糸と蜘蛛

犬若丸

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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者

蜘蛛の脚 18

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   「黒蝶について知っていることを説明してもらうわよ。カンダタに寄生する虫のせいであたしは2度も襲われたもの。清音は化け物って呼んでいたわよ」
   椅子に座った瑠璃が茶色い液体を口に含み、笑
みが綻ぶ。
   「それ、飲み物なの?」
   信じられない、と光弥が言う。瑠璃は「ホットチョコよ」とだけ答える。
   針で何度も刺すような痛みを覚え、うなじをさする。骨の奥を何度も刺されているようだった。
   「あれは、多分、俺が死ぬ前に入れられたものだ」
   瑠璃はそれ以上の説明を待っていたが、カンダタは口を開いかない。
   「それだけ?」
   「俺だって、あれのことは知らない。生前に卵埋められて死んだ後も寄生して成長した。それだけだ」
   「埋められたってどういう風に?」
    無神経な光弥が好奇心に満ちた笑みで聞いてくる。
   「言いたくない。言っても有益な情報はない。それにやり方ならあんたらがよく知ってるんじゃないのか」
   「機嫌悪いな」
   荒く、ぶっきらぼうに答えたので光弥はふてくされる。
   「カンダタも知らないわけね。光弥の話ではカンダタは働き蟻みたいよ」
   「それは、胸くそ悪い話だ」
   うなじの痛みが強く脈を打ち、顔を顰めた。
   「声がした」
   深呼吸して、脈を打つ痛みも気分の悪い胸も落ち着かせてゆっくりと話す。
   「あいつの声だ。それだけで感情抑えられなくなって、あの男に対する憎悪しかなかった」
   「その声はなんて言ってたの?」
   「途切れていたが、はっきりと聞こえたのは皆殺しにしろと」
   「今は?」
   「全く、うなじが少し痛むくらい」
   ホットチョコをスプーンでかき混ぜて掬うと口に運ぶ。瑠璃はものを食べている時だけ幸せそうだ。
  「桜尾  すみれって奴まだ終わってないって言ってたね」
   光弥が切り出す。
   「多分、明日の夜よ。日付が変わったから今日の夜ね。それまではゆっくりすごせそう」
   「なんで?」
   「明日は休校になるわよ。40人近くの生徒がひと晩で消えたんだから。もしかしたら死体の山が生徒玄関の前に山積みになってるかも」
   この事件で瑠璃がどんな経験をしたのかカンダタにはわからない。しかし、人が死に彼女の左腕は動かず、包帯が巻かれている。それらが物語っているようで至福にホットチョコを飲む彼女の精神に感服する。
   「自ら危険に飛び込むつもりか?」
   「あたしにまだ終わってないと告げたのは学校で待ってるというメッセージだと思うの。それだったら会いに行くべきでしょ。調べ物もしたいしね」
   そう言いながら1冊の手帳テーブルの上に置く。そこには顔写真と佐矢  蛍と書かれた名前があった。
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