糸と蜘蛛

犬若丸

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3章 死神が誘う遊園地

支配される魂、抗う 2

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   隣にいた翡翠は涙が引っ込み、怪訝そうにこちらを見つめる。
   それよりもカンダタは辿りついた可能性に頭を打たれていた。
   あの言い回し、別の呼び名を知っているようだった。生前のカンダタは赤眼という呼び名があった。特徴的な瞳の色だ。それなりに目立つ。
 当時ならば軽く調べればわかるだろう。紅柘榴を探していた首が聞き込みをしていくうちに知ったのかもしれない。
   だが、もう一つある。紅柘榴が首に話したという可能性だ。それならば首がベにの愛称を知っていたのも納得がいく。
   だとすれば、首がしていた「自ら命を絶った」「手遅れだった」は嘘になる。
   紅柘榴について何か隠し事をしている?だから嘘をつく必要があったのではないか?
   隠された紅柘榴の秘密にカンダタは希望の糸を見出した。
   「首の所へ案内してくれ」
   突然に灯ったカンダタの熱に翡翠は驚いているようだった。
   「来てくれますか?」
   即答はできなかった。カンダタを破壊し、処分しようとした男を助ける義理はない。しかし、翡翠は立ち上がったカンダタに期待してしまっている。
   「首の所までだ」
   「ありがとうございます」
   それを聞いた翡翠は目を輝かせ、花のような笑みを咲かせた。笑顔も泣き顔もカンダタの頭にに紅柘榴がちらつく。
   脳内でできる幻影に惑わされずつの案内を頼む。
   道中、拘束されていた独房で拘束されている間に起きた出来事を話してくれた。
   本来の計画では、夢園という砦で瑠璃を保護した後、遊園地に囚われていた人々はバグという怪物に食わせ、胃の中に貯蓄しするというのだ。
   身の毛が弥立つ計画だが、それは別の人物によって乗っ取られたそうだ。政蔵という鷲の顔を持った男らしい。
 技術者として働いていた彼が突如、謀反を起こしたと言う。政蔵は首と翠玉を銃殺し、首の頭だけを持ち去ったようだ。
   「政蔵の目的は金庫室でしょう。あそこを開けるにはお父様の交際認証と指紋認証、スイートルームで保管してある鍵が必要になります。」 
   説明を聞いていると翡翠の救助優先は父親らしい。彼女は2人を助けてほしいと言っていた。
   「翠玉のほうは」
   助けに行かなくていいのか?と続けそうになり、口を噤んだ。それを少女に聞くのは酷だ。
   翡翠はカンダタの意図を読み取り答える。
   「私たちは繋がっているので翠玉の状況はわかります。まだ息がありますが、もうすぐ消滅するでしょう。でも、まだ」
   間に合うかもしれない。向かうのは首ではなく、翠玉にするべきだと少女の中で葛藤が生まれる。
   翡翠は葛藤を振り払う。
   「私たちはお父様の娘です。お父様によって作られたからお父様に仕えないといけない」
   案内に従いながら回廊から階段へと移る。
   「俺の拘束具を外したのも首の為か」
   「いいえ」
   意外な返答だった。
   「謀反を企てていたのは政蔵だけじゃないんです。私たちも放浪者を解放しようと翠玉と話し合って決めていたんです。反抗期になろうって」
   儚げな翡翠が悪戯っぽい微笑を浮かべる。それが年相応の女の子に見えた。人形ようだった印象はすっかり消えていた。
   「どれほどお父様に尽くしてもお父様は私たちを見てくれないから」
   それでも翡翠は父を選んだ。姉妹であり、同志である翠玉よりも父親を優先する。翡翠にとって父とは絶対的なのだろう。
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