615 / 644
7章 赤い珠が映す空想未来
空想未来に向かって 1
しおりを挟む
なるべく、人目につかないように野宿をするのが常であるが、そうしない場合もある。紅玉の情緒が危うい時だ。
宿を一人分取り、一人分しかない布団で紅玉を寝かせた。
森林を抜けた後、紅玉はまた意識が混乱し、なんとか宿に着いたものの布団に寝ると緊張の糸が切れ、悪夢へと沈んだ。
夢の中ではあの三人が笑っていた。私は死んだままで。
それが黒く塗りつぶされて、三人を覆い隠す。
私は隠れた三人を探して走り出したが、代わりに現れたのは影弥に似た男で、こいつが蝶男だと知った。
夢の中で初めて対面した蝶男は影弥とそっくりな顔なのに影弥とは全く似ていない。そんな矛盾した第一印象だった。影弥と同じように笑う顔は不気味で気色悪かった。
私の妹をどこにあったの。
蝶男は問いかけに答えずに手を差し伸べた。私は苛立って手を振り払う。
瞬時に流れたのは悪夢と幸福が交差するような最悪な気分にさせる未来の予測。私の目では捉え切れない数々の夢が無理矢理、私の頭に流れてくる。
人里離れた海の荒屋で過ごす二人。首を切って自殺する赤い瞳。
産ぶ声を上げる赤子を抱きしめる妹。その隣には赤い瞳の男。
血塗れになった赤子を裂かれた腹から取り上げる死んだ男。
響く赤子の泣き声。
それらが私の脳裏に焼きついて離れなかった。
悪夢の最後には「紅柘榴」と呼ぶ赤い瞳の男の声がした。
目が覚めると早朝の鳥が鳴いていた。
どこから鳴いているのか目を回して見ても天井しか見えなかった。
いつもの野宿ではないと焦りそうになるも影弥が宿を取ったのだとすぐに思い出した。
「七日も寝ていたんだよ」
部屋の片隅で影弥が紅玉の目覚めを持っていた。
眠るはずのない幽霊が七日間の夢を見ていた。驚くことなのだが、不思議とそういう感情はなかった。寧ろ冷静な部分が強かった。
「七日もあったら収穫はあったよね?」
妹の居場所がわかったのだ。塀の観察とか、人の出入りとか、蝶男か妹を探すとか、やれることはたくさんあったはずだ。
しかし、影弥が気まずそうに俯いたので何もやっていないのだと分かった。
「七日もあれば色々できたじゃん」
「こうが心配だったんだよ」
呆れてあるが、紅玉の身を案じてくれるのはこの世で
で影弥しかいないので責めるのができなかった。
目を閉じ、大きく深呼吸をした。そして目を開け、天井見つめたまま影弥に話す。
「心配することないわ。夢を見てたの」
夢の中で見たものを淡々と話した。
「あれは未来だった」
あの夢が未来で起きる出来事だと確信して言えるのか紅玉もわからなかった。内容はほぼ抽象的なもので、人物の背景も真っ白だった。
曖昧でもあれは未来だ。未来で、紅玉の妹は赤目の男との間に赤子を作る。そして二人を失う。しかし、もう一つの未来もあって、何も失わない未来だ。紅玉が見た夢では別々の二つの未来が同時に存在していた。
「それは可能性だよ」
夢の話を一通り話を終えると影弥は部屋の隅に居座ったまま解説する。
「こうが見たのは確かに未来だ。糸の能力の一つだよ。過去から未来までは一本で繋がってるからね」
「本当になんでもありなんだね」
糸とはなんなのかと影弥に聞いたことがある。影弥はそれを想像の力だと答えた。紅玉ができると思えば可能になってしまうのだと。
なんだか曖昧で半ば信じていなかった。が、未来が見えると言う突拍子もない事象が真実味がした。
宿を一人分取り、一人分しかない布団で紅玉を寝かせた。
森林を抜けた後、紅玉はまた意識が混乱し、なんとか宿に着いたものの布団に寝ると緊張の糸が切れ、悪夢へと沈んだ。
夢の中ではあの三人が笑っていた。私は死んだままで。
それが黒く塗りつぶされて、三人を覆い隠す。
私は隠れた三人を探して走り出したが、代わりに現れたのは影弥に似た男で、こいつが蝶男だと知った。
夢の中で初めて対面した蝶男は影弥とそっくりな顔なのに影弥とは全く似ていない。そんな矛盾した第一印象だった。影弥と同じように笑う顔は不気味で気色悪かった。
私の妹をどこにあったの。
蝶男は問いかけに答えずに手を差し伸べた。私は苛立って手を振り払う。
瞬時に流れたのは悪夢と幸福が交差するような最悪な気分にさせる未来の予測。私の目では捉え切れない数々の夢が無理矢理、私の頭に流れてくる。
人里離れた海の荒屋で過ごす二人。首を切って自殺する赤い瞳。
産ぶ声を上げる赤子を抱きしめる妹。その隣には赤い瞳の男。
血塗れになった赤子を裂かれた腹から取り上げる死んだ男。
響く赤子の泣き声。
それらが私の脳裏に焼きついて離れなかった。
悪夢の最後には「紅柘榴」と呼ぶ赤い瞳の男の声がした。
目が覚めると早朝の鳥が鳴いていた。
どこから鳴いているのか目を回して見ても天井しか見えなかった。
いつもの野宿ではないと焦りそうになるも影弥が宿を取ったのだとすぐに思い出した。
「七日も寝ていたんだよ」
部屋の片隅で影弥が紅玉の目覚めを持っていた。
眠るはずのない幽霊が七日間の夢を見ていた。驚くことなのだが、不思議とそういう感情はなかった。寧ろ冷静な部分が強かった。
「七日もあったら収穫はあったよね?」
妹の居場所がわかったのだ。塀の観察とか、人の出入りとか、蝶男か妹を探すとか、やれることはたくさんあったはずだ。
しかし、影弥が気まずそうに俯いたので何もやっていないのだと分かった。
「七日もあれば色々できたじゃん」
「こうが心配だったんだよ」
呆れてあるが、紅玉の身を案じてくれるのはこの世で
で影弥しかいないので責めるのができなかった。
目を閉じ、大きく深呼吸をした。そして目を開け、天井見つめたまま影弥に話す。
「心配することないわ。夢を見てたの」
夢の中で見たものを淡々と話した。
「あれは未来だった」
あの夢が未来で起きる出来事だと確信して言えるのか紅玉もわからなかった。内容はほぼ抽象的なもので、人物の背景も真っ白だった。
曖昧でもあれは未来だ。未来で、紅玉の妹は赤目の男との間に赤子を作る。そして二人を失う。しかし、もう一つの未来もあって、何も失わない未来だ。紅玉が見た夢では別々の二つの未来が同時に存在していた。
「それは可能性だよ」
夢の話を一通り話を終えると影弥は部屋の隅に居座ったまま解説する。
「こうが見たのは確かに未来だ。糸の能力の一つだよ。過去から未来までは一本で繋がってるからね」
「本当になんでもありなんだね」
糸とはなんなのかと影弥に聞いたことがある。影弥はそれを想像の力だと答えた。紅玉ができると思えば可能になってしまうのだと。
なんだか曖昧で半ば信じていなかった。が、未来が見えると言う突拍子もない事象が真実味がした。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる