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カイトがユウタと初めて出会ったのは二人が幼稚園に通っていた時のことだった。
「ねぇ!今日は私と遊んでくれるって言ったよね!」
「違う!わたし!!!」
かわいい幼い女の子の声が園内に響き渡った。
「う~ん、困ったなぁ」
両手を別々の女の子に捕まれて困り果てている真ん中の男がユウタである。
ユウタは昨日、この園に入園したばかりなので誰も知り合いがいなかった。
昨日は親と一緒に入園の挨拶をしに来ただけである。
園児には誰にも会っていないので、ユウタは誰とも約束した覚えがなかった。
「だから、今日は私と遊んでくれるって言ったもん」
「言ってないよ!」
「言った!」
「言ってない!!」
女の子たちの言い合いが激化していく中で、ユウタはいたってのんびりしていた。
だって約束した覚えがそもそもないのだから。
「僕は何も言ってないよぉ~」
「はっ、馬鹿だなおまえら!ユウタは俺と遊ぶって言ったんだよ!」
そこへ男の子が一人現れた。
「それはないよ」
「私もないと思う。だって、ショウくん意地悪だもん」
「はぁ!?」
今度は女の子二人に男の子まで言い合いに参加し始めてしまった。
「僕は誰とも遊ぶなんて言ってないよぉ」
ユウタの声は誰にも聞こえていないようで、三人は三人で揉め始める。
「待ちなさい、あなたたち、喧嘩はダメよ」
そこへ先生がやってくる。
「先生!だって、今日は私と遊ぶ約束だったもん」
「違うよ!!私だって」
「ちげぇよ!俺だよ!!」
三人が三人とも先生にむかって主張する。
「ダメよ、三人とも。ユウタくんは…今日先生と一緒にいる約束なんだから」
「え?違うよ?僕は誰とも約束してないってば」
ユウタのあずかり知らぬ間に遊ぶ約束をした人が次々と増えていく謎現象が起きていた。
「さ、先生とあっちにいきましょうか」
大人の力には逆らえず、ユウタは三人から離されてズリズリと引きずられていく。
「えぇ…」
ユウタが半分、死んだ目をして諦めかけていたその時だった。
「先生、あいつが呼んでた」
先生越しに新たな男の子の声がした。
「あら、カイトくん、そうなの!?」
先生は男の子が指を指した方向に一目さにかけていった。
「大丈夫か、おまえ」
「う、うん」
現れたのは普通の顔に普通の雰囲気、本当に普通の男の子だった。
こういう時は王子様フィルター的なものがかかってカッコよく見えるものだったが…そんなことは全くなかったらしい(後日ユウタ談)。
「てか見たことないけど誰?」
普通の男の子がユウタに声をかける。
「ぼ、僕はユウタ。昨日、ここに入ったばっかりで…」
「へぇ、そうなんだ。俺、カイト、よろしくな」
普通の男の子の名前はカイトだった。
ユウタは口の中で繰り返して読んでみる。
「カイト…よろしくね」
「お、おぅ!」
「カイトはなにしてたの?」
「レゴ」
普通の遊びだった。
…
「おぉ!ユウタ、おはよ」
それから幼稚園に登園するとユウタはカイトにひっついて離れなかった。
たまにカイトにユウタを独占してずるいと文句を行ってくる人もいたが、気付いたら二人はいつもセットだと認識されるようになっていた。
ただそんな平和な日々を崩すような事件が起きたこともあったのだ。
「ねぇ!今日は私と遊んでくれるって言ったよね!」
「違う!わたし!!!」
かわいい幼い女の子の声が園内に響き渡った。
「う~ん、困ったなぁ」
両手を別々の女の子に捕まれて困り果てている真ん中の男がユウタである。
ユウタは昨日、この園に入園したばかりなので誰も知り合いがいなかった。
昨日は親と一緒に入園の挨拶をしに来ただけである。
園児には誰にも会っていないので、ユウタは誰とも約束した覚えがなかった。
「だから、今日は私と遊んでくれるって言ったもん」
「言ってないよ!」
「言った!」
「言ってない!!」
女の子たちの言い合いが激化していく中で、ユウタはいたってのんびりしていた。
だって約束した覚えがそもそもないのだから。
「僕は何も言ってないよぉ~」
「はっ、馬鹿だなおまえら!ユウタは俺と遊ぶって言ったんだよ!」
そこへ男の子が一人現れた。
「それはないよ」
「私もないと思う。だって、ショウくん意地悪だもん」
「はぁ!?」
今度は女の子二人に男の子まで言い合いに参加し始めてしまった。
「僕は誰とも遊ぶなんて言ってないよぉ」
ユウタの声は誰にも聞こえていないようで、三人は三人で揉め始める。
「待ちなさい、あなたたち、喧嘩はダメよ」
そこへ先生がやってくる。
「先生!だって、今日は私と遊ぶ約束だったもん」
「違うよ!!私だって」
「ちげぇよ!俺だよ!!」
三人が三人とも先生にむかって主張する。
「ダメよ、三人とも。ユウタくんは…今日先生と一緒にいる約束なんだから」
「え?違うよ?僕は誰とも約束してないってば」
ユウタのあずかり知らぬ間に遊ぶ約束をした人が次々と増えていく謎現象が起きていた。
「さ、先生とあっちにいきましょうか」
大人の力には逆らえず、ユウタは三人から離されてズリズリと引きずられていく。
「えぇ…」
ユウタが半分、死んだ目をして諦めかけていたその時だった。
「先生、あいつが呼んでた」
先生越しに新たな男の子の声がした。
「あら、カイトくん、そうなの!?」
先生は男の子が指を指した方向に一目さにかけていった。
「大丈夫か、おまえ」
「う、うん」
現れたのは普通の顔に普通の雰囲気、本当に普通の男の子だった。
こういう時は王子様フィルター的なものがかかってカッコよく見えるものだったが…そんなことは全くなかったらしい(後日ユウタ談)。
「てか見たことないけど誰?」
普通の男の子がユウタに声をかける。
「ぼ、僕はユウタ。昨日、ここに入ったばっかりで…」
「へぇ、そうなんだ。俺、カイト、よろしくな」
普通の男の子の名前はカイトだった。
ユウタは口の中で繰り返して読んでみる。
「カイト…よろしくね」
「お、おぅ!」
「カイトはなにしてたの?」
「レゴ」
普通の遊びだった。
…
「おぉ!ユウタ、おはよ」
それから幼稚園に登園するとユウタはカイトにひっついて離れなかった。
たまにカイトにユウタを独占してずるいと文句を行ってくる人もいたが、気付いたら二人はいつもセットだと認識されるようになっていた。
ただそんな平和な日々を崩すような事件が起きたこともあったのだ。
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