んでいる。
「想、おはよう」
「…えへへっ」
頬を撫でる手が気持ちよくて、顔を擦り付けると、かすかに笑い声が聞こえる。
「想のお母さんが朝ごはん出来たよって」
「…う、ん」
「お腹空いてない?」
「…すいてる」
背中に腕が差し入れられ、ゆっくりと起き上がる。
「…あ、れ」
徐々にはっきりしてくる視界の真ん中には、唯斗の顔…
「…っ、唯斗!?」
「うん。おはよう、想」
「な、なんで、唯斗がここにっ?」
間近で致死量の唯斗を浴びて、朝からもう瀕死状態だ。目の前の唯斗はきちんと着替えているのに、こちとらまだ寝間着で顔も洗っていない。とてもじゃないけれど、好きな人にゼロ距離で見られるに耐えうる顔面ではない。
せめてものごまかしとして顔を手で隠すと、唯斗はまた笑った。
「想のお母さんが昨日朝ごはんに誘ってくれたから」
「…そうだ、今日は唯斗の絵を見に行く日!」
「うん、デートだね」
「で、…」
楽しそうにその単語を口にした唯斗に、徐々に頬に熱が集まってくる。
「ふふっ、顔が真っ赤」
「…だって」
だって、唯斗とデートなんて、何回目でも緊張するに決まってる。こんなにかっこよくて、こんなに優しい、俺の幼馴染兼、恋人。
「あの絵は、想に見てほしいから」
「うん。ちょっと…恥ずかしいけど」
「しっかり見てね。しっかり見て、僕の気持ち、ちゃんと受け取って?」
今日ふたりで見に行く約束をしているのは、唯斗が大賞を取った、『放課後に見た夢』だ。
「…もう、いっぱいいっぱいかも…」
普段から、唯斗の表情に、言葉に、指先に、愛しさや優しさがこもっていて、これ以上となると、もう絶対にパンクする。ちょっとは手加減をしてくれないと困る。
「まだ足りないよ。想への気持ちが、枯れることなく溢れてくるから」
「…あえっ、と…」
そう言って微笑んでくる唯斗に、こちらの脳みそは沸騰しそうだ。比喩どころの話ではなく本気で、視界と思考が沸騰直前の鍋のフタみたいに、ぐらぐら揺れてきている。
「ほら、朝ごはん食べに行こう?」
そして、フィルターもかけられない肉眼なのに、唯斗にはきらきらと光るエフェクトが付いている。朝にふさわしい、なんて爽やかな雰囲気。対して、唯斗の言動ひとつひとつに振り回されているこちらは、さっきから全く顔の表面温度が下がらない。
「…ちょっと、顔洗ってくるから、先に行ってて」
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