魔法少女に就職希望!

浅上秀

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第十一章 負けられない戦いが

第四話 先に行っていて!

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くも怪人とカラス怪人に誘い込まれた建物を出ると再び怪人の大群がはびこっている。

「本当に倒しても倒してもキリがないわね」

「勘弁してよ…」

七人は怪人を倒しながらも走り続ける。

「ははは、ぎゃあああ」

高笑いをしている間にどんどんと切り倒していく。
アミやユリは余裕のようだったが、新人三人はついていけないようだった。

「痛っ」

サヤカの足がもつれて転んでしまった。

「サヤカ!大丈夫?この者の身体を癒せ、ヒール」

「あ、ありがとう…」

サヤカが小さい声で直してくれたユリにお礼を言う。

「はぁ、はぁ」

アヤネも息ができないようだ。

「大丈夫?ゆっくり息をして」

ミヅキが背中をさする。

「ふう、あ、ありがとうございます」

「うっ」

リサは今にも吐きそうだ。

「ちょっと座ろうか」

アミがリサの背中を支える。

「もう限界ね」

七人は一度、物陰に隠れた。
そして一応、怪人避けの魔法をかける。

「これでしばらくは怪人に認識されないはずだから襲ってこないわ」

ミヅキが結界魔法を使用する。

「三人、どうしようか」

アミがアズの顔を見上げる。

「でもここに置いていくなんてできない」

ユリが落ち着いたリサの背中から手を離す。

「エグチさんに頼んで車をお願いするわ。魔法少女協会本部なら襲われないはずだから送ってもらいましょう」

アズが三人の様子を見て判断する。

「ま、待ってください」

「私たちまだ動けます!」

「怪人だって倒せます!」

三人は強い目でアズを見る。

「そうね、あなたたちのその心意気は本当に素晴らしいわ」

アズが少し表情を緩める。

「でも心意気だけじゃこの世界生きていけないの」

ユリが悲しそうな目で三人を見る。

「時には休む勇気も大事よ」

ミヅキが頷く。

「私エグチさんに連絡してみるね」

アミは通信機を手に取った。



「どうだった?」

通信機から耳を離したアミにアズが尋ねる。

「エグチさん、忙しいみたいで通信繋がらなくて…」

アミは肩を落とした。
今までアミが連絡をした時に出なかったことは一度もなかったのだ。

「しょうがないわよ。こんな時ですもの」

ミヅキがアミの肩を叩いて励ます。

「どの意味で落ち込んでるんだか」

ユリがアミの様子を見て一人笑っている。

「どの意味ってどういうことよ」

アミが頬を膨らませてむくれた。

「ははは」

それを見た三人は笑いだす。

「笑える元気はあるようでよかった」

それを見たアミもつられて笑顔になる。

「ほぉら、単純」

ユリがそれを見てまたからかう。
七人は笑い声に包まれたのだった。

「でも正直、身体も魔力ももう限界でしょ?」

「はい…」

「でもまだやれます!」

サヤカが食い下がる。

「だめよ。魔力を使い果たすと死んでしまうんだから」

ユリが厳しい口調で諫める。

「エグチさん以外の協会の人とは連絡取れないの?テラシマさんは?」

「あの人、出張でドバイに行ってて…」

「なぜ今ドバイ」

アズとミヅキが頭を抱える。

「とりあえず私たちは大丈夫です!」

サヤカが四人に向かって言う。

「体力と魔力が回復したらすぐに追いつきます」

リサも顔をあげている。

「だから皆さんは先に行ってください」

アヤネも真剣な眼差しで四人を見据える。

「わかった。でも無理は禁物」

「認識阻害結界は強めに張っておくわ」

「あ、言い忘れてたけどさっきは助けてくれてありがとう」

アミの笑顔に三人は何だか泣きそうになった。

「はい」

「私たちもヒーローになれましたか?」

「うん!本当に頼もしい新人さんだよ」

「時間がもったいないんでさっさと行ってください」

「わかった。絶対、来てね」

「はい」

ここで四人と三人は別れた。
四人は目的地を目指して再び渦中の中に身を投じるのだった。








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