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要塞建設

5-2 訪問者

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 無駄な行動が多かった気がするが。あの後あっという間にヴアイゼインゼルの町の周りに壁。城壁が出来た。
 そして城壁が出来てからすでにしばらく経った。
 城壁が突然できた時には、ヴアイゼインゼルの町の人達もかなり驚いていたが――今ではもう慣れた様子だ。城壁ができたことで今までより安全に暮らせるからか。町に活気も戻ってきている。少ないが子供たちが遊ぶ声も頻繁に聞こえてくる(その中にルーナの声がちょくちょくあるのは――まあいいだろう。ちなみにニーナの声も混じっている)。城壁ができるまでは、町の中心。主にルーナたちが居る近くなら安全。魔王城の離れ近辺は安全というだけだったので。それから比べるとかなり安全な場所が広がった。
 ちなみにソフィ曰く。壁だけではなく。魔術を使い。目には見えないもう1つの壁というのだろうか?不意打ちに関してもちゃんと守れるように――というのか。とにかくだ。今はヴアイゼインゼルの町へと入る門は1か所だけ。そしてそこもルーナたちの魔術によりかなり警戒が高くなっているということだ。そうそう頭上。さすがに空には壁がなく。今も快晴なのだが。そこもちゃんと対応されている。
 ここからではわからないが。実はこの城壁の外。ヴアイゼインゼルの町の外は今大雨になっているらしい。ヴアイゼインゼルの町中に居ると気持ちのいい気候。天気なので、ピンとはなったく来ないが。少し前に俺もルーナたちとどうなっているのか確認に行ったら――それはそれは大洪水。大雨でそれはそれはすごいことになっていた。



 これは数日前のこと。

「ソフィこれこっちに流れ込んだりしてこないの?」

 ヴアイゼインゼルの町に新たにできた門から外の様子を見つつ。ソフィに声をかけるルーナ。

「それはルーナ様の力次第ですね」

 それに濡れないように少し下がって返事をするソフィ。

「私責任重大!って、私の魔術こんなに連続ではできないはずなのに――」
「あっ。天気に関してはニーナ様のご協力も得ていますので」
「それ私聞いていない――ってか、何がどうなっているのか説明まだ?」
「ルーナ様にしてもですから。ニーナ様には伝えましたが」
「いろいろおかしいでしょ!?」
「……」

 ルーナの言う通りいろいろおかしいことにヴアイゼインゼルの町の外はなっていた。どういう仕組みなのかは俺は――まあなんとなくわかっているが。
 簡単に言うと。ルーナの魔術だけで悪天候を維持するのは無理だった。そしてソフィが代わりにすることも天気に関してはソフィはできない。ならどうするか。この場で空の力が使える者――まあニーナだ。ほんとニーナのことをもっとちゃんと知らないといけないはずなのに。いろいろあってそれができないまま日々が過ぎているが。
 ――とにかくだ。ソフィは何やらもういろいろ情報を掴んでいるのか。ニーナも空の力を使えることを知っており。ニーナとソフィが協力して悪天候。空と風の力とかのミックスだな。それをヴアイゼインゼルの町の外だけに発動しているという状況だ。
 
 まあびっくりなのはニーナの維持力だな。本人曰く一度したら――なんとなく使えるみたいな大雑把なことを言っていることをちらっと聞いた気がするが――本当にニーナのこと調べましょうなのだが……。
 でもそれはできない。攻撃でも受けたら本当にそれどころじゃなくなるし。命の危機だからな。それにここには町の人も居るので――人命第一である。

 そんなこんなで、ヴアイゼインゼルの町の外は悪天候。これならそう簡単に上からの攻撃はできない。悪天候に邪魔されるからな。そして地上からも悪天候と城壁により守られてるので――そう簡単に相手が来ることもない。そして門を突破するのも――難しいだろう。何かあったらまずソフィが飛んで来るからな。ソフィを倒すのは――それはそれは難しいことだからな。

 ◆

「ということで、今のところ以前まであった怪しい影の目撃は減ったそうです」

 ところ変わって現在。ルーナの部屋でソフィが近況報告を始めていた。

「そりゃ――私が作った壁にびっくりして逃げたのよ」

 ソフィの話を聞いたルーナは誇らしげに窓の外を見る。

「いえ、ルーナ様より。ニーナ様のお力があってこそですね」
「なんでよ!私頑張ったじゃない」

 そしてソフィの言葉でズッコケるのだった――この2人漫才?コント?でもしているのだろうか?と、思うような光景だが――いつものこといつものことである。
 
「1人だけ魔力切れになってましたが?」
「頑張ったからよ!」

 実際。城壁作りの後はルーナのみぶっ倒れていた――って、この情報は言わなくておいいことだな。ぶっ倒れたが。ルーナはしっかり働いたんだし。単に付き添いしかできない俺から見たら――だな。
 
 ルーナの部屋でわーきゃーわーきゃーと、ルーナとソフィが言い合っていると。

「セルジオお兄ちゃん――じゃなくて、ルーナ様」

 この部屋に居なかったニーナが慌てた様子で部屋にやって来た。
 
 確か今日のニーナは町の人の手伝いをすると言って少しだけ俺たちとは別行動をしていた。これはヴアイゼインゼルの町が今は安全であるという証拠でもあるな。って――ニーナの様子からして、何かトラブル?があった様子だ。

「どうされました?」

 わーきゃーわーきゃー。ルーナと話していたソフィもすぐにニーナの方を見た。

「えっと、その――バーナデットさん?という方が町の外に来ていると。門番の人達が言っています。急いでルーナ様に知らせてくれと」
「「バーナデット……?」」

 ニーナの報告に俺とルーナが頭の上にはてなマークをまず浮かべた。

「――バーナデットさんですか。これはこれは」

 一方でソフィは心当たり?があるのか。何やら少し考えるような素振りをした後。俺たちの方を見た。そして話し出した。

「バーナデット・フロスト。デアドリットシュタットの長の方ですね。変わっていなければ――」
「デアドリットシュタットって――人間界の?」

 今度は俺の頭にはてなは浮かばなかった――いや、浮かぶのは浮かんだが。聞いたことのある名前だったから。口を挟むことができた。

「そうです。確か――」
「観光の町――だったかと」
「そうでしたね。そこの長の方が――ニーナ様。要件などはわかりますか?」
「す。すみません。門番の人もルーナ様に会わせるように――というようなことを嵐の中から叫んでいるとのことで――」
「何かの作戦?」

 ニーナの報告にソフィが難しい顔をする。
 ここ最近人間界のことを話す機会もなかった俺からすると。久しぶりに聞いた人間界の町の名前。しかし――このタイミングで長の人が訪問?何かの人間界側の作戦と見るのがよさそうだが――と俺が考えていると。

「まあとりあえず。話をしたいのなら会ってみないとですね」

 案外とあっさりというのだろうか?ソフィがそう呟いたのだった。

 ちなみに1人この話に後半全く入れていなかったルーナはというと。

「ちょちょ何が起こってるのか説明してよ。セルジオ!」
「お勉強不足のルーナ様。今度は地理もしっかりしないとですね――って、時間がもったいないので、ルーナ様のことは後で」
「ちょっと!」
「もしかすると、交友したいとかかもしれませんし」
「ちょ、ソフィ。それは絶対ないでしょ」
「わかりませんよ?バーナデットさんは面白い方という情報なので」
「――セルジオ。ソフィの情報網どうなっているの?」
「全くわかりません」

 本当にわからない。ソフィの情報はどこから入ってきているのか不思議に思うことが多々あるが。本当にわからない――などと思っていると、ソフィが歩き出したため。俺たち3人も慌てて移動開始。そして門の方へと向かったのだった。

 ちなみにこの時門へと向かう俺。いた、多分――ソフィ以外の3人は思いもしなかっただろう。
 唐突に現れたバーナデットというデアドリットシュタットの長が『新たな観光地として手を組みたい』とか言うことを話しに来たとは――。
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