裏クラウドファンディングへようこそ

浅上秀

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番外編 商店街の受難

3話

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商店街のマスコットキャラクターもできてグッズの販売も始まった。
学生とコラボしたことで学生の利用率も上がっている。
学生たちがSNSに商店街の様子をアップしてくれるおかげでさらなる集客効果があった。
しかし不思議なもので人間、欲望とは尽きないものである。

「おい、もっと金を集める方法はないのか」

ある日、組合長に呼び出された奥野にむかって開口一番この言葉が投げられた。

「クラウドファンディングも好調ですしグッズ販売も上々ですが」

奥野はデータを見ながら困ったような表情を浮かべた。
これ以上、何をしろというのだろうか。

「どうせ金にがめついアンタらならもっとほかの方法を知っているだろう」

組合長は踏ん反りがえって鼻を鳴らしている。
奥野は渋い顔のままつぶやいた。

「方法がないわけではないのですが…なんというか公序良俗に反するのでおすすめはできません」

組合長の片方の眉が上下した。

「アンタが薦める方法なら間違いないんだ。出し惜しみなんかしてないでさっさと言え」

「いえ、ですが、その…」

言い淀む奥野に組合長は痺れを切らした。
立ちあがると座っている奥野の胸倉をつかんで揺さぶった。

「いいから言えー!」

相変わらず短気な男だ。

「言います、言いますから離してください」

奥野は胸元の組合長の手を振りほどいた。

「…風俗ですよ。水商売をやれば儲かりますよ」

乱れたネクタイを直しながら奥野はいった。
この商店街は風俗店の営業を認めておらず、スナックですらない。
その代わりに商店街とは駅を挟んで反対側にある繁華街には多くの風俗店が存在するのだ。
繁華街と一線を画すために商店街にはそういった店を作ってはいけない。
これは犯してはいけない商店街の規則の一つだった。

「なるほどな」

組合長は片手で顎をさすってなにやら考えている。

「若いもんにやらせてみようじゃないか。よその奴らから金をふんだくれるように考えておいてくれ」

「…かしこまりました」

奥野は新たな契約書を作成して組合長に渡した。
しかし彼はサラっと表面を撫でるように見ただけで中身を確認せずにサインをしてくれる。

「頼んだぞ」

「はい」

奥野は契約書をカバンにしまうと和菓子屋を後にした。



「ううぅ、どうしたらいいんだ…」

一方、安部は頭を抱えて悩んでいた。
和菓子屋と違ってこちらは不況にあえいでいた。
改装した当初は客入りが好調だったが商店街の人たちは店が忙しいとかでなかなか来てくれなくなってしまったのだ。
それに新規の客がいたとしても同じ商店街にできた美容室に行ってしまう。
客入りが少ないままでは改装のために拵えてしまった借金を返せない。

「安部さん、どうかされましたか?」

隣の店の組合長と打ち合わせを終えた奥野はよく安部の店に顔を出してくれるのだ。

「お、奥野さん、助けてください、お願いします」

返済期限が迫っていた。
安部は奥野を頼るしかなかったのだ。

「…借金ですか。わかりました。ちょうど組合長からも資金集めの新しい契約をいただいたのでよかったら試してみませんか?」

「え、いいんですか!?」

安部は藁にも縋る思いで奥野の手を取った。

「ええ、誰にでもできるとっても簡単なことですから」



それから三カ月経った。
安部はなんとか借金を返すことができたようだった。
奥野は久しぶりに安部の店に足を運んだ。
この三カ月、安部の店に行っても本人が不在にしていることが多かったのだ。

「安部さん、お忙しそうですね」

店には客一人いない。

「奥野、さん、えぇ、奥野さんのおかげです」

安部は少しやつれた顔でパソコンにむかっている。
奥野は安部の見ている画面をのぞき込んだ。

「あぁ、ここはこう書かれた方が出資が集まりますよ」

安部が開いていたのは裏クラウッドファンディングのサイトだった。
彼はサイトを介して出資を募ったのである。
彼以外にもこの商店街の男たちが何人も出資を募っている。
どこの店も奥野にコンサルを頼んだ店ばかりだ。

「ありがとう、ございます」

安部は才能があったのかその界隈では人気があり毎日出資されている。

「いえいえ。では私は組合長に挨拶に参りますので」

「えぇ」

組合長は先月、退任させられたのだ。
理由は商店街に風俗店を開こうとしたので商店街の規則に違反したからだとか。
おろされた組合長はすっかり生気を失って息子に店を譲って家にこもってしまっているそうだ。

「あ、どうも奥野です。社長、コンサル料年間契約完了しました。1億は固いですよ。えぇそれに払えなくなったら土地ごと買いあげて商業複合施設への売り渡し予定ですから。売り渡したら多分もう一桁上はいくかと。ありがとうございます、ではまた」




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