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4章 闇底で交わす小指
決断 3
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瑠璃たちは子取りの中にいる。あの中に瑠璃がいるとすれば、無事かどうか心配になるが、怪物の暴挙に単身で向かえば忽ちに潰される。
子取りの切断した頭には山盛りになった胎児たちの死骸がある。よくよく観察すれば赤黒い死骸に混じり、生気のある人肌の脚が見えた。
瑠璃か清音か。あの辺りに2人がいるのは確かだ。
カンダタは目を瞑る。2、3回ほど深呼吸すると立ち上がりると鬼の尾の下を目指して走る。
頭上で空を切る尾に怯えつつも尾から脚へと潜る。金属の鋭い脚が8本。その合間を縫うように避け、薙ぎる鋏には身を屈め脅威を凌ぐ。蠍の鬼と子取りの間まで来ると今度は子取りの手の平がカンダタの頭上に降ってきた。
子取りは鬼からの暴行から逃れるべく、身を捩り、身体を反転させようといた。
キケイとは比べ物にならない手の平の大きさに戦慄する。
手の平が振り下ろされる最中、巨大な指の間を見極めながら、カンダタはその間と思われる場所に移動する。
直後、子取りの手が地面を叩いた。カンダタは無事だった。
蠍の鬼が子取りの片足を鋏で摘む。切断される激痛に子取りは抵抗し、もう片方の足で蠍の鬼を蹴る。蠍の鬼からしてみれば、その抵抗は赤子そのものであり、蹴られたとしても障りはない。
赤子のか弱い抵抗だとしてもカンダタにとっては全身が潰される恐れが増すだけだ。暴れるほどに頭から貝紫色の泥が飛び散り、こちらに降ってくる。
頬や首筋の肌に熱が点り、爛れる。肉と骨を一瞬で溶かすような強い酸性ではないものの、元である胎児の死骸の山に飛び込めば肌が爛れるだけでは済まされない。
カンダタは腹を括り、子取りの頭に飛び込んだ。
胎児の死骸には五体揃っているものがなかった。頭がないものや手だけ足だけのもの、中にはわ僅か妊娠5週目のものもあった。
カンダタは死屍を掻き分け、肌を溶かす熱に耐える。爛れた肌の上に泥が触れ、抉る痛みがカンダタを戒めようと全身に走る。
「瑠璃!おい!瑠璃!」
大口を開けば泥が入り、口内に熱を残す。瑠璃からの返答はない。
「瑠璃っ!」
もう一度声を張り上げれば、死屍を掻き分けるカンダタの腕を誰かが掴んだ。
肌を焼く泥の熱ではなく、温もりのある人肌の温度だと判断すると急いでそれを引き寄せた。
子取りの頭の中で揉まれ、疲弊しきった瑠璃が死屍の群れから現れた。
清音と同じように胚羊水に呑まれたかと心配していたが、十手を口に咥え、目を合わせる青い瞳は強い意思を宿している。
清音はどこかと目を泳がせ探していると瑠璃が力を振り絞り、反対の手をカンダタに見せる。その手に握られていたのは清音の手。
瑠璃を腰に抱き、清音を手探りで引き寄せると彼女を肩に置く。
脱出しようともがいていると子取りが頭を激しく振る。2人を抱えたカンダタは抗えられぬまま、死屍の流れに押され、子取りの頭から振り落とされる。
ブドウコの柔らかい地面に投げ出された。
カンダタは身体を起こし、改めて清音、瑠璃の安否を確認する。
瑠璃は激しく呼吸を繰り返し、疲弊した身体を起こそうとしていた。目立った怪我はしていない。清音も怪我はしていないが、意識は戻らず目蓋は固く閉ざされている。
清音の腕に抱かれていた赤眼の子がいない。それに死屍の中には天鳥もいなかった。
「子供は?天鳥は?」
瑠璃は咥えていたの十手の柄を握ると「いなくなった」と弱い口調で首を振るう。
金属が軋み、子取りが大きな悲鳴をあげる。目線を子取りたちに戻せば、虐待の状況が変わっていた。
子取りを助けていたのは楊梅瘡の大蛇であった。大蛇は蠍の胴に絡み、きつく締めつける。鬼の動きが鈍くなると子取りが怪我を負った片脚を引きずりながらも離れていく。
頭の中にいたはずの瑠璃と清音がいなくなったと子取り自身も気付いたようで、周囲を探すと2人を抱えたカンダタが目に入る。
子取りは悲痛から憎悪へと瞬く間に様変わりし、鬼の形相でカンダタたちに迫ってくる。その背後では蠍の鬼が大蛇を輪切りにしている。あの鬼も子取りを追ってくるはずだ。
「立てるか?」
訊ねるよりも先に瑠璃は身体を起こしていた。目立つ怪我はないものの、動きは鈍い。
カンダタは清音を肩から背中に移すと立ち上がる。背負わされた清音は目を覚ます気配はなく、呼吸が浅い。
子取りの切断した頭には山盛りになった胎児たちの死骸がある。よくよく観察すれば赤黒い死骸に混じり、生気のある人肌の脚が見えた。
瑠璃か清音か。あの辺りに2人がいるのは確かだ。
カンダタは目を瞑る。2、3回ほど深呼吸すると立ち上がりると鬼の尾の下を目指して走る。
頭上で空を切る尾に怯えつつも尾から脚へと潜る。金属の鋭い脚が8本。その合間を縫うように避け、薙ぎる鋏には身を屈め脅威を凌ぐ。蠍の鬼と子取りの間まで来ると今度は子取りの手の平がカンダタの頭上に降ってきた。
子取りは鬼からの暴行から逃れるべく、身を捩り、身体を反転させようといた。
キケイとは比べ物にならない手の平の大きさに戦慄する。
手の平が振り下ろされる最中、巨大な指の間を見極めながら、カンダタはその間と思われる場所に移動する。
直後、子取りの手が地面を叩いた。カンダタは無事だった。
蠍の鬼が子取りの片足を鋏で摘む。切断される激痛に子取りは抵抗し、もう片方の足で蠍の鬼を蹴る。蠍の鬼からしてみれば、その抵抗は赤子そのものであり、蹴られたとしても障りはない。
赤子のか弱い抵抗だとしてもカンダタにとっては全身が潰される恐れが増すだけだ。暴れるほどに頭から貝紫色の泥が飛び散り、こちらに降ってくる。
頬や首筋の肌に熱が点り、爛れる。肉と骨を一瞬で溶かすような強い酸性ではないものの、元である胎児の死骸の山に飛び込めば肌が爛れるだけでは済まされない。
カンダタは腹を括り、子取りの頭に飛び込んだ。
胎児の死骸には五体揃っているものがなかった。頭がないものや手だけ足だけのもの、中にはわ僅か妊娠5週目のものもあった。
カンダタは死屍を掻き分け、肌を溶かす熱に耐える。爛れた肌の上に泥が触れ、抉る痛みがカンダタを戒めようと全身に走る。
「瑠璃!おい!瑠璃!」
大口を開けば泥が入り、口内に熱を残す。瑠璃からの返答はない。
「瑠璃っ!」
もう一度声を張り上げれば、死屍を掻き分けるカンダタの腕を誰かが掴んだ。
肌を焼く泥の熱ではなく、温もりのある人肌の温度だと判断すると急いでそれを引き寄せた。
子取りの頭の中で揉まれ、疲弊しきった瑠璃が死屍の群れから現れた。
清音と同じように胚羊水に呑まれたかと心配していたが、十手を口に咥え、目を合わせる青い瞳は強い意思を宿している。
清音はどこかと目を泳がせ探していると瑠璃が力を振り絞り、反対の手をカンダタに見せる。その手に握られていたのは清音の手。
瑠璃を腰に抱き、清音を手探りで引き寄せると彼女を肩に置く。
脱出しようともがいていると子取りが頭を激しく振る。2人を抱えたカンダタは抗えられぬまま、死屍の流れに押され、子取りの頭から振り落とされる。
ブドウコの柔らかい地面に投げ出された。
カンダタは身体を起こし、改めて清音、瑠璃の安否を確認する。
瑠璃は激しく呼吸を繰り返し、疲弊した身体を起こそうとしていた。目立った怪我はしていない。清音も怪我はしていないが、意識は戻らず目蓋は固く閉ざされている。
清音の腕に抱かれていた赤眼の子がいない。それに死屍の中には天鳥もいなかった。
「子供は?天鳥は?」
瑠璃は咥えていたの十手の柄を握ると「いなくなった」と弱い口調で首を振るう。
金属が軋み、子取りが大きな悲鳴をあげる。目線を子取りたちに戻せば、虐待の状況が変わっていた。
子取りを助けていたのは楊梅瘡の大蛇であった。大蛇は蠍の胴に絡み、きつく締めつける。鬼の動きが鈍くなると子取りが怪我を負った片脚を引きずりながらも離れていく。
頭の中にいたはずの瑠璃と清音がいなくなったと子取り自身も気付いたようで、周囲を探すと2人を抱えたカンダタが目に入る。
子取りは悲痛から憎悪へと瞬く間に様変わりし、鬼の形相でカンダタたちに迫ってくる。その背後では蠍の鬼が大蛇を輪切りにしている。あの鬼も子取りを追ってくるはずだ。
「立てるか?」
訊ねるよりも先に瑠璃は身体を起こしていた。目立つ怪我はないものの、動きは鈍い。
カンダタは清音を肩から背中に移すと立ち上がる。背負わされた清音は目を覚ます気配はなく、呼吸が浅い。
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