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残された者達3
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「ほれ」
「ギィッ!」
ベリィにパイナップルを食べさせながら、マリノフは今後の自分達の行く末について考えていた。
「サリー、俺達はこれからどうしていけばいいんだろうな」
「ギ?」
ベリィの方を見ながら言ったので自分に向かって言ったのだと勘違いしたベリィが首を傾げる。
「さあな。 食糧と弾薬が尽きるまで戦い続ければいいんじゃないのか?」
こうなるはずではなかった。
それはここにいる全員が思っていた事だ。
この星を第二の地球とし、人類を永住させる計画は頓挫し、取り残された人々はいつ襲ってくるか分からないイーターに怯えなければならなくなった。
飢える人々。
死にゆく兵士達。
全滅は時間の問題だった。
「だよな……」
パイナップルを頬張り、心底嬉しそうに笑うベリィを見ながらマリノフは苦笑いの表情を浮かべた。
マリノフが自分もそろそろ寝ようかと立ち上がった時、前から別の兵士がやって来た。
第4中隊の若手の隊員、『ニール』だった。
「隊長、司令官が呼んでいます」
マリノフは短く「そうか」と答えてニールの後を着いていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
司令部の建物に向かう途中、マリノフは基地の飛行場である物を見かけた。
「なんだかやけに騒がしいな。 格納庫にあるのは、UAVか。 何をしているんだ?」
飛行場の格納庫では全ての無人戦闘機が整備されておりまるで近い内に出撃させるような雰囲気を醸し出していた。
しかし、マリノフはこれからイーターにUAVによる総攻撃を仕掛けるなんて作戦は聞いていない。
にしては整備兵はUAVを直ぐにでも飛ばすかのように慌ただしく動いていた。
「さあ? 私にも分かりません」
「……」
マリノフはとりあえずこの疑問を頭の隅に追いやり、司令官の元へと向かった。
コンクリート作りの司令部の建物は数年放置されていた為か壁の所々に苔や蔦が侵食している。
本来ならば厳重なセキュリティシステムで防護されている筈のこの建物は節電で動かないようにされていた。
いまこの基地で稼働しているのは全ての防空システムと最低限の電気くらいだ。
警備の兵士に顔パスで通してもらい、2人が向かった先は司令官のいる司令室。
ノックもせずに扉を開け、中に入ると司令官の『フランクリン』と何人かの男がいた。
司令室には全ての部隊の指揮官が集められていたのだ。
「これで全員集まったか?」
フランクリンが集まった指揮官達の顔を見渡し、再び前に向き直る。
今ここにいる戦える部隊は4個中隊しかいない。
マリノフの第4中隊でも数名のパイロットが前回の戦いで死亡した。
ここに来た当時と比べて、戦力は3分の1にまで弱体化していた。
エグゾスーツの予備パーツだって残りが少なくなってきている。
いつ共食い整備を始めてもおかしくないレベルの危機に陥っていた。
「さて、前回のシティ32奪還作戦はご苦労だった。 部下を多く失った者もいるだろう。 しかし、彼らの死は決して無駄ではないことを、覚えておいてくれ」
悲しげにそう言いフランクリンは部屋の壁にある大型モニターの電源を入れた。
「しかし、悲しんでばかり入れないのも現状だ。 これを見てくれ」
大型モニターに表示されたのはグラフだった。
何かの観測データのようだ。
そのグラフを棒で指しながら、フランクリンは説明を始める。
「これらは、この基地周辺の地面で観測された振動データだ」
モニターには日にち毎に観測された振動のデータが幾つも並べられている。
その中で、特に変化が著しかったのは2日前のデータだった。
「見て分かると思うが、2日前に基地から56km先の地下で無人探査機が最も大きい振動を捉えた──」
「これが意味する事、歴戦の猛者である貴官らなら分かるだろう」
振動が感知される時。
それはだいたい敵が襲ってくる時だ。
そして2日前のデータはいつも襲ってくる時のデータの5倍以上は数値が跳ね上がっていた。
つまりイーターの数も同じく5倍で来るという事だ。
とてもこの基地の戦力で抑え切れる物量ではない。
指揮官達は元よりその意味を知っているが故に皆焦りと恐怖の表情を浮かべてざわめきだした。
「ここに俺たちを呼んだのはまさか……奴らと戦って餌になってこいって事か?」
ざわめきの中、フランクリンに震える声で問うたのはマリノフの隣にいた第3中隊隊長のジャクソンだった。
問に対してフランクリンは僅かに口篭りながらも口を開いた。
「違う……と言えればどれ程良かったか……」
「っ!」
ざわめきが止んだ。
彼らの表情が不安から絶望へと変わった。
「……今から作戦概要を説明する」
フランクリンが制帽を深く被り直し鍔によって目元が影で覆い隠される。
「明日の午前04:00、我々は避難民を乗せたHLVをラディア978の衛星軌道上へ打ち上げる」
その一言に、再び彼らは動揺する。
「HLV……もう修復が完了していたのか……?」
「避難民ってぇ……じゃあ俺らはどうなるんだ……!?」
「この化け物だらけの惑星に取り残されるって事かよ……!!」
「落ち着けと言うのは無理がある事は分かっている! とにかく、今は私の話を聞いてくれ!」
僅かに声を荒らげてフランクリンが全員を諌めた。
「貴官らにはフライトユニットを装備したエグゾスーツで出撃し、HLVが成層圏を離脱するまでの間全ての脅威からHLVを死守してもらいたいのだ」
確かに、HLV単体で脱出しようにも空にも大小様々な飛行型のイーターも存在する。
戦闘機や攻撃ヘリも多くがそれらによって落とされた。
唯一対抗出来たのは簡単な三次元機動が可能であるフライトユニット搭載型のエグゾスーツだけだった。
とはいえ、フランクリンが告げた任務はあまりにも無謀だった。
まずエグゾスーツの数が4個中隊合わせても123機しか稼動機体が無い。
敵の飛行型は一度に数百匹という数で襲い来るのだ。
その5倍の量を相手にして成層圏脱出までに何機が生き残れるかも分からない。
問題はそれだけじゃない。
地上戦ならば弾薬さえ持てばアクチュエータのエネルギーは小型核融合炉で長時間は戦えるがフライトユニットは違う。
あれは重い機体を持ち上げる為にただでさえ小型で出力の低いジェットエンジンを無理矢理全力で飛ばしている。
それ故にフライトユニットはとんでもない大飯食らいなのだ。
増槽である程度は持ち堪えるだろうが、そもそも高高度での使用を前提としていないフライトユニットは高高度性能が低い。
最悪の場合、HLVは守る事が出来ても燃料切れで地面に真っ逆さまも有り得る。
即ち、この作戦の時点で彼らの生存は最早考慮されていなかった。
「……ふざけんなよ」
ジャクソンはフランクリンを凄まじい形相で睨み付けた。
「お前からすれば民間人の命が第一なんだろうがな、俺だって部下の命背負ってんだ!!」
納得なんて出来るはずも無かった。
ジャクソンやマリノフ達は、避難民達が逃げ切る為の囮、生贄とされるのだから。
大気圏外へと飛び立っていくHLVを見上げながらイーターに食い殺されるなんて誰でも御免だ。
彼らは、命を賭して報国を成す程の大層な忠誠心など持ち合わせていない。
「ギィッ!」
ベリィにパイナップルを食べさせながら、マリノフは今後の自分達の行く末について考えていた。
「サリー、俺達はこれからどうしていけばいいんだろうな」
「ギ?」
ベリィの方を見ながら言ったので自分に向かって言ったのだと勘違いしたベリィが首を傾げる。
「さあな。 食糧と弾薬が尽きるまで戦い続ければいいんじゃないのか?」
こうなるはずではなかった。
それはここにいる全員が思っていた事だ。
この星を第二の地球とし、人類を永住させる計画は頓挫し、取り残された人々はいつ襲ってくるか分からないイーターに怯えなければならなくなった。
飢える人々。
死にゆく兵士達。
全滅は時間の問題だった。
「だよな……」
パイナップルを頬張り、心底嬉しそうに笑うベリィを見ながらマリノフは苦笑いの表情を浮かべた。
マリノフが自分もそろそろ寝ようかと立ち上がった時、前から別の兵士がやって来た。
第4中隊の若手の隊員、『ニール』だった。
「隊長、司令官が呼んでいます」
マリノフは短く「そうか」と答えてニールの後を着いていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
司令部の建物に向かう途中、マリノフは基地の飛行場である物を見かけた。
「なんだかやけに騒がしいな。 格納庫にあるのは、UAVか。 何をしているんだ?」
飛行場の格納庫では全ての無人戦闘機が整備されておりまるで近い内に出撃させるような雰囲気を醸し出していた。
しかし、マリノフはこれからイーターにUAVによる総攻撃を仕掛けるなんて作戦は聞いていない。
にしては整備兵はUAVを直ぐにでも飛ばすかのように慌ただしく動いていた。
「さあ? 私にも分かりません」
「……」
マリノフはとりあえずこの疑問を頭の隅に追いやり、司令官の元へと向かった。
コンクリート作りの司令部の建物は数年放置されていた為か壁の所々に苔や蔦が侵食している。
本来ならば厳重なセキュリティシステムで防護されている筈のこの建物は節電で動かないようにされていた。
いまこの基地で稼働しているのは全ての防空システムと最低限の電気くらいだ。
警備の兵士に顔パスで通してもらい、2人が向かった先は司令官のいる司令室。
ノックもせずに扉を開け、中に入ると司令官の『フランクリン』と何人かの男がいた。
司令室には全ての部隊の指揮官が集められていたのだ。
「これで全員集まったか?」
フランクリンが集まった指揮官達の顔を見渡し、再び前に向き直る。
今ここにいる戦える部隊は4個中隊しかいない。
マリノフの第4中隊でも数名のパイロットが前回の戦いで死亡した。
ここに来た当時と比べて、戦力は3分の1にまで弱体化していた。
エグゾスーツの予備パーツだって残りが少なくなってきている。
いつ共食い整備を始めてもおかしくないレベルの危機に陥っていた。
「さて、前回のシティ32奪還作戦はご苦労だった。 部下を多く失った者もいるだろう。 しかし、彼らの死は決して無駄ではないことを、覚えておいてくれ」
悲しげにそう言いフランクリンは部屋の壁にある大型モニターの電源を入れた。
「しかし、悲しんでばかり入れないのも現状だ。 これを見てくれ」
大型モニターに表示されたのはグラフだった。
何かの観測データのようだ。
そのグラフを棒で指しながら、フランクリンは説明を始める。
「これらは、この基地周辺の地面で観測された振動データだ」
モニターには日にち毎に観測された振動のデータが幾つも並べられている。
その中で、特に変化が著しかったのは2日前のデータだった。
「見て分かると思うが、2日前に基地から56km先の地下で無人探査機が最も大きい振動を捉えた──」
「これが意味する事、歴戦の猛者である貴官らなら分かるだろう」
振動が感知される時。
それはだいたい敵が襲ってくる時だ。
そして2日前のデータはいつも襲ってくる時のデータの5倍以上は数値が跳ね上がっていた。
つまりイーターの数も同じく5倍で来るという事だ。
とてもこの基地の戦力で抑え切れる物量ではない。
指揮官達は元よりその意味を知っているが故に皆焦りと恐怖の表情を浮かべてざわめきだした。
「ここに俺たちを呼んだのはまさか……奴らと戦って餌になってこいって事か?」
ざわめきの中、フランクリンに震える声で問うたのはマリノフの隣にいた第3中隊隊長のジャクソンだった。
問に対してフランクリンは僅かに口篭りながらも口を開いた。
「違う……と言えればどれ程良かったか……」
「っ!」
ざわめきが止んだ。
彼らの表情が不安から絶望へと変わった。
「……今から作戦概要を説明する」
フランクリンが制帽を深く被り直し鍔によって目元が影で覆い隠される。
「明日の午前04:00、我々は避難民を乗せたHLVをラディア978の衛星軌道上へ打ち上げる」
その一言に、再び彼らは動揺する。
「HLV……もう修復が完了していたのか……?」
「避難民ってぇ……じゃあ俺らはどうなるんだ……!?」
「この化け物だらけの惑星に取り残されるって事かよ……!!」
「落ち着けと言うのは無理がある事は分かっている! とにかく、今は私の話を聞いてくれ!」
僅かに声を荒らげてフランクリンが全員を諌めた。
「貴官らにはフライトユニットを装備したエグゾスーツで出撃し、HLVが成層圏を離脱するまでの間全ての脅威からHLVを死守してもらいたいのだ」
確かに、HLV単体で脱出しようにも空にも大小様々な飛行型のイーターも存在する。
戦闘機や攻撃ヘリも多くがそれらによって落とされた。
唯一対抗出来たのは簡単な三次元機動が可能であるフライトユニット搭載型のエグゾスーツだけだった。
とはいえ、フランクリンが告げた任務はあまりにも無謀だった。
まずエグゾスーツの数が4個中隊合わせても123機しか稼動機体が無い。
敵の飛行型は一度に数百匹という数で襲い来るのだ。
その5倍の量を相手にして成層圏脱出までに何機が生き残れるかも分からない。
問題はそれだけじゃない。
地上戦ならば弾薬さえ持てばアクチュエータのエネルギーは小型核融合炉で長時間は戦えるがフライトユニットは違う。
あれは重い機体を持ち上げる為にただでさえ小型で出力の低いジェットエンジンを無理矢理全力で飛ばしている。
それ故にフライトユニットはとんでもない大飯食らいなのだ。
増槽である程度は持ち堪えるだろうが、そもそも高高度での使用を前提としていないフライトユニットは高高度性能が低い。
最悪の場合、HLVは守る事が出来ても燃料切れで地面に真っ逆さまも有り得る。
即ち、この作戦の時点で彼らの生存は最早考慮されていなかった。
「……ふざけんなよ」
ジャクソンはフランクリンを凄まじい形相で睨み付けた。
「お前からすれば民間人の命が第一なんだろうがな、俺だって部下の命背負ってんだ!!」
納得なんて出来るはずも無かった。
ジャクソンやマリノフ達は、避難民達が逃げ切る為の囮、生贄とされるのだから。
大気圏外へと飛び立っていくHLVを見上げながらイーターに食い殺されるなんて誰でも御免だ。
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