273 / 644
3章 死神が誘う遊園地
遊園地 1
しおりを挟む
大の字で自殺した青年の私生活と周囲からの評価が朝から報道されていた。死人に口はないとよく言うけれど、私生活までも暴かれたら死人の魂が報道局にクレームを出してしまいそう。
その青年の魂は現世にもハザマにも流れていないらしい。
「線路での人間解体ショーはどうでもいいのよ」
あたしがテレビの電源を切ると穏やかな朝の風景に戻る。
「知りたいのはあの店員がどこに行ったかよ」
「そう言われてもな」
光弥は困り果てて頭を掻く。
昨日の夕方、杉本と言うコンビニ店員が自殺し、彼の魂が黒い沼に沈んで消えていった。光弥はこれを連れ去られたと判断している。カンダタの見解では、店員が浮かべたあの笑顔は自ら望んでいたようだった。
どっちにしても店員が消えたのは夢楽土会の先生と名乗る桐 首の仕業でしょうね。
それはそれでいいとして、問題などはどこに連れ去られたかだ。
「なんで光弥が困るのよ。死ぬだけじゃない」
身勝手なあたしの言い分にカンダタは大きく息を吐いた。道理に反したあたしの強要にカンダタが反論しないのは彼もそれ以外の方法が思いつかないから。
あたしが光弥に強要しているのは夢園の服用だった。
「塊人に生死の概念がないって言うんならいくらだって死んでもいいじゃない」
生体を持たない魂は死にようがない。そういう意味では、光弥は失うはものはない。
けれど、あの店員の末路を目の当たりにすれば躊躇う無理はない。
死ぬだけならまだ良い。意思を失って、望みもしない奇行をくりだされたら堪らない。命がないからこそ意思だけは手放したくない。
光弥が躊躇っているのはそういった理由からだった。
「瑠璃が飲めばいいじゃないか。首って奴も瑠璃の魂抽出が目的だろ。だったら殺すはずがない」
「リスクが少ないのは光弥じゃない」
「えぇ」
あたしからしてみれば光弥は何もないと道楽者としか見えない。
「なぁ、瑠璃」
あたしたちのやりとりを見かねてカンダタが仲介に入る。
「何よ、カンダタが代わりに飲むの?楽園に迎え入れられたいのなら止めないわよ」
青と紫のカプセル剤をカンダタに差し出す。挑発的で逆撫でさせる言い方にカンダタも苛立った感情が湧いた。
「あのな」
カンダタが戒めようと口を開くその前に項の鈍痛が彼を襲った。前振りもなかったその痛みにカンダタは顔を歪めて項を擦る。
日増しに痛みが強くなっているようで、前までは顔にも出さないで我慢してきたのに、それを堪えられなくなっている。
「カンダタのそれって」
あたしはずっと抱いていた違和感を言葉にしようとした。
声を出そうとして途端、バルコニーの窓を叩く者がいた。ケイがあたしの部屋に訪れた。
その青年の魂は現世にもハザマにも流れていないらしい。
「線路での人間解体ショーはどうでもいいのよ」
あたしがテレビの電源を切ると穏やかな朝の風景に戻る。
「知りたいのはあの店員がどこに行ったかよ」
「そう言われてもな」
光弥は困り果てて頭を掻く。
昨日の夕方、杉本と言うコンビニ店員が自殺し、彼の魂が黒い沼に沈んで消えていった。光弥はこれを連れ去られたと判断している。カンダタの見解では、店員が浮かべたあの笑顔は自ら望んでいたようだった。
どっちにしても店員が消えたのは夢楽土会の先生と名乗る桐 首の仕業でしょうね。
それはそれでいいとして、問題などはどこに連れ去られたかだ。
「なんで光弥が困るのよ。死ぬだけじゃない」
身勝手なあたしの言い分にカンダタは大きく息を吐いた。道理に反したあたしの強要にカンダタが反論しないのは彼もそれ以外の方法が思いつかないから。
あたしが光弥に強要しているのは夢園の服用だった。
「塊人に生死の概念がないって言うんならいくらだって死んでもいいじゃない」
生体を持たない魂は死にようがない。そういう意味では、光弥は失うはものはない。
けれど、あの店員の末路を目の当たりにすれば躊躇う無理はない。
死ぬだけならまだ良い。意思を失って、望みもしない奇行をくりだされたら堪らない。命がないからこそ意思だけは手放したくない。
光弥が躊躇っているのはそういった理由からだった。
「瑠璃が飲めばいいじゃないか。首って奴も瑠璃の魂抽出が目的だろ。だったら殺すはずがない」
「リスクが少ないのは光弥じゃない」
「えぇ」
あたしからしてみれば光弥は何もないと道楽者としか見えない。
「なぁ、瑠璃」
あたしたちのやりとりを見かねてカンダタが仲介に入る。
「何よ、カンダタが代わりに飲むの?楽園に迎え入れられたいのなら止めないわよ」
青と紫のカプセル剤をカンダタに差し出す。挑発的で逆撫でさせる言い方にカンダタも苛立った感情が湧いた。
「あのな」
カンダタが戒めようと口を開くその前に項の鈍痛が彼を襲った。前振りもなかったその痛みにカンダタは顔を歪めて項を擦る。
日増しに痛みが強くなっているようで、前までは顔にも出さないで我慢してきたのに、それを堪えられなくなっている。
「カンダタのそれって」
あたしはずっと抱いていた違和感を言葉にしようとした。
声を出そうとして途端、バルコニーの窓を叩く者がいた。ケイがあたしの部屋に訪れた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる