364 / 644
4章 闇底で交わす小指
夏と秋の狭間で 3
しおりを挟む
「そんなことない。カンダタさんはすごいのよ。いざって時には助けてくれるし、それに」
惚れた相手を馬鹿にされた清音はむきなって反論するも評価は変わらない。
それに同棲なんてふざけたことを言っているけれど、亡霊がマンションに取り憑いていているだけ。
それできるのなら除霊をお願いしたい。
清音の話を聞き流しながら、ステーキの切れ端をフォークで刺し、ハクに向ける。
ハクはシャリアピンステーキに興味を示さない。寧ろ、鼻筋から眉間まで皺を寄せ、硬く口を閉ざすと拗ねたようにそっぽを向く。
チキンがなくて拗ねたくもなるだろうけれど、ないものはない。
「あの赤い瞳とか素敵よね。不気味だなって思ってたんだけど、いつの間にか見ていたくなったというか」
清音の反論は惚気話に変わっていた。
「惚れてるのはわかったから。喋りすぎよ」
熱弁していたと自覚した清音は赤らめた顔のまま、しおらしくなる。
この流れだと恋愛相談されそう。
恋愛というだけでも鳥肌がたちそうなのに「会わせて」とか「何が好みなの?」とか、そんなとこまで訊かれたら吐き気がする。
せっかくのスイーツブッフェが台無しになる前に話題を変える。
「カンダタよりもケイの調子はどうなの?」
あたしが認識した限りで、夢園でのケイは腕一本だけになっていた。そんな状態でよくバグに挑んだとカンダタよりも労えばいいのに。
「大分、回復したよ。でも、まだ本調子ではないみたい。人の姿になるには2週間ぐらい必要だって」
大事な飼い猫の話になると惚ける場合ではなくなる。
「腕一本なくなっても生えてくるんでしょ。生死を持たない存在なんだからそんな心配しなくてもいいじゃない」
「そういう問題じゃないってわかってるでしょ」
もちろんわかっている。これでも倫理観は備えてある。けれど、あたしという性格は誰かを不快にさせたくて仕様がない。
「なんで、ケイの話を?」
清音の素朴な疑問にあたしは紅茶を飲んでひと息つく。
「十手のことはさっき言ったわね」
「ちょっとだけね。特別な物なんだよね」
「塊人にとっては核爆弾と同等らしいわよ。あたしには理解できないけれど」
鞄から核爆弾を取り出してテーブルの上に置く。コロコロと転がったのは白いシャープペンシルだった。
「これがあの十手?」
清音が驚くのも無理はない。鉄棒の形をしていた十手は現世に戻った途端、ペンに変形した。
所有者が必要とした物に形が変わるらしい。だとしたら、あたしはペンを必要としたことになるけれど、ペンは充分にある。
白いペンを手の上で回し、これからのことを話す。
「この元十手を交渉の切り札にする」
交渉の相手はハザマの管理者 弥。十手を使ってあたしたちが欲しい情報を引き出すのが狙い。
「敵地に乗り込んで交渉しに行くから護衛にケイがいるのよ」
戦闘慣れしているのはケイしかいない。
白糸という能力があっても可能なのは物を動かしたり、くっつけたり。最近では他人の位置がわかるようになった。それを踏まえても戦闘には向いていない。
白鋏があればマシだったのに。あれは夢園のキャストが砕いてしまった。白糸・白鋏は物ではなく、魂の一部だからいつでも顕現できるらしい。今のところ、その気配はない。
それにどんなすごい能力を持っていてもあたしはただの高校生。場慣れしている相手には敵わない。
「危ないことになる?」
「また怪我を負わせるかもね」
「カンダタさんも行くの?」
「そりゃあ、そうでしょうね」
惚れた相手を馬鹿にされた清音はむきなって反論するも評価は変わらない。
それに同棲なんてふざけたことを言っているけれど、亡霊がマンションに取り憑いていているだけ。
それできるのなら除霊をお願いしたい。
清音の話を聞き流しながら、ステーキの切れ端をフォークで刺し、ハクに向ける。
ハクはシャリアピンステーキに興味を示さない。寧ろ、鼻筋から眉間まで皺を寄せ、硬く口を閉ざすと拗ねたようにそっぽを向く。
チキンがなくて拗ねたくもなるだろうけれど、ないものはない。
「あの赤い瞳とか素敵よね。不気味だなって思ってたんだけど、いつの間にか見ていたくなったというか」
清音の反論は惚気話に変わっていた。
「惚れてるのはわかったから。喋りすぎよ」
熱弁していたと自覚した清音は赤らめた顔のまま、しおらしくなる。
この流れだと恋愛相談されそう。
恋愛というだけでも鳥肌がたちそうなのに「会わせて」とか「何が好みなの?」とか、そんなとこまで訊かれたら吐き気がする。
せっかくのスイーツブッフェが台無しになる前に話題を変える。
「カンダタよりもケイの調子はどうなの?」
あたしが認識した限りで、夢園でのケイは腕一本だけになっていた。そんな状態でよくバグに挑んだとカンダタよりも労えばいいのに。
「大分、回復したよ。でも、まだ本調子ではないみたい。人の姿になるには2週間ぐらい必要だって」
大事な飼い猫の話になると惚ける場合ではなくなる。
「腕一本なくなっても生えてくるんでしょ。生死を持たない存在なんだからそんな心配しなくてもいいじゃない」
「そういう問題じゃないってわかってるでしょ」
もちろんわかっている。これでも倫理観は備えてある。けれど、あたしという性格は誰かを不快にさせたくて仕様がない。
「なんで、ケイの話を?」
清音の素朴な疑問にあたしは紅茶を飲んでひと息つく。
「十手のことはさっき言ったわね」
「ちょっとだけね。特別な物なんだよね」
「塊人にとっては核爆弾と同等らしいわよ。あたしには理解できないけれど」
鞄から核爆弾を取り出してテーブルの上に置く。コロコロと転がったのは白いシャープペンシルだった。
「これがあの十手?」
清音が驚くのも無理はない。鉄棒の形をしていた十手は現世に戻った途端、ペンに変形した。
所有者が必要とした物に形が変わるらしい。だとしたら、あたしはペンを必要としたことになるけれど、ペンは充分にある。
白いペンを手の上で回し、これからのことを話す。
「この元十手を交渉の切り札にする」
交渉の相手はハザマの管理者 弥。十手を使ってあたしたちが欲しい情報を引き出すのが狙い。
「敵地に乗り込んで交渉しに行くから護衛にケイがいるのよ」
戦闘慣れしているのはケイしかいない。
白糸という能力があっても可能なのは物を動かしたり、くっつけたり。最近では他人の位置がわかるようになった。それを踏まえても戦闘には向いていない。
白鋏があればマシだったのに。あれは夢園のキャストが砕いてしまった。白糸・白鋏は物ではなく、魂の一部だからいつでも顕現できるらしい。今のところ、その気配はない。
それにどんなすごい能力を持っていてもあたしはただの高校生。場慣れしている相手には敵わない。
「危ないことになる?」
「また怪我を負わせるかもね」
「カンダタさんも行くの?」
「そりゃあ、そうでしょうね」
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる