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3章 死神が誘う遊園地
ミラーハウス 8
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その場から離れたいと願っても蜘蛛の脚がそれを許さない。蜘蛛の脚は床に深く刺さり、カンダタの行動範囲を狭める。
項が熱を帯び、脊椎が外れる感覚に襲われる。口から親指を離し、激痛に悶える悲鳴をあげる。獣の咆哮にも似た悲鳴だった。これが人の声なのかとカンダタは自分自身の疑心する。
2本目の脚が出ると3本、4本とカンダタの背中を引き裂き、鏡を破壊しては床に刺さる。
周囲の鏡は砕かれ、最早迷路とは呼べなかった。だが、陶器の彼女と瑠璃がいる背後の鏡には傷をつけなかった。
してはいけないという意思の表れなのかわからなくなってきた。5本、6本と脚が増える。その度に理性の糸が切れていくのを感じた。7本目に達した時、痛覚はなくなり、熱は気にならなくなっていた。
滝のように涎を流し、鼻息を荒げ、獣の声で鳴く。
8本目、目前の女を餌として捉える。切れた理性、膨大な飢餓。衝動を抑えるものは何もなかった。
口角が上がり、餌を求めて腕を伸ばす。それに呼応して蜘蛛の脚が陶器の女を串刺しにしようと動き出す。
「カンダタ!」
瑠璃の殺気立った声はカンダタの理性を僅かに取り戻す。蜘蛛の脚は動きを止める。そうして次に望んだのは背後の瑠璃を見つめることだった。8本の脚はカンダタを中心にして旋回する。
そこにいたのは瑠璃ではなく、己の容姿が写った鏡だった。
背中から伸びる巨大な8本の脚、下半身は動かせず上半身は脚の重さによって床に凭れている。這いつくばった格好だ。
自分の血で顔が汚れ、顎から垂れる涎が床に滴り落ちる。
清音はカンダタを恐れる目で見る。瑠璃はカンダタを化け物と呼ぶ。そこに写っているのは間違いなく化け物だった。
説明は聞かされていた。それを疑ってはいなかったが、実感はなかった。その姿と対峙しなければ真の意味は理解できない。記憶がなければ尚更のことだ。カンダタはやっとこの身に受けた理不尽さを知る。
一方であたしはカンダタを凝視していた。いくら叫び、鏡に体当たりしても反応しなかった。
あれほどの憎悪が一気に冷めた彼の行動。重要視するのはこの後で、カンダタは8本の脚を使って旋回した。 あたしには自らの意思で蜘蛛の脚が動いたようにみえた。
蜘蛛の脚は黒蝶に犯された証であり、それを支配できるのは蝶男だけかと思い込んでいた。
「カンダタ!」
あたしはもう一度叫ぶ。
「鏡を壊して!」
「ギャァア!」
その指示異論を唱えるようにハクが吠えたてる。
あたしはハクを一瞥する。短い警告の後、ハクは身を屈めてあたしの背中に隠れる。カンダタほうへ意識を戻す。
そこにカンダタの自我はなかった。彼は再び、黒蝶の衝動に呑まれ、理性は食われてしまった。獣となった赤目はマジックミラーの自分を見つめず、その先にいる人物を捉える。
瞬時に理解した。 あたしの声はカンダタに届いている。「鏡を壊して」それは自分を写す鏡の向こうに新鮮な餌があり、鏡は壊せるものだと認識させる。
蜘蛛の脚が天を仰ぎ、マジックミラーを貫いた。カンダタと あたしを隔てていた鏡は蜘蛛の巣の罅を作り、脚の鋭い先端は あたしの一寸先で止まる。
驚愕の呪縛を解き、駆け出した。
蜘蛛の脚は立て続けに鏡を刺し、鏡は粉々になる。崩れた鏡からカンダタの咆哮があたしの鼓膜を劈く。
崩れた鏡か身を乗り出し、逃げているあたしの姿を捉える。
項が熱を帯び、脊椎が外れる感覚に襲われる。口から親指を離し、激痛に悶える悲鳴をあげる。獣の咆哮にも似た悲鳴だった。これが人の声なのかとカンダタは自分自身の疑心する。
2本目の脚が出ると3本、4本とカンダタの背中を引き裂き、鏡を破壊しては床に刺さる。
周囲の鏡は砕かれ、最早迷路とは呼べなかった。だが、陶器の彼女と瑠璃がいる背後の鏡には傷をつけなかった。
してはいけないという意思の表れなのかわからなくなってきた。5本、6本と脚が増える。その度に理性の糸が切れていくのを感じた。7本目に達した時、痛覚はなくなり、熱は気にならなくなっていた。
滝のように涎を流し、鼻息を荒げ、獣の声で鳴く。
8本目、目前の女を餌として捉える。切れた理性、膨大な飢餓。衝動を抑えるものは何もなかった。
口角が上がり、餌を求めて腕を伸ばす。それに呼応して蜘蛛の脚が陶器の女を串刺しにしようと動き出す。
「カンダタ!」
瑠璃の殺気立った声はカンダタの理性を僅かに取り戻す。蜘蛛の脚は動きを止める。そうして次に望んだのは背後の瑠璃を見つめることだった。8本の脚はカンダタを中心にして旋回する。
そこにいたのは瑠璃ではなく、己の容姿が写った鏡だった。
背中から伸びる巨大な8本の脚、下半身は動かせず上半身は脚の重さによって床に凭れている。這いつくばった格好だ。
自分の血で顔が汚れ、顎から垂れる涎が床に滴り落ちる。
清音はカンダタを恐れる目で見る。瑠璃はカンダタを化け物と呼ぶ。そこに写っているのは間違いなく化け物だった。
説明は聞かされていた。それを疑ってはいなかったが、実感はなかった。その姿と対峙しなければ真の意味は理解できない。記憶がなければ尚更のことだ。カンダタはやっとこの身に受けた理不尽さを知る。
一方であたしはカンダタを凝視していた。いくら叫び、鏡に体当たりしても反応しなかった。
あれほどの憎悪が一気に冷めた彼の行動。重要視するのはこの後で、カンダタは8本の脚を使って旋回した。 あたしには自らの意思で蜘蛛の脚が動いたようにみえた。
蜘蛛の脚は黒蝶に犯された証であり、それを支配できるのは蝶男だけかと思い込んでいた。
「カンダタ!」
あたしはもう一度叫ぶ。
「鏡を壊して!」
「ギャァア!」
その指示異論を唱えるようにハクが吠えたてる。
あたしはハクを一瞥する。短い警告の後、ハクは身を屈めてあたしの背中に隠れる。カンダタほうへ意識を戻す。
そこにカンダタの自我はなかった。彼は再び、黒蝶の衝動に呑まれ、理性は食われてしまった。獣となった赤目はマジックミラーの自分を見つめず、その先にいる人物を捉える。
瞬時に理解した。 あたしの声はカンダタに届いている。「鏡を壊して」それは自分を写す鏡の向こうに新鮮な餌があり、鏡は壊せるものだと認識させる。
蜘蛛の脚が天を仰ぎ、マジックミラーを貫いた。カンダタと あたしを隔てていた鏡は蜘蛛の巣の罅を作り、脚の鋭い先端は あたしの一寸先で止まる。
驚愕の呪縛を解き、駆け出した。
蜘蛛の脚は立て続けに鏡を刺し、鏡は粉々になる。崩れた鏡からカンダタの咆哮があたしの鼓膜を劈く。
崩れた鏡か身を乗り出し、逃げているあたしの姿を捉える。
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