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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
黒猫の探し物 13
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黒く細い脚はコンクリを蹴って大きな顎を広げる。
青年は私から手を放して、身を翻すと白い刀身を大きく振り被った。化け物の肩から脇腹まで白い一線が引かれる。
純白な一線は赤い血を化け物から流したけど、重傷とまではいかなかった。
化け物は1、2歩退いて自身に受けた傷に耐えながら喉を鳴らす。金切り声の不気味な鳴き声だった。
私たちに敵意を剥き出しにするも敵わない相手だと見切ったみたいで、私たちに背を向けて逃げ出す。
青年は逃げる背を追いかけようとするも、私の手がそれを止めた。
無意識に伸びた手は青年の手首を捕まえる。軽く振り払えれば放せる程、弱々しいもので青年がそれをしなかったのは私の手が震えていたからだった。
信じられない事実だけど、黒猫のケイは言葉を発して、人間にも姿を変えられた。
パンクしてしまった私の頭はなんとかその事実を受け止めて自宅のドアを開けた。
「清音!よかったわ!」
びしょ濡れになった私と腕の中に収まる黒猫が帰ってきて、お母さんとお父さんは安堵の声を漏らす。
「今、警察に電話しようとしたんだぞ。危ないだろ」
少し大袈裟な気もするけど、2人の顔を見ていると本気で心配させてしまったようだった。
「ごめんなさい」
「猫が心配なのもわかるが次からは考えて行動しなさい」
「わかったならお風呂に入りなさい。びしょ濡れじゃない」
私は頷いて抱えていたケイをお母さんに託す。
「ケイをお願いね」
「名前を決めたのね」
「うん、そう。ケイって名前にした」
目を泳がせながら答える。まさか、猫本人がそう名乗りましたとは言えなかった。
「可愛い名前ね。ケイちゃんもびしょ濡れね。体を拭きましょうね」
お母さんはケイを雌だと勘違いしているようだった。その修正は後回しにして私は一つの疑問を投げる。
「ねぇ、お母さん。ケイの顔なんだけど」
そこで言葉が詰まる。ケイは猫の姿で大人しくお母さんの腕の中にいる。でも、小さな丸い顔には奇妙な仮面がつけられている。
そのことに関してなんて説明したらいい?
お母さんはケイの顔を怪訝に眺める。
「顔に何かついてる?」
「普通の、猫の顔?」
「そうよ」
なぜそんなことを聞くのか。お母さんには不思議にしか思えない。
「なら、いいの」
どういうわけか2人には仮面が見えていなかった。
何かが起きようとしている。違う、かな。すでに起きている。あの遺体がニュースになる前から。
シャワーを浴びながらその何かについて考えてみてもその何かは掴めない。
なんでこんなことになったの?怪我をした猫を拾ったから?奇妙な仮面を指摘したから?安斉先生の遺体を見つけたから?
項垂れてぬるま湯のシャワーを頭から浴びる。ただ頭だけを濡らす行為に数十分もかけている。
無駄に流れたお湯は透明な川になって排水口に流れていく。
この流れに似たものをついさっき見た。安斉先生の血の流れ。生きていた赤が雨水と混ざってコンクリの上を滑り、私の足元に辿り着く。風に乗った生臭ささが鼻を掠める。
実際には血の流れも臭いも私には届かなかった。でも、目に焼き付いた映像はなかったものをあるように錯覚させて現実感を帯び、幻は胃袋に収まっていた夕食を逆流させる。
湧き上がった衝動に従う私はお風呂の片隅で胃液とご飯が合わさった流動物を吐く。透明だった川は黄色系の汚水と合流して排水口に流れる。
お風呂場に漂う生臭さや舌に残る酸味も流れてくれればいいのに。これらはしつこく私の五感にこびりついて吐き気を強くさせた。
青年は私から手を放して、身を翻すと白い刀身を大きく振り被った。化け物の肩から脇腹まで白い一線が引かれる。
純白な一線は赤い血を化け物から流したけど、重傷とまではいかなかった。
化け物は1、2歩退いて自身に受けた傷に耐えながら喉を鳴らす。金切り声の不気味な鳴き声だった。
私たちに敵意を剥き出しにするも敵わない相手だと見切ったみたいで、私たちに背を向けて逃げ出す。
青年は逃げる背を追いかけようとするも、私の手がそれを止めた。
無意識に伸びた手は青年の手首を捕まえる。軽く振り払えれば放せる程、弱々しいもので青年がそれをしなかったのは私の手が震えていたからだった。
信じられない事実だけど、黒猫のケイは言葉を発して、人間にも姿を変えられた。
パンクしてしまった私の頭はなんとかその事実を受け止めて自宅のドアを開けた。
「清音!よかったわ!」
びしょ濡れになった私と腕の中に収まる黒猫が帰ってきて、お母さんとお父さんは安堵の声を漏らす。
「今、警察に電話しようとしたんだぞ。危ないだろ」
少し大袈裟な気もするけど、2人の顔を見ていると本気で心配させてしまったようだった。
「ごめんなさい」
「猫が心配なのもわかるが次からは考えて行動しなさい」
「わかったならお風呂に入りなさい。びしょ濡れじゃない」
私は頷いて抱えていたケイをお母さんに託す。
「ケイをお願いね」
「名前を決めたのね」
「うん、そう。ケイって名前にした」
目を泳がせながら答える。まさか、猫本人がそう名乗りましたとは言えなかった。
「可愛い名前ね。ケイちゃんもびしょ濡れね。体を拭きましょうね」
お母さんはケイを雌だと勘違いしているようだった。その修正は後回しにして私は一つの疑問を投げる。
「ねぇ、お母さん。ケイの顔なんだけど」
そこで言葉が詰まる。ケイは猫の姿で大人しくお母さんの腕の中にいる。でも、小さな丸い顔には奇妙な仮面がつけられている。
そのことに関してなんて説明したらいい?
お母さんはケイの顔を怪訝に眺める。
「顔に何かついてる?」
「普通の、猫の顔?」
「そうよ」
なぜそんなことを聞くのか。お母さんには不思議にしか思えない。
「なら、いいの」
どういうわけか2人には仮面が見えていなかった。
何かが起きようとしている。違う、かな。すでに起きている。あの遺体がニュースになる前から。
シャワーを浴びながらその何かについて考えてみてもその何かは掴めない。
なんでこんなことになったの?怪我をした猫を拾ったから?奇妙な仮面を指摘したから?安斉先生の遺体を見つけたから?
項垂れてぬるま湯のシャワーを頭から浴びる。ただ頭だけを濡らす行為に数十分もかけている。
無駄に流れたお湯は透明な川になって排水口に流れていく。
この流れに似たものをついさっき見た。安斉先生の血の流れ。生きていた赤が雨水と混ざってコンクリの上を滑り、私の足元に辿り着く。風に乗った生臭ささが鼻を掠める。
実際には血の流れも臭いも私には届かなかった。でも、目に焼き付いた映像はなかったものをあるように錯覚させて現実感を帯び、幻は胃袋に収まっていた夕食を逆流させる。
湧き上がった衝動に従う私はお風呂の片隅で胃液とご飯が合わさった流動物を吐く。透明だった川は黄色系の汚水と合流して排水口に流れる。
お風呂場に漂う生臭さや舌に残る酸味も流れてくれればいいのに。これらはしつこく私の五感にこびりついて吐き気を強くさせた。
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