糸と蜘蛛

犬若丸

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6章 盤上の外で蜘蛛喰い蝶は笑う

目覚めて夢の中 2

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 外の光が光弥を照らす。眩しく目を閉じるも何も見えないのが不安で目蓋を上げる。
 光に慣れてくる。塊人の残骸が有象無象ところがあっていると想像したが、それらしきものが見当たらない。全て分解された後の静かな寝殿造の正面に立つ。
 憂いがなくなった自分の居場所は波紋の1つもない。静寂の城と対面して桟橋に立っているのはケイだ。
 手に持っているのは鉛色の刀。塊人が使っていたものを拾ったのだろう。
 清音が欲しがっている折れた刃は見当たらない。
 ケイの胸や腰から血が流れ、足元に溜まっている。同じ傷口から蛍火に似た淡い光の魂が少量ながらも漏れている。
 核が傷ついたせいで形を保つための原動力が少しずつ漏れているのだろう。
 清音が刺した跡はケイを消滅するまでには至らないものの致命傷に近いようだった。
 白鬼が瓦屋根を伝い降りてきて、清音と光弥の隣に1体ずつ立つ。白鬼の頭には黒蝶が止まっていた。
 「作戦聞いてもいい?」
 斜め前にいる清音に小声で尋ねる。彼女はその問いに何も答えなかった。
 考えはないようだ。光弥の後ろにいる少年を一瞥する。戦闘とか血と肉の乱闘とか少年漫画のような展開に赤眼の少年が心踊るわけでもなく、まだ続くであろう暴力沙汰に固まり震えている。
 これはまた落ち着くまで隠れていたほうがよさそうだ。
 腹の内で光弥が企んでいると隣に立っていた白鬼の鉤爪が光弥の衣服に引っ掛けるとケイに向けて投げた。
 悲鳴すらも上がらないほどの一瞬。身体が回転しながら弧を描き、桟橋に無様に転がった。
 光弥を投げたのは蝶男の指示だ。彼は光弥が逃げるとしていたのも見抜いたのだろう。そんな光弥をケイは真っ先に狙ってくるまでが蝶男の算段だ。
 鉛色の刀身が反射して映る。光弥は両腕を頭に回し、守りのポーズをとる。
 蝶男の算段や光弥の想像とは裏腹にケイは光弥を跨いでいく。
 こちらに見向きもしなかったケイの後ろ姿を見ると衣服に見え隠れし、キラリと反射するものがあった。
 「腰の後ろだ!そこにある!」
 大声を出してき清音たちに伝える。眼中にのなかったケイはその掛け声に驚き、振り返る。
 それが図星だと悟った清音は内心ほくそ笑んだ。
 2体の白鬼が一斉にケイに襲いかかった。
 飛びかかる白鬼に身を低くして躱し、清音と赤眼の少年はその隙をかい潜り、光弥のもとへと急ぐ。
 「漂流場に行くよ」
 光弥の腕を掴むみ、早口で伝えると力ずくで立ち上がらせる。
 「でもケイは?」
 「白鬼に任せる。私たちは次の段階に行く」
 少年への返答にも清音は冷静であった。これは蝶男が受け答えしている。
 光弥たちは急ぎ、桟橋から小舟に乗る。ゆっくりと水面を滑り出す小舟に揺らされながら白鬼とケイの戦闘を眺める。
 ケイにしてはあっさりとしすぎているような気が、それを声は口に出さなかった。
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