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SOS
もしかして
しおりを挟む「渡辺君、今、ちょっとだけ話してもいい?」
100円ショップに入る前に朝倉から潜めた声をかけられ、グループの輪から離れ人のいない階段の踊り場へと連れて行かれた。
「あのさ……。単刀直入に聞くけど……。渡辺君って、昴陽とつきあってるとかじゃないよね?」
――――っ…………⁉
予想外の言葉に目を見開き、ぱちぱちと瞬きをする。
「な……なんで、そんなこと訊くの⁉」
「渡辺君って昼休みとか放課後、昴陽に勉強教えてもらってるんでしょ? 昴陽の家に泊ったこともあるって……。それでさっき、ちょっとカマをかけてみたんだ。昴陽が寝ぼけて彼女と間違えて、僕を抱き枕にしたんじゃないかって話したら、渡辺君、すぐに写真から目を逸らしてたから」
「い、いや、さっきのは……、二人が本当にカップルみたいに見えたから、目のやり場に困っただけで……」
答えに詰まれば、俺の川嶋への気持ちに気づかれてしまうかもしれない。
考えるより先に脳が条件反射的に当たり障りのない言葉を選んでいく。
「そ、それに、川嶋が俺に勉強を教えてくれているのも、俺がバイトが忙しくて授業についていけないから、委員長の責任感で気にかけてくれてるだけだよ。つき合ってるとか、絶対にない!」
最後は力強くそう断言すると、朝倉がホッとした顔をした。その表情に、嫌な予感が胸を掠める。
「じゃあさ、昴陽に彼女がいる話は本当かどうか知ってる?」
「お……俺にもわからないけど……。どうしてそんなふうに思うの?」
思わず視線を泳がせてしまった。
川嶋には彼女はいない。でも、それを尋ねる理由を察せられて、本当のことを言えなかった。
言えない自分を嫌だなと思う。川嶋は、あれほどに俺を助けてくれたというのに。
顔が強張るのが自分でもわかる。心臓の音が耳にまで響き、背筋を冷たい汗が伝う。
「昴陽、旅行中、一度も彼女に電話してなかった。彼女からの連絡もなかったし。みんなから離れて電話しに行ったと思ったら、相手は渡辺君っぽかった」
嫉妬を隠さない棘のある声に、優越感に浸るよりも、一つの可能性に向かって気分はどんどん下降していく。
「それは……俺が旅行に参加できなかったことを気にしてくれていたからで……」
旅行に行っている間も、川嶋は俺のバイトが終わる時間に合わせて毎日連絡をくれていた。
ちゃんとご飯食べてるかとか、変な客は来なかったかとか、そんな普段のメッセージアプリでのやりとりと変わらない他愛ない会話だった。
そんなふうに世話を焼かれると特別扱いされているように錯覚してしまうけど、きっと逆だ。絶対に恋愛感情を持たない相手だから、誤解されるようなこともできる。朝倉に対しては、川嶋は自身の気持ちをひた隠しにしていた。
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