糸と蜘蛛

犬若丸

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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者

蜘蛛の脚 2

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   そうした光弥の平然とした態度に堪忍の緒が切れた。
   怒りのままに白糸は動く。糸は光弥の脚と手を床に結びつけて跪く。床と手足をがっちりと結ばれ、光弥の身動きを封じられる。光弥の頬に冷や汗が伝う
   「言うよ。言うから。えっと何だっけ」
   「蝶男!」
   切迫して焦ったのだろう。身動きができないという状況が彼を追い詰めていた。
   あたしは問い詰める。
   「マンションで知らないって言ったわね。あれは嘘ね。いつから会っていたの?」   
   「む、向こうから来たんだよ」
   許しを乞うようにあたしを見上げ、情けなく話し始める。
  「瑠璃のマンションに出た後に取引しようって。別に親父を裏切ったわけじゃないんだ。ただ、情報が欲しくて。蝶男は俺の道具を貸りたいのとカンダタを捕まえて欲しいって。舞台で使うから必要なんだと話していたんだ」
   「舞台はこの鬼ごっこのことね」 
   「そう」
   「今夜のことを知っていたのね」
   「貸した道具というのは?」
   それを聞いたのはケイだった。気を失っていたケイは目を覚まし、清音の腕の中で質問してきた。
   「プラネタリウムだ。そう呼んでる。地獄ほどの規模はないけれど似たような世界を作れる。違うのは現世で作った世界を映せるんだ」
   「どういうこと?」
   疑問を抱いたのは地獄を経験していない清音。
   「白昼夢だと思えばいい。作った映像がプラネタリウムによって映し出される。俺たちはその映像を現実だと思い込むんだ」
   「じゃあ、死人はいないのね。だって夢なら死にようがないもの」
   夢と言うワードに希望を持ち、清音は声を弾ませた。
   「残念ながら、プラネタリウムは映像を現実だと思い込ませる。俺が事実を話しても廊下の植物は生えているし、窓も開けられない。夢で死んだ奴は死んだままだ」
   その事実を確認する為、清音は窓に駆け寄るも留め具は固く、ガラスも割れない。
   「ほら、何効果だっけ。ブラ、ノー」
   ノーシーボ効果ね。光弥が出したい答えを私は持っていたけれど、口に出す義理はなかった。
   「なんで!それを貸してしまったの!」
   光弥が仕掛け人でなくても舞台装置を自らの意思で差し出した。清音は憤り怒鳴る。
   立たされてしまった舞台に演出として散った命。この理不尽を「悪かった」の一言で許せるはずもなく心優しい彼女でも内から来るそれを抑えられなかった。
   「知らなかったんだ。何に使うのかも聞いていなかったし」
   「人が!死んだのよ!」
   「こいつらの価値観はあたしたちは違うわよ。世論説いてもわかりはしないわ」
   「そう!そうなんだ!悪いことだなんて知らなかったんだ。まさか魂が身体から離れたぐらいでここまで怒るなんて」
   弁護したつもりはなかった。なのに、光弥は縋るように同意して、媚び売るように何度も頷く。
   指1本動かせず、あたしに媚び売る様がなんとも惨めで、そんなもので許されると思われたのが腹立たしい。
    あたしは白い刀を下に向けると鋭い切っ尖を光弥の手に突き刺す。
   痛みに耐える短い声が漏れ、後ろからも清音の息を飲む小さな悲鳴が重なった。
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