糸と蜘蛛

犬若丸

文字の大きさ
250 / 644
3章 死神が誘う遊園地

夢楽土会 12

しおりを挟む
   ケイの話で度々登場するカゲヒサが白糸・白鋏を隠して、ハザマが長年探し続ける羽目になったというのがあたしの解釈。
   「そうなのかなぁ」
   光弥もそれしか思い浮かばず、それでいてどこか納得いかない様子だった。 
   「なぁ、瑠璃の前世に話聞けない?」
   身を何を乗り出してくるのかと思えばあたしの前世ですって?
   「意味分かんないんだけど」
   あたしは呆れて椅子から立ち上がるとグラスにアイスティーを注ぐ。
   「だって、瑠璃の一部があの刀なんだぜ?瑠璃はどこかで魂の一部を切り取ってる」
   そんな記憶はあるわけがなく、光弥もそれをわかりきっていた。
   「身に覚えないだろ?だったらケイと白い刀は瑠璃の前世で何かしらの関わりがあったんだ」
   「だったら何?」
   「何って気になるだろ?」
   光弥と違ってあたしは事実の探求に興味はない。それを知らなくても生活に支障は無いもの。
   「そもそも、前世と会うなんて無茶振りじゃない」
   「白糸ならできるって」
   「なら、そのやり方教えてくれる?」
   光弥は黙る。理論では可能だと主張してもやり方が不明なら不可能なのよ。
   「ケイが何者でも、あたしの前世がどう関わっていたかも、それらは故人の話でしょ。現代にいるあたしには関係ないわ」


   そんなことが6月にあった。
   「気をつけてください」
   さえりの一言であたしは回想から戻ると適当に遇らう。
   あたしはさえりと別れてやっと涼しい自宅に帰れた。光弥に夢楽土会ついて聞きたかったのにあいつは不在だった。
   「何考えてる?」
   帰宅してすぐクーラーで室内を冷やし、アイスティーで身体を冷やす。そんな私にカンダタが不思議そうに尋ねてくる。
   カンダタはスクールバックの中に成績表と補習授業のスケジュールがあるのを知っている。嘘を吐いてまでさえりに渡さなかった。あたしの目論みを聞き出そうとしていた。
   「もし、夢楽土会と蝶男が何かしらの関わりがあるとしたら、カンダタの言う通りなのかもしれないって」
   冷蔵庫にアイスティーを仕舞う。夏の熱で火照った身体がすっかり冷めて、快適な空間にあたしの苛立ちは少しだけ和らいだ。
   「それで、どうするつもりなんだ?」
   カンダタが問う。まるで自分が協力する前提の質問ね。そのつもりだったから、いいけれど。
   「あとで話す」
   あたしはそれだけ言うと自室に戻った。
   日中の間、光弥が戻ってくるのを待っていた。どうやら、調査とやらを真面目にやっていらしい。
   やることもなかったからスマホでマーマレードのメイキング動画を検索する。
   叔母の味を再現してみようと何度も試みても、叔母の味にはならない。レシピも頼んで送ってもらったけれど、どこか違う。
   日本とフランスのオレンジではやっぱり違うのかしら?
   叔母のマーマレードを再現する為に様々な動画で勉強しているとバルコニーの窓を叩く者がいた。ケイだった。
   ここ10階よね?
   自分が住む部屋の階数を確認する。ケイは10階の部屋を登ってきたことになる。それが猫の潜在能力なのか、ケイが異常なのか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...