枕営業から逃げられない

浅上秀

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おまけの救済ストーリー

清水の話

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清水は中学生のころいじめにあっていた。
彼の容姿が端麗で周りから恨まれたことが原因である。

いじめを苦に自殺しようと思っていたその時に救ってくれたのは彼の兄だった。
兄は死にかけていた清水に言った。

「おまえはこんなところで死ぬような人間じゃない。もっとやるべきことがあるだろ。もし死ぬならお前の顔を俺によこせよ」

冗談交じりに言ってくれた兄の励ましは清水に刺さった。
再び立ち上がった清水はいじめっこたちにえげつない復讐をしていくのだが、それはおいていおく。

やがて兄は夢を持った。

「俺さぁ、役者になりたいんだ。この前見に行った舞台がすげぇ面白かったんだよ。俺もあんな風に誰かを演じてみたいなぁって思ってさ」

兄はいつも嬉しそうに演劇について語るようになった。
そして学生時代は演劇部に入り、社会人になってからは都会で一人暮らしをしながら劇団とアルバイトの両立に勤しんだ。
しかししばらく会わない間に清水の大切な兄は壊れてしまっていた。

兄と再会した時にはすでに精神を病んでしまっていたのだ。
話しかけても何も反応してくれない、まるで人形のような兄を見て清水は泣いた。
そして清水はこの時に、兄をこんな状態にしたやつに復讐を誓った。



「ここまで長いような短いような…」

何人にも嬲られている島田をしり目に呟く。

「長かったですよ」

自身の息子を自殺に追いやられた男性が憎しみの目で島田をにらみつける。

「あなたは参加されなくていいんですか」

男性に清水が尋ねる。

「もちろん…参加しますよ」

男性はそういうと痙攣しながら床に突っ伏している島田に近づいて行った。

「あんたさえいなければ、ここにいる全員がそう思ってるよ。生まれてきたことをせいぜい後悔しろ」

死んだの耳元でそうつぶやいた男性は、嬲る方に手を貸した。

「うひぃいいいい」

尻穴に子供のうでほどの大きさのおもちゃを突き立てられて島田は叫んでいる。

「ざまぁ」

清水はそうつぶやくと倉庫を出ようとした。
入口の方を向こうとして視界にはいった阿部の顔をみたその瞬間、何か確信めいたものをつかんだ。
ガラスのように鈍い光を放った瞳。

「あぁ、この人自殺しそうだな」

清水はまるで過去の自身を見ているようだった。
懐かしさと同時に、ある時に蓋をしたはずの思いが蘇ってきた。

「大丈夫ですか?」

倉庫の扉に向けていた足先の方向を変えて、阿部の隣に立つ。

「あ、え、えぇ」

阿部は瞬きをして清水を視界に入れた。

「帰りましょうか」

「いいんですか?」

「あとは彼らにおまかせしましょう」

清水は阿部の腕を取った。
兄みたいに誰かを救いたいそして愛したい、兄の分まで。

これは何という感情なのか。
名前はわからないが、清水にとってはとても心地よいものな気がした。





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