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5章 恋焦がれ巡る地獄旅行
温室栽培 4
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来た道を戻って走る。そこに慎重さはなく、身を潜めず、全速力だった。
走り出したのと同時に星の数ほどもある果実から腐った囚人が次々と地面に落下していった。カンダタが果実の真下を通れば、それに合わせるようにして囚人が転がってくる。
土に寝転ぶ囚人たちは落下した打撃で身体の部位を破損し、頭部から落ちたものは顔面が面影もなく潰れていた。
砕けた頭蓋骨から脳汁・脳みその一部が垂れる。脚部と胸部も同じようなもので、脆くなった肉から折れた骨、千切れた血管、神経が伸びていた。
破損が酷い囚人たちは飢えた獣並みの貪欲さを持っていた。同じ人だと言うのに隣の囚人の肉を求め、共食いを始めたのだ。
互いが互いの膨らんだ腹を求め、歯をたて、爪を食い込ませる。
そうした光景を横目で眺めていたら足元が留守になってしまった。左側から伸びてきた手がカンダタの脚を掴んできたのだ。
全力で走る脚を囚人は掴みきれず、指と足首が掠める程度にしかならなかった。しかし、躓くには充分だった。
足元から崩れ、咄嗟に手をつく。刹那、カンダタの頭上で大きな影が通っていた。
大樹と果実の合間を影が飛び交う。影が持つ金目の眼光をカンダタは見逃さなかった。
すぐに立ち上がる。しかし、頭上にいた影がカンダタの背後に降りた。顎から涎をたらし、喉からは女性の悲鳴のような、金属音のような金切り声を鳴らし、鬼は牙を向く。
鋭い鉤爪は間合に入っている。いくら全速力で駆けても逃げきれない。
鋭い鉤爪が弧を描く。捉えられたのは一番近くにいたカンダタではなく、地面に転がる囚人だった。
鬼は囚人の首根を貫く。囚人に抵抗する術はなく、できる術はなく、無気力に四肢をぶら下げた。そうして囚人は捕えたご馳走を食わず、大樹の幹を上って去っていく。
第4層にいた頃、鬼の習性を嫌と言うほど味わっているが、囚人を食わずにに持ち帰るのは信じられなかった。
周辺では雨の如く降る囚人をどこからか現れた鬼が捕まえており、どの鬼にもカンダタには見向きもしていない。
第7と第4では鬼の性質が違うのだろうか。
どちらにしろ好機だ。
躓いたが、足をくじいたわけではないのでまた走り出す。
点々と転がる囚人の死体を避けて進む。
至る所から悪臭が立ち込める。湿った熱気も増していた。腐った肉の匂いを鬼はひかれているようで、どの鬼もカンダタは眼中にないようだった。
そのまま走り続け、もう少しで着くといったところでカンダタの頭上で影が流れた。鬼である事は分かりきっているのだが、その鬼は地面に転がる囚人たちには興味を示さず、その上カンダタと同じ方向に進んでいる。
声が届くと信じ、声を上げる。
「ケイっ!鬼が行った!」
きっと届く。そう信じてみたが、聞こえてきたのは光弥の悲鳴だった。
エレベーターまで走り切り、先にカンダタが目に入ったのは重なって倒れる光弥とケイだった。カンダタが信じた可能性は呆気なく散っていた。
次に鬼と瑠璃を探す。何故か見つからない。
「上だ!」
光弥が叫びながら指を指す。指の先を追って見上げれば、枝の上で鬼が佇んでいる。その両脇には瑠璃と清音が抱えられていた。
「ガンダダさんっ!」
清音が助けを求める。反対側にいる瑠璃は糸が切れた人形のようにうなだれていた。
胸に使えていたしこりの正体が明かされた最悪な気分だ。
カンダタは2人を取り戻そうと幹を登り始める。
鬼は2人を抱え、枝から隣の体重と飛び移動する。猿よりも早い鬼の足さばきに登り始めたカンダタが追いつくはずがなかった。
幹から大枝へと移った時には鬼の姿は米粒ぐらいの大きさになっていた。あんなに遠くに行かれてはどうやっても追いつかない。
それだったら米粒になった鬼の行く先を見逃すまいと瞳孔を開き、目蓋を下ろさずに見つめていた。
瑠璃たちを攫った鬼は次々と大樹を飛び移り、そしてダクトのある所まで来ると吸い込まれるようにして中へと消える。
走り出したのと同時に星の数ほどもある果実から腐った囚人が次々と地面に落下していった。カンダタが果実の真下を通れば、それに合わせるようにして囚人が転がってくる。
土に寝転ぶ囚人たちは落下した打撃で身体の部位を破損し、頭部から落ちたものは顔面が面影もなく潰れていた。
砕けた頭蓋骨から脳汁・脳みその一部が垂れる。脚部と胸部も同じようなもので、脆くなった肉から折れた骨、千切れた血管、神経が伸びていた。
破損が酷い囚人たちは飢えた獣並みの貪欲さを持っていた。同じ人だと言うのに隣の囚人の肉を求め、共食いを始めたのだ。
互いが互いの膨らんだ腹を求め、歯をたて、爪を食い込ませる。
そうした光景を横目で眺めていたら足元が留守になってしまった。左側から伸びてきた手がカンダタの脚を掴んできたのだ。
全力で走る脚を囚人は掴みきれず、指と足首が掠める程度にしかならなかった。しかし、躓くには充分だった。
足元から崩れ、咄嗟に手をつく。刹那、カンダタの頭上で大きな影が通っていた。
大樹と果実の合間を影が飛び交う。影が持つ金目の眼光をカンダタは見逃さなかった。
すぐに立ち上がる。しかし、頭上にいた影がカンダタの背後に降りた。顎から涎をたらし、喉からは女性の悲鳴のような、金属音のような金切り声を鳴らし、鬼は牙を向く。
鋭い鉤爪は間合に入っている。いくら全速力で駆けても逃げきれない。
鋭い鉤爪が弧を描く。捉えられたのは一番近くにいたカンダタではなく、地面に転がる囚人だった。
鬼は囚人の首根を貫く。囚人に抵抗する術はなく、できる術はなく、無気力に四肢をぶら下げた。そうして囚人は捕えたご馳走を食わず、大樹の幹を上って去っていく。
第4層にいた頃、鬼の習性を嫌と言うほど味わっているが、囚人を食わずにに持ち帰るのは信じられなかった。
周辺では雨の如く降る囚人をどこからか現れた鬼が捕まえており、どの鬼にもカンダタには見向きもしていない。
第7と第4では鬼の性質が違うのだろうか。
どちらにしろ好機だ。
躓いたが、足をくじいたわけではないのでまた走り出す。
点々と転がる囚人の死体を避けて進む。
至る所から悪臭が立ち込める。湿った熱気も増していた。腐った肉の匂いを鬼はひかれているようで、どの鬼もカンダタは眼中にないようだった。
そのまま走り続け、もう少しで着くといったところでカンダタの頭上で影が流れた。鬼である事は分かりきっているのだが、その鬼は地面に転がる囚人たちには興味を示さず、その上カンダタと同じ方向に進んでいる。
声が届くと信じ、声を上げる。
「ケイっ!鬼が行った!」
きっと届く。そう信じてみたが、聞こえてきたのは光弥の悲鳴だった。
エレベーターまで走り切り、先にカンダタが目に入ったのは重なって倒れる光弥とケイだった。カンダタが信じた可能性は呆気なく散っていた。
次に鬼と瑠璃を探す。何故か見つからない。
「上だ!」
光弥が叫びながら指を指す。指の先を追って見上げれば、枝の上で鬼が佇んでいる。その両脇には瑠璃と清音が抱えられていた。
「ガンダダさんっ!」
清音が助けを求める。反対側にいる瑠璃は糸が切れた人形のようにうなだれていた。
胸に使えていたしこりの正体が明かされた最悪な気分だ。
カンダタは2人を取り戻そうと幹を登り始める。
鬼は2人を抱え、枝から隣の体重と飛び移動する。猿よりも早い鬼の足さばきに登り始めたカンダタが追いつくはずがなかった。
幹から大枝へと移った時には鬼の姿は米粒ぐらいの大きさになっていた。あんなに遠くに行かれてはどうやっても追いつかない。
それだったら米粒になった鬼の行く先を見逃すまいと瞳孔を開き、目蓋を下ろさずに見つめていた。
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