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7章 赤い珠が映す空想未来
赤い珠玉について 5
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言いつけを初めて破った胸の高鳴りは別のものに変わって、今すぐ影弥のところに帰りたくなった。
ひそひそ話があちらこちらで聞こえてきて、迷いながら宛もなく足は前進んだ。
妹の手がかりを探しに来たのだと腹をを括って一番高く聞こえるひそひそ声がする家の中を選び、木目の壁をすり抜けた。
そこでは男女が痴態を晒し合っていた。あまりにも強烈な絵面に紅玉は短く低い悲鳴をあげて逃げるように外に戻った。
影弥が近寄らせないわけだ。ここには暴力と本能しかない。こんなところに妹はいない。
鼻息荒げて興奮して入った場所は湿っぽくて迷路のように怖い。
言いつけを破ったのは初めてだったが、独りになったのも初めてだった。
ここだよという場所を決めて待てば必ず影弥が帰ってきた。影弥は嘘を言えないが、約束を破らない。だから紅玉も安心できた。
対して紅玉は嘘も言えるし、言いつけも破った。
この世は因果応報だとどこかで聞いた。
それが事実ならもう二度と影弥に会えない気がした。
「かげぇ」
走るのをやめて、蹲って震えた小さな声で呼ぶ。
この世で紅玉を認識できるのは唯一影弥だけだ。道の真ん中にある石でさえ避けられるのに通行人は紅玉の背中を蹴るようにしてすり抜けていく。
これがはじめての孤独だ。
陰気でじめじめで誰も助けてくれない。
いよいよ涙が出そうになった。弱い自分なんて見せたくないが、どうせ誰も見てくれないなら来てもいいではないか。
世界のどこにも行けない異物がどこにも行けずにぽつぽつと泣いた。
悲しみいっぱいで他の思考は何もなかった。そこに細い糸のような光が頭の中で走った。赤色をした光だった。
それははっきりとした妹の手がかりで、こんなにも強く妹を感じたのは腹の中で死んで以来初めてだった。
勢いよく顔を上げて、手掛かりとなる糸を目線で追った。
手掛かりを持っていたのは男で、そいつは紅玉に向かって歩いてきていた。幽霊なのに金縛りのように動けなくなったのはそいつが血のように赤い瞳をしていたからだった。
長い前髪の影が目にかかってもその瞳は目立っている。
赤い瞳をまともに見れずに上げる目線を地面に戻す。
あの色は血と同じ色だ。紅玉はよくそれを知っている。母の体内から出ていた。
赤は終わりの色だ。妹が傍にいて腹の中で子守唄を聴いていた。それを終わらせた色だった。
その色を持った男が紅玉の横を通り過ぎていく。
この時ばかりは自分が幽霊であることを感謝した。あの瞳に自分が映る事はないのだから。
その男が去るまで身体を小さくさせてひたすらに地面を見ていた。
今までにない妹の手掛かりだと思い出したのは男が去ってからずいぶんと後で恐怖の束縛から解けて振り返った時は男の背中を小さくなっていた。
追いかけないと。妹の手掛かりだ。
その背中を追いかけて必死に走って、子供の足で走って、走って、走って諦めた。
堪らなく泣きたくなってその場に留まって涙を隠すようにしゃがんだ。
ひそひそ話があちらこちらで聞こえてきて、迷いながら宛もなく足は前進んだ。
妹の手がかりを探しに来たのだと腹をを括って一番高く聞こえるひそひそ声がする家の中を選び、木目の壁をすり抜けた。
そこでは男女が痴態を晒し合っていた。あまりにも強烈な絵面に紅玉は短く低い悲鳴をあげて逃げるように外に戻った。
影弥が近寄らせないわけだ。ここには暴力と本能しかない。こんなところに妹はいない。
鼻息荒げて興奮して入った場所は湿っぽくて迷路のように怖い。
言いつけを破ったのは初めてだったが、独りになったのも初めてだった。
ここだよという場所を決めて待てば必ず影弥が帰ってきた。影弥は嘘を言えないが、約束を破らない。だから紅玉も安心できた。
対して紅玉は嘘も言えるし、言いつけも破った。
この世は因果応報だとどこかで聞いた。
それが事実ならもう二度と影弥に会えない気がした。
「かげぇ」
走るのをやめて、蹲って震えた小さな声で呼ぶ。
この世で紅玉を認識できるのは唯一影弥だけだ。道の真ん中にある石でさえ避けられるのに通行人は紅玉の背中を蹴るようにしてすり抜けていく。
これがはじめての孤独だ。
陰気でじめじめで誰も助けてくれない。
いよいよ涙が出そうになった。弱い自分なんて見せたくないが、どうせ誰も見てくれないなら来てもいいではないか。
世界のどこにも行けない異物がどこにも行けずにぽつぽつと泣いた。
悲しみいっぱいで他の思考は何もなかった。そこに細い糸のような光が頭の中で走った。赤色をした光だった。
それははっきりとした妹の手がかりで、こんなにも強く妹を感じたのは腹の中で死んで以来初めてだった。
勢いよく顔を上げて、手掛かりとなる糸を目線で追った。
手掛かりを持っていたのは男で、そいつは紅玉に向かって歩いてきていた。幽霊なのに金縛りのように動けなくなったのはそいつが血のように赤い瞳をしていたからだった。
長い前髪の影が目にかかってもその瞳は目立っている。
赤い瞳をまともに見れずに上げる目線を地面に戻す。
あの色は血と同じ色だ。紅玉はよくそれを知っている。母の体内から出ていた。
赤は終わりの色だ。妹が傍にいて腹の中で子守唄を聴いていた。それを終わらせた色だった。
その色を持った男が紅玉の横を通り過ぎていく。
この時ばかりは自分が幽霊であることを感謝した。あの瞳に自分が映る事はないのだから。
その男が去るまで身体を小さくさせてひたすらに地面を見ていた。
今までにない妹の手掛かりだと思い出したのは男が去ってからずいぶんと後で恐怖の束縛から解けて振り返った時は男の背中を小さくなっていた。
追いかけないと。妹の手掛かりだ。
その背中を追いかけて必死に走って、子供の足で走って、走って、走って諦めた。
堪らなく泣きたくなってその場に留まって涙を隠すようにしゃがんだ。
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