34 / 45
第34話 私の全てをあげたって
しおりを挟む
最後に残った男と、オウマ君が激しく揉み合っていた時のことを思い出す。多分、その時持っていた男のナイフが刺さったんだろう。
だけど今は、そんな理由さえもどうでもいいのかもしれない。例え原因がわかったところで、オウマ君から流れ出る血は止められないのだから。
「オウマ君! オウマ君!」
何度も名前を呼び掛けるけど、返事どころか反応一つありはしない。せめて少しでも血を止めようと、上着を脱いで傷口に押し当てるけど、それにも少しずつ、赤いシミは広がっていく。
ピクリとも動かない体に、止まらない血。それは、この後に訪れる最悪の事態を連想させるには十分だった。
「わ、私のせいじゃありませんわ。最初に、ちゃんとオウマ君にはケガをさせるなと言ってましたのに──」
「うるさい、黙ってて!」
エイダさんが何か言ってたけど、まともに聞いている余裕もなかった。なんとかして助けなきゃ。そう思ってはいるけれど、どうすればいいのか分からない。
オウマ君は、たった今私を助けるため、身を呈して戦ってくれた。なのに私は、何もできないでいる。そんな自分の無力さが悔しかった。
だけどその時、ホレスの声がとんだ。
「シアン、生気を送れ!」
「えっ?」
「前にオウマ君が言ってただろ。インキュバスの力があれば、傷を負ってもすぐに回復するって!」
そう言えば、そんなこと言ってたっけ? あいにく私はハッキリとは覚えていなかったけど、インキュバスの力について、ホレスの記憶は疑う余地はない。言われるままにオウマ君の手を掴み、生気を渡そうとする。
生気を吸われた後は、いつも全力で走ったみたいに、ひどく体力を消耗する。でも今は、例え倒れるくらいまで吸われたって、私の全てをあげたって、オウマ君が助かるならそれでいいと思った。
だけど──
「ダメ。何も起きない!」
いくら強く手を握っても、傷口はちっとも塞がらない。と言うより、生気を吸われる感覚そのものが、ちっとも起きてこなかった。
「意識を失っているからダメなのか? なら無理やり起こして──いや、今激しく動かすのは危険か」
ホレスも、これ以上どうすれいいのかわからず、焦りを募らせていく。
生気さえ送ることができたら、助けられるかもしれないのに。だけどそれが叶わない今、結局私は何もできないでいる。そうしている間にも、オウマ君からはなおも血が流れ出る。
瞳に映るその光景が、いつの間にか歪んでいることに気づく。挫けそうになって、目の前の現実を受け入れたくなくて、気がつけば、いつの間にか私の目には涙が溢れていた。
「う……く……」
このまま感情を爆発させ泣き叫ぶくことができたら、ある意味その方が楽かもしれない。だけどだけどそんな気持ちを降りきるように、涙を拭う。
「考えなきゃ。何とかする方法を」
ここで泣いたって、何も解決しやしない。時間を無駄にするだけだ。そんな暇があったら、助ける方法を考えろ。
私にはホレスみたいな知識も機転も無いけれど、それでも必死で探す。どうすればオウマ君を助けられるかを、私の生気をあげられるかを。
今まで見聞きしたこと全てをひっくり返し、記憶を辿る。
そして思い出す。初めてオウマ君へ生気を送る方法を聞いた時、彼やホレスが何と言っていたのかを。手を繋ぐよりも、よりたくさんの生気を渡す方法があったことを。
「これなら、もしかして──」
倒れているオウマ君に、そっと顔を近づけ小さく深呼吸する。
果たしてその方法が、今のこの状況でも効果があるのかは分からない。だけど少しでも可能性があるなら、それに掛けたい。掛けるしかない。
僅かに開いたまま動かなくなった彼の口に、私は自らの唇を重ねた。
だけど今は、そんな理由さえもどうでもいいのかもしれない。例え原因がわかったところで、オウマ君から流れ出る血は止められないのだから。
「オウマ君! オウマ君!」
何度も名前を呼び掛けるけど、返事どころか反応一つありはしない。せめて少しでも血を止めようと、上着を脱いで傷口に押し当てるけど、それにも少しずつ、赤いシミは広がっていく。
ピクリとも動かない体に、止まらない血。それは、この後に訪れる最悪の事態を連想させるには十分だった。
「わ、私のせいじゃありませんわ。最初に、ちゃんとオウマ君にはケガをさせるなと言ってましたのに──」
「うるさい、黙ってて!」
エイダさんが何か言ってたけど、まともに聞いている余裕もなかった。なんとかして助けなきゃ。そう思ってはいるけれど、どうすればいいのか分からない。
オウマ君は、たった今私を助けるため、身を呈して戦ってくれた。なのに私は、何もできないでいる。そんな自分の無力さが悔しかった。
だけどその時、ホレスの声がとんだ。
「シアン、生気を送れ!」
「えっ?」
「前にオウマ君が言ってただろ。インキュバスの力があれば、傷を負ってもすぐに回復するって!」
そう言えば、そんなこと言ってたっけ? あいにく私はハッキリとは覚えていなかったけど、インキュバスの力について、ホレスの記憶は疑う余地はない。言われるままにオウマ君の手を掴み、生気を渡そうとする。
生気を吸われた後は、いつも全力で走ったみたいに、ひどく体力を消耗する。でも今は、例え倒れるくらいまで吸われたって、私の全てをあげたって、オウマ君が助かるならそれでいいと思った。
だけど──
「ダメ。何も起きない!」
いくら強く手を握っても、傷口はちっとも塞がらない。と言うより、生気を吸われる感覚そのものが、ちっとも起きてこなかった。
「意識を失っているからダメなのか? なら無理やり起こして──いや、今激しく動かすのは危険か」
ホレスも、これ以上どうすれいいのかわからず、焦りを募らせていく。
生気さえ送ることができたら、助けられるかもしれないのに。だけどそれが叶わない今、結局私は何もできないでいる。そうしている間にも、オウマ君からはなおも血が流れ出る。
瞳に映るその光景が、いつの間にか歪んでいることに気づく。挫けそうになって、目の前の現実を受け入れたくなくて、気がつけば、いつの間にか私の目には涙が溢れていた。
「う……く……」
このまま感情を爆発させ泣き叫ぶくことができたら、ある意味その方が楽かもしれない。だけどだけどそんな気持ちを降りきるように、涙を拭う。
「考えなきゃ。何とかする方法を」
ここで泣いたって、何も解決しやしない。時間を無駄にするだけだ。そんな暇があったら、助ける方法を考えろ。
私にはホレスみたいな知識も機転も無いけれど、それでも必死で探す。どうすればオウマ君を助けられるかを、私の生気をあげられるかを。
今まで見聞きしたこと全てをひっくり返し、記憶を辿る。
そして思い出す。初めてオウマ君へ生気を送る方法を聞いた時、彼やホレスが何と言っていたのかを。手を繋ぐよりも、よりたくさんの生気を渡す方法があったことを。
「これなら、もしかして──」
倒れているオウマ君に、そっと顔を近づけ小さく深呼吸する。
果たしてその方法が、今のこの状況でも効果があるのかは分からない。だけど少しでも可能性があるなら、それに掛けたい。掛けるしかない。
僅かに開いたまま動かなくなった彼の口に、私は自らの唇を重ねた。
0
あなたにおすすめの小説
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる