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約束
真相
しおりを挟む「――へ?」
一瞬、質問の意味がわからなかった。
直前の自分の発言を思い返し、「お前はまだ、失恋が決まったわけじゃない」の「お前は」のことだと理解した。確かにそんな言い方をすれば、「お前」意外の誰かが失恋したと深読みできないことはない。
「中学の頃から好きな人がいると、修学旅行のときに言ってただろ」
答える前に、言葉を畳みかけられる。
「あ……。ま、まぁ。ってか、よく覚えてたな?」
修学旅行の就寝前、恋バナの順番が回ってきたとき、それらしいことを言った気がする。
川嶋と初めて出会ったのは中学生の頃だ。そのときはまだ、はっきりと恋愛感情を自覚したわけではなかったが、「中学の頃に出会って、高校で同じクラスになってから好きになった」と説明したら、さすがに川嶋だとバレそうな気がした。それで、「中学の頃からずっと好きな人がいる」ってことにしておいた。
「もしかして、さっきの彼女か?」
「堀? いや、彼女は全然そんなんじゃないよ。彼氏持ちだし」
「失恋したってことは、告白してふられたのか? そいつのことは、もう諦められたのか?」
なんだよ。なんかやけに食いついてくるな。
「絶対ない」相手なんだから、そんな奴の失恋話なんかほっとけよ。
あのときの恨みは完全には晴れておらず、つい心の中で毒づいてしまう。
俺が色々聞いたから、訊き返すのが礼儀だと気を使っているのかもしれない。
「告白はしてないけど、望みがないってことは確実だから」
同じ高校で、たまに川嶋の姿を目にしている間は、諦められそうにない。
大学に入って全く会わなくなったら、そのうち好きな気持ちも薄れていくだろうと思った。
「望みがないって、相手に彼氏がいたのか?」
「えっと……、彼氏がいるかどうかはわからないけど、向こうはすごいモテる人で、俺からしたら高嶺の花な感じで……。俺も今は恋愛する余裕ないから、とりあえず大学入るまでは、そういうのはいいやって感じ。……つーか、俺の話はいいだろ! お前のほうはせっかく夏休みに一緒に旅行にも行くんだから、諦めずにもう少し粘ってみろよ。俺も協力できることはなるべく協力するからさ」
適当に誤魔化し、無理やり川嶋の話に戻したが、喋った後で失言に気づき、後悔した。別荘の話を蒸し返せば、また気を使わせることになるのに。
案の定、川嶋は少し気まずそうに、視線を逸らせた。
「別荘の件は……、わざとお前だけ誘わなかったわけじゃない。修学旅行の自由行動のときに、朝倉が夏休みに旅行に行こうと言い出して……。課外の合間だとちょうどお盆シーズンだから、飛行機もホテルも高いだろ。だから、あまり金のかからないところでと言われて、深く考えずに軽井沢に別荘がある話をしてしまったんだ。そのあと、その件はずっと忘れていたから、お前に話しそびれていた」
話を聞いたときは自分だけ誘われていなかったことにショックを受けたけど、時間が経つにつれ、そういうことかもと思うようになっていた。俺を本気でハブりたかったのなら、別荘の件は朝倉たちに口止めしていただろうから。
でも、実際に川嶋の口からそれを聞いて初めて、胸につかえていた苦いものが、すーっと流されていく感覚がした。
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