226 / 644
3章 死神が誘う遊園地
瑠璃、幼少期 9
しおりを挟む
いつの日からか来客が多くなった。それは父の秘書を務めるさえりや他の部下だったり、母の友人と名乗る男性だったりもした。そんな時はあたしが紅茶とお菓子を用意して、母がもてなした。
「エマそっくりだ。しっかり者で可愛らしい。まさに天使の子だ」
その日も母の友人が遊びに来た。彰と言う男はあたしを褒め讃えけれど、それを素直に受け止められなかった。
安物のブレザーに柄物のブラウス。ワックスでわざと跳ねた髪が彼の軽薄さを表していて、嫌悪感を抱く。
「そうでしょう?とってもいい子なのよ。瑠璃、お菓子と紅茶をお願いね」
そう言ったのなら素直に従うのが子供のあたしだ。彰に対して嫌悪感を抱いてもお湯を沸かしにキッチンに立つ。
「あの人、束縛が強くなってきたの」
リビングから深刻な話が聞こえてきた。こっそりと目を向けてみると、彰がその相談を深刻に頷き、母の手を握る。
「家中にカメラを置くっていうのよ。そうなったら外出もできない」
「その前に出ないとな。できそうか?」
「問題はなさそうよ。あの人は疑いもしないわ」
「なら、よかった。決行は」
ヤカンの水が沸騰し、彰の声が上書きされる。あたしはすぐさま火を止めて、ティーカップにお湯を注ぐ。その間にも2人の会話が続いていたけれど、お菓子と紅茶を乗せたトレイを持って行った時にはすでに別の話にシフトしていた。
あたしが2人の前に立つと彰が母の手を放して、繕ったような笑みを浮かべる。
「ありがとう瑠璃ちゃん。美味しそうなクッキーだ」
「瑠璃はお菓子作りが得意なの。とっても美味しいのよ」
母も彰に合わせて笑う。私はどうしても疑惑を払拭できずにいた。
それは父に対して抱くものと同じ嫌悪感であり、母を盗られてしまうという危機感でもあった。
「本当にママの友人なの?」
疑いを持った目つきで質問する。彰が目を泳がせ、少しばかり身を縮ませる。明らかな動揺を見せていた。
「友人よ。それ以上の関係に見える?」
たじろぐ彰に助け舟を出したのは母だった。
「瑠璃は私たちのことをどう見えてる?」
聞き返されてされて戸惑う。母の笑いながら問うその顔があたしを責めているようで恐かった。あたしは怒られるのに慣れていない。父はあたしと関わろうとしないし、母はいつも優しく笑っていたから。その時の母は別人に見えた。
「知らなくていいことをわざわざ聞くの?」
何も答えられずに俯く。
「ママはね、この人とお話ししたいだけなの。瑠璃は自分の部屋に戻りなさい」
すっかり意気消沈したあたしは項垂れてリビングを後にした。
「大丈夫か?あの子が父親に告げ口でもしたら」
「平気よ」
リビング前の廊下であたしは聞き耳を立てて会話の続きを聞こうとした。
「あの人、瑠璃の言うことは信じないの」
これほど母の言葉が冷たく感じたことはなかった。氷結された母の声に耳が痛くなる。垣間見た母の一面に目を背けたくて、あたしは子供部屋へと急いだ。
「エマそっくりだ。しっかり者で可愛らしい。まさに天使の子だ」
その日も母の友人が遊びに来た。彰と言う男はあたしを褒め讃えけれど、それを素直に受け止められなかった。
安物のブレザーに柄物のブラウス。ワックスでわざと跳ねた髪が彼の軽薄さを表していて、嫌悪感を抱く。
「そうでしょう?とってもいい子なのよ。瑠璃、お菓子と紅茶をお願いね」
そう言ったのなら素直に従うのが子供のあたしだ。彰に対して嫌悪感を抱いてもお湯を沸かしにキッチンに立つ。
「あの人、束縛が強くなってきたの」
リビングから深刻な話が聞こえてきた。こっそりと目を向けてみると、彰がその相談を深刻に頷き、母の手を握る。
「家中にカメラを置くっていうのよ。そうなったら外出もできない」
「その前に出ないとな。できそうか?」
「問題はなさそうよ。あの人は疑いもしないわ」
「なら、よかった。決行は」
ヤカンの水が沸騰し、彰の声が上書きされる。あたしはすぐさま火を止めて、ティーカップにお湯を注ぐ。その間にも2人の会話が続いていたけれど、お菓子と紅茶を乗せたトレイを持って行った時にはすでに別の話にシフトしていた。
あたしが2人の前に立つと彰が母の手を放して、繕ったような笑みを浮かべる。
「ありがとう瑠璃ちゃん。美味しそうなクッキーだ」
「瑠璃はお菓子作りが得意なの。とっても美味しいのよ」
母も彰に合わせて笑う。私はどうしても疑惑を払拭できずにいた。
それは父に対して抱くものと同じ嫌悪感であり、母を盗られてしまうという危機感でもあった。
「本当にママの友人なの?」
疑いを持った目つきで質問する。彰が目を泳がせ、少しばかり身を縮ませる。明らかな動揺を見せていた。
「友人よ。それ以上の関係に見える?」
たじろぐ彰に助け舟を出したのは母だった。
「瑠璃は私たちのことをどう見えてる?」
聞き返されてされて戸惑う。母の笑いながら問うその顔があたしを責めているようで恐かった。あたしは怒られるのに慣れていない。父はあたしと関わろうとしないし、母はいつも優しく笑っていたから。その時の母は別人に見えた。
「知らなくていいことをわざわざ聞くの?」
何も答えられずに俯く。
「ママはね、この人とお話ししたいだけなの。瑠璃は自分の部屋に戻りなさい」
すっかり意気消沈したあたしは項垂れてリビングを後にした。
「大丈夫か?あの子が父親に告げ口でもしたら」
「平気よ」
リビング前の廊下であたしは聞き耳を立てて会話の続きを聞こうとした。
「あの人、瑠璃の言うことは信じないの」
これほど母の言葉が冷たく感じたことはなかった。氷結された母の声に耳が痛くなる。垣間見た母の一面に目を背けたくて、あたしは子供部屋へと急いだ。
0
あなたにおすすめの小説
合成師
盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる