5 / 64
推しから下僕へ
豹変
しおりを挟む横たわる体に重なりかけていたシルエットが、ガバッと跳ね起きる。
彼は最初に枕元の人物――朝倉が起きていないか確認し、続いて他の三人にも変わりがないことを確認したようだった。
最後に、出方をうかがうような鋭い眼差しが、こちらに向けられる。
お互いに微動だにせず、30秒ほど見つめ合っていただろうか。先に動いたのは川嶋だった。固まっていた身体がゆらりと立ち上がり、布団を回り込んでこちらに近づいてくる。
その頃には俺も、自分のしたことを後悔していた。けれど、無言でスマホを取り上げられそうになり、咄嗟にその手を引っ込めていた。うつぶせになって、スマホを持った手を胸元に隠す。
誰にも知られてはならない秘め事を写真に撮られ、慌てて消そうとする気持ちはわかる。でも、せめて言い訳の一つくらいあってもいいんじゃないかと思う。
スマホを奪うことを諦めたようで、今度はシャツの首根っこを引っ張られ、無理やり体を起こされた。
「来い」
耳元で囁かれたのは、彼から聞いたこともない、怒気の混じる声だった。
腕を引っ張られ、俺は足をもつれさせながら立ち上がり、そのまま引きずられるようにして歩き出した。
スリッパを履くことも許されず、二人して裸足で部屋の外に出る。廊下に人の姿はなかった。
「先生に見つかったら、反省文だぞ」
そこで彼はようやく、定期的に見回りの教師が巡回していることを思い出したらしい。辺りを見回し、廊下からは死角となる自販機コーナーへと俺を引っ張っていく。
自販機の陰に押し込まれ、壁に手をついて逃げ道を塞がれる。いわゆる「壁ドン」ってやつだが、当然、少女漫画みたいな甘い雰囲気は微塵もない。
「スマホ出せ」
押し殺した低い声と、10cmの身長差から睨み下ろしてくる険しい眼差しは、まるで別人を見ているようだった。
川嶋があんなことをした理由は容易に想像できる。
俺と同じだろう。
好きな相手が同性で、この思いが叶うことはないと諦めるかわりに、自分だけの特別が欲しくなった。
咎める資格は俺にはない。
隠し撮りされた彼が怒るのもわかる。
でも、あからさまに上からな物言いで命令されれば、素直に従う気になれなかった。
それに、画像を消される前に、確認しておきたいこともある。
「川嶋。お前……、他校に彼女がいたんじゃないのか?」
睨み下ろす顔が、更に忌々しそうに顰められる。
「嘘だよ。わかんだろ? フリーって知られたら、何で女子の告白断るのか理由を聞かれて面倒だから」
「本当は……、男が好き、だったのか……?」
251
あなたにおすすめの小説
ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!
はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。
********
癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー!
※ちょっとイチャつきます。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる