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3章 死神が誘う遊園地
カンダタ、生前 14
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人喰い塀から逃げるように走り、人気のない裏地でやっと足を休ませた。
俺が訪れたことを悟られない様に気を配り、赤い珠玉を投げたつもりだった。まさか、石が落ちる所に彼女がいたとは思わなかった。
紅柘榴の可愛らしい悲鳴に思わず、謝罪の言葉を返してしまった。
逃げる背に向かって紅柘榴の声が聞こえたが、聞かないように走って逃げた。
俺が綴った文が無駄になってしまいそうで、思慕や覚悟といったものが空回ってしまいそうで、羞恥で指の先から耳の先まで燃えてしまいそうだった。
呼吸を整えても、心臓は爆ぜてしまいそうな程に鼓動は強く跳ね上がる。
文というものを初めて書いた。長考して、頭を捻り、少ない知恵で綴った文だ。思い返してみればみるほどに幼稚な文のような気がする。あれを読んだら紅柘榴は低俗さに幻滅するかもしれない。
あの文は赤い珠玉と共に紅柘榴の手に渡ったのだ。今更返してくださいとは言えない。
赤い珠玉を紅柘榴に返し、「盗みに行くので隠すように」と綴った。盗人にしては間抜けな一文だ。
あの一文を書いたのは紅柘榴に選ばせようと考えたからだ。
今夜、赤い珠玉を盗むのを言い訳にして紅柘榴に会いに行く。その時、彼女が珠玉を隠したのなら、これからも会いたいということになる。珠玉を隠さず俺に渡したのなら、もう会いたくないと言える。確信させる為に「幾度も参る」と付け足したのだ。
紅柘榴はどちらを選ぶのだろうか。太陽はまだ沈まず、月はまだ輝かない。
爆ぜてしまいそうな胸を抑えて、月夜の時を待つ。
昨夜に続き、今夜も月が人喰い塀と枯れた梅の木を照らす。今夜は昨晩よりも気温が高く、丸い月も夜道を見やすく照らす。いっそのこと雨でも降ってしまえば、こんな重荷を胸に抱かずに済んだ。
それもどうななったかわからない。雨でも雪でも結局は紅柘榴を求めて来ていたかもしれない。
俺はひとつ、深くて長い呼吸を吐くと梅の木を登る。今、一番に描がいている未来は紅柘榴が縁側の庭で待ち、俺に罵声雑言を浴びせながら赤い珠玉を投げつけるというものだ。
先を想像する際は常に最悪な状態を考えるようにしている。明るい未来の想像は脆く、砕ける。破片に傷をつけられるくらいなら、なるべく期待せず傷を負わない想像をするべきだ。
幹を登り、太い枝に足をかける。紅柘榴は多様の花々が咲く庭に立っていた。足が震え、踏み外してしまいそうになる。
身体の均衡を保ち、塀の瓦屋根に跳び移ると慣れた足つきで彼女の庭に着地する。
脚は震えていたが、転んで醜態を晒す真似はしなかった。
俺が訪れたことを悟られない様に気を配り、赤い珠玉を投げたつもりだった。まさか、石が落ちる所に彼女がいたとは思わなかった。
紅柘榴の可愛らしい悲鳴に思わず、謝罪の言葉を返してしまった。
逃げる背に向かって紅柘榴の声が聞こえたが、聞かないように走って逃げた。
俺が綴った文が無駄になってしまいそうで、思慕や覚悟といったものが空回ってしまいそうで、羞恥で指の先から耳の先まで燃えてしまいそうだった。
呼吸を整えても、心臓は爆ぜてしまいそうな程に鼓動は強く跳ね上がる。
文というものを初めて書いた。長考して、頭を捻り、少ない知恵で綴った文だ。思い返してみればみるほどに幼稚な文のような気がする。あれを読んだら紅柘榴は低俗さに幻滅するかもしれない。
あの文は赤い珠玉と共に紅柘榴の手に渡ったのだ。今更返してくださいとは言えない。
赤い珠玉を紅柘榴に返し、「盗みに行くので隠すように」と綴った。盗人にしては間抜けな一文だ。
あの一文を書いたのは紅柘榴に選ばせようと考えたからだ。
今夜、赤い珠玉を盗むのを言い訳にして紅柘榴に会いに行く。その時、彼女が珠玉を隠したのなら、これからも会いたいということになる。珠玉を隠さず俺に渡したのなら、もう会いたくないと言える。確信させる為に「幾度も参る」と付け足したのだ。
紅柘榴はどちらを選ぶのだろうか。太陽はまだ沈まず、月はまだ輝かない。
爆ぜてしまいそうな胸を抑えて、月夜の時を待つ。
昨夜に続き、今夜も月が人喰い塀と枯れた梅の木を照らす。今夜は昨晩よりも気温が高く、丸い月も夜道を見やすく照らす。いっそのこと雨でも降ってしまえば、こんな重荷を胸に抱かずに済んだ。
それもどうななったかわからない。雨でも雪でも結局は紅柘榴を求めて来ていたかもしれない。
俺はひとつ、深くて長い呼吸を吐くと梅の木を登る。今、一番に描がいている未来は紅柘榴が縁側の庭で待ち、俺に罵声雑言を浴びせながら赤い珠玉を投げつけるというものだ。
先を想像する際は常に最悪な状態を考えるようにしている。明るい未来の想像は脆く、砕ける。破片に傷をつけられるくらいなら、なるべく期待せず傷を負わない想像をするべきだ。
幹を登り、太い枝に足をかける。紅柘榴は多様の花々が咲く庭に立っていた。足が震え、踏み外してしまいそうになる。
身体の均衡を保ち、塀の瓦屋根に跳び移ると慣れた足つきで彼女の庭に着地する。
脚は震えていたが、転んで醜態を晒す真似はしなかった。
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