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4章 闇底で交わす小指
望まなかったもの 4
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あたしを引きあげたのはこいつに違いない
助けられた?
あたしを母親だと勘違いして、そうしたのかもしれない。廃病院や子取りもあたしをママと呼んで呑み込もうとした。
この化け物もあたしを呑み込むつもりで助けた?
手と足は強張り、目線は必死に逃げ道を探す。
緊張を見せるあたしの態度にも化け物は「うー?」と鳴く。
間抜けな顔でこちらを見ている。緊張しているのも馬鹿らしく思えてきた。
「あなた、何なの?」
子取りや廃病院子と同じようにあたしを襲うのかと思ったけれど、その気配がない。
「キィキ、ケッケイ、ケイジウ、キ、キ、ケイ」
キケイって言いたいのかしら?
滑舌が悪いせいか自身の名前すらもうまく言えていない。
別に化け物の名前を知りたかったわけじゃない。
襲ってこないで名乗ってきたのなら、子取りみたいにあたしを呑み込むことはなさそうね。河原の子に近いのかも。
「マア、ア、マァマ?」
「違う」
いきなり母親扱いされたから反射的に否定した。語気が強い口調は怒ったと判断されたみたいでキケイは項垂れる。
「マァ、マア、マァマ」
それでもあたしを母親にしたいらしい。
「だから違う。あたしは瑠璃。あなたの親じゃない」
「ルゥル?マ、マ?」
なんでそうなるのよ。
キケイの母を求める意思は強いみたいであたしが教えた名前は「ママ」と上書きされた。
「ママじゃない。あたしは瑠璃よ。る、り」
「ル、ル、ルゥ?」
「るっりっ。たった2文字も覚えられないの?」
棘が含まれた言葉はキケイを傷つけた。
「うああっ!ああっ!あああっ!」
酷く顔を歪めると次の瞬間、大口から耳を劈く叫び声が上がった。
咆哮?いや違う。泣き声だわ。両手で耳を抑えても痛い。
「わかった!謝るから!悪かった!」
泣き声が大音量で響く。叫ぶように言い聞かせてもキケイには聞こえてない。
「ああああっ!マアマッあああっ!ままああっ!」
このままだと頭がおかしくなる。
謝罪の声も聞こえてないし、あたしはママじゃないし。
子供の癇癪ってどうやって止めるの? あやせばいいの?でも、あやすってどうすればいいの?
命に関わる危機感はなくなっているのに別の危機に混乱させられる。
自分の母親にどうやってあやされたのか、幼い記憶を辿ってみても思い出すのは独りで留守番をしていたことばかり。まともな家庭で育ってないと改めて思い知らされる。
いやいや、他にもあるはず。少なくともフランスにいた頃はそれなりに幸せだった。
あたしは両耳から手を離すとキケイの腕を撫でる。
母があたしを寝かしつける時、よく胸や背中を撫でてもらった。それだけなのに安心して眠れたような気がする。
キケイの背中を撫でれたら良いのだけれど、あまりにも大きすぎて手が届かない。
仕方なく腕を撫でていると大音量だった泣き声が徐々に低くなっていった。
「ヒック、ウッ」
嗚咽は残すも咆哮に似たあの泣き声でないことに安堵する。
「落ち着いた、みたいね」
「マ、ママア」
「ママじゃない」
しまった。また泣かれると、危惧する。
「ル、ルル」
心配とは裏腹にキケイはあたしの名前を言おうとしている。
母と呼ばれるよりはマシね。
「ルルでもいいわよ。けれど、ママだけはやめて」
キケイは理解してくれたみたいで何度も頷き、「ルル、ルル」と声を弾ませる。
さっきまであんなに泣いていたのに、今度は楽しそうにあたしを呼んでいる。全くわからない子供の心理に疲労の溜め息を落とす。
疲弊しても休むつもりはなかった。というより、キケイの前では休まれない。
助けられた?
あたしを母親だと勘違いして、そうしたのかもしれない。廃病院や子取りもあたしをママと呼んで呑み込もうとした。
この化け物もあたしを呑み込むつもりで助けた?
手と足は強張り、目線は必死に逃げ道を探す。
緊張を見せるあたしの態度にも化け物は「うー?」と鳴く。
間抜けな顔でこちらを見ている。緊張しているのも馬鹿らしく思えてきた。
「あなた、何なの?」
子取りや廃病院子と同じようにあたしを襲うのかと思ったけれど、その気配がない。
「キィキ、ケッケイ、ケイジウ、キ、キ、ケイ」
キケイって言いたいのかしら?
滑舌が悪いせいか自身の名前すらもうまく言えていない。
別に化け物の名前を知りたかったわけじゃない。
襲ってこないで名乗ってきたのなら、子取りみたいにあたしを呑み込むことはなさそうね。河原の子に近いのかも。
「マア、ア、マァマ?」
「違う」
いきなり母親扱いされたから反射的に否定した。語気が強い口調は怒ったと判断されたみたいでキケイは項垂れる。
「マァ、マア、マァマ」
それでもあたしを母親にしたいらしい。
「だから違う。あたしは瑠璃。あなたの親じゃない」
「ルゥル?マ、マ?」
なんでそうなるのよ。
キケイの母を求める意思は強いみたいであたしが教えた名前は「ママ」と上書きされた。
「ママじゃない。あたしは瑠璃よ。る、り」
「ル、ル、ルゥ?」
「るっりっ。たった2文字も覚えられないの?」
棘が含まれた言葉はキケイを傷つけた。
「うああっ!ああっ!あああっ!」
酷く顔を歪めると次の瞬間、大口から耳を劈く叫び声が上がった。
咆哮?いや違う。泣き声だわ。両手で耳を抑えても痛い。
「わかった!謝るから!悪かった!」
泣き声が大音量で響く。叫ぶように言い聞かせてもキケイには聞こえてない。
「ああああっ!マアマッあああっ!ままああっ!」
このままだと頭がおかしくなる。
謝罪の声も聞こえてないし、あたしはママじゃないし。
子供の癇癪ってどうやって止めるの? あやせばいいの?でも、あやすってどうすればいいの?
命に関わる危機感はなくなっているのに別の危機に混乱させられる。
自分の母親にどうやってあやされたのか、幼い記憶を辿ってみても思い出すのは独りで留守番をしていたことばかり。まともな家庭で育ってないと改めて思い知らされる。
いやいや、他にもあるはず。少なくともフランスにいた頃はそれなりに幸せだった。
あたしは両耳から手を離すとキケイの腕を撫でる。
母があたしを寝かしつける時、よく胸や背中を撫でてもらった。それだけなのに安心して眠れたような気がする。
キケイの背中を撫でれたら良いのだけれど、あまりにも大きすぎて手が届かない。
仕方なく腕を撫でていると大音量だった泣き声が徐々に低くなっていった。
「ヒック、ウッ」
嗚咽は残すも咆哮に似たあの泣き声でないことに安堵する。
「落ち着いた、みたいね」
「マ、ママア」
「ママじゃない」
しまった。また泣かれると、危惧する。
「ル、ルル」
心配とは裏腹にキケイはあたしの名前を言おうとしている。
母と呼ばれるよりはマシね。
「ルルでもいいわよ。けれど、ママだけはやめて」
キケイは理解してくれたみたいで何度も頷き、「ルル、ルル」と声を弾ませる。
さっきまであんなに泣いていたのに、今度は楽しそうにあたしを呼んでいる。全くわからない子供の心理に疲労の溜め息を落とす。
疲弊しても休むつもりはなかった。というより、キケイの前では休まれない。
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