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7章 赤い珠が映す空想未来
一寸先は深淵 3
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この期間、影弥が町を見回り、紅玉が山で待つ。変に行動しないほうがいいと紅玉は解釈していた。
秋が終わりかけて冬が近づく。
変化は突然にやってきた。
残り少なくなった枯れた木の葉を眺めながら目を閉じて感じられない風を感じながら未来視に集中していた。
表裏一体の未来がふう、と風が吹いて表が裏となった。
暗闇に浮かび上がったのは四角い檻の中に窮屈そうに押し込められた赤眼の男とそれを見下ろす蝶男。
目を覚ますといつの間にか太陽が傾いていた。夕暮れになると影弥が戻ってくるはずが未だにいない。
未来が変わった。しかも最悪なほうだ。影弥は戻ってこない。
町へいこう。
紅玉がそう行動するのも必然であり、影弥を探そうと駆け出した。
山道を降り、走り続けると影弥の姿が見えた。
「かげ!」
一先ず、影弥が無事だとわかり、泣きそうな声で呼ぶ。
今までにない紅玉の形相に影弥はぎょっと驚いた。彼女が興奮しているのが分かったので膝をつき迎い入れる。
「何かあったのかい」
「未来が、未来が、悪いほうに」
「そうか、先に深呼吸して、落ち着いて」
紅玉は混乱し、伝えたいこともわからない。それは本人も自覚していたので言う通りに呼吸を整え、頭を整理する。次に先ほど変わった未来を影弥に伝えた。
「どうしよう、作戦が失敗したんだ。やっぱり駄目だったんだ。私じゃ助けられないんだ。だって私は」
落ち着きだした脈がまた速くなったので影弥は紅玉の背中を擦るふりをする。
「こうは何も間違っていないよ。君の判断は正しい」
「だったらなんで彼が俺の中にいたのよ!」
影弥の手をすり抜けて紅玉は睨みながら後ろにさがった。
「怒鳴っても解決しない」
激昂する紅玉に対して影弥は感情の波はなく冷静だ。その分、彼の言い分が正しいのだと思い直せた。
「ほかに見たものは」
問いかけに黙って首を振る。
「紅柘榴の未来が見えたかい」
「子供を抱いていた。でも父親はいなかった」
「そうか。ならまだ最悪ではないだろうね」
「もしかして蝶男はとっくに私たち気がついて、それで考えも読めて、それで噂よりも紅柘榴たちを優先したのかな」
「あり得るかもね。けど今は確かな事象を考えるべきだよ」
確かな、事象。
「未来では紅柘榴は死んでいない。そうだろう」
まだ希望はあるのだと影弥は言い聞かせるようだが、赤眼の男を口に出さない。それでは、彼は犠牲になると言っているようなものではないかと疑いたくなった。
「その未来は今夜、起きるのかい」
影弥の問いはまだ続く。紅玉は疑いながらも頷く。
うまく言葉で言い表せないが、視覚だけでなく、肌で感じた。それは近い未来ということだ。
「なら、紅柘榴を救出するなら今だね」
「え」
「そうだろう。蝶男は噂よりも赤眼の男を注視した。絶好の機会とも言える」
犠牲にするような言い方をしているのではない。犠牲にしろと言っているのだ。影弥が言いたいことがわかり、紅玉はぎゅっと袖を握った。
「でも、それだと彼が死ぬ」
死ぬならまだ良いほうだ。死んだその後もその人の魂は蝶男に囚われ続ける。それこそ永久に。
紅玉の発言に影弥が心底不思議そうに首を傾げた。
「これまでの俺たちは紅柘榴を助ける為のものだろう。それにこうは彼を嫌っていたじゃないか」
「そうだけど、そうだけど」
どんな人でも見殺しはできないとかそういう倫理で反論したいわけじゃない。
「駄目なんだよ。それだと駄目なんだよ。紅柘榴には必要なんだよ」
「どうして、どう必要になる」
「それは」
口籠もってしまう。だって、紅玉の未来視で一番妹が笑っていたのはあの男の隣なのだ。
けど、それを言葉にどう表現すればいいのか。色々なことが起きて頭の中がごちゃごちゃしている。
「それは生きるのに必要ではないだろう」
影弥に問われ、正直に「はい」と答えてしまいそうになる。
そう答えてしまえば影弥は赤眼の男を切り捨ててしまう。
「わからない」
それは「はい」と言っているようなもので影弥はやはり赤眼の男を切り捨てる。
秋が終わりかけて冬が近づく。
変化は突然にやってきた。
残り少なくなった枯れた木の葉を眺めながら目を閉じて感じられない風を感じながら未来視に集中していた。
表裏一体の未来がふう、と風が吹いて表が裏となった。
暗闇に浮かび上がったのは四角い檻の中に窮屈そうに押し込められた赤眼の男とそれを見下ろす蝶男。
目を覚ますといつの間にか太陽が傾いていた。夕暮れになると影弥が戻ってくるはずが未だにいない。
未来が変わった。しかも最悪なほうだ。影弥は戻ってこない。
町へいこう。
紅玉がそう行動するのも必然であり、影弥を探そうと駆け出した。
山道を降り、走り続けると影弥の姿が見えた。
「かげ!」
一先ず、影弥が無事だとわかり、泣きそうな声で呼ぶ。
今までにない紅玉の形相に影弥はぎょっと驚いた。彼女が興奮しているのが分かったので膝をつき迎い入れる。
「何かあったのかい」
「未来が、未来が、悪いほうに」
「そうか、先に深呼吸して、落ち着いて」
紅玉は混乱し、伝えたいこともわからない。それは本人も自覚していたので言う通りに呼吸を整え、頭を整理する。次に先ほど変わった未来を影弥に伝えた。
「どうしよう、作戦が失敗したんだ。やっぱり駄目だったんだ。私じゃ助けられないんだ。だって私は」
落ち着きだした脈がまた速くなったので影弥は紅玉の背中を擦るふりをする。
「こうは何も間違っていないよ。君の判断は正しい」
「だったらなんで彼が俺の中にいたのよ!」
影弥の手をすり抜けて紅玉は睨みながら後ろにさがった。
「怒鳴っても解決しない」
激昂する紅玉に対して影弥は感情の波はなく冷静だ。その分、彼の言い分が正しいのだと思い直せた。
「ほかに見たものは」
問いかけに黙って首を振る。
「紅柘榴の未来が見えたかい」
「子供を抱いていた。でも父親はいなかった」
「そうか。ならまだ最悪ではないだろうね」
「もしかして蝶男はとっくに私たち気がついて、それで考えも読めて、それで噂よりも紅柘榴たちを優先したのかな」
「あり得るかもね。けど今は確かな事象を考えるべきだよ」
確かな、事象。
「未来では紅柘榴は死んでいない。そうだろう」
まだ希望はあるのだと影弥は言い聞かせるようだが、赤眼の男を口に出さない。それでは、彼は犠牲になると言っているようなものではないかと疑いたくなった。
「その未来は今夜、起きるのかい」
影弥の問いはまだ続く。紅玉は疑いながらも頷く。
うまく言葉で言い表せないが、視覚だけでなく、肌で感じた。それは近い未来ということだ。
「なら、紅柘榴を救出するなら今だね」
「え」
「そうだろう。蝶男は噂よりも赤眼の男を注視した。絶好の機会とも言える」
犠牲にするような言い方をしているのではない。犠牲にしろと言っているのだ。影弥が言いたいことがわかり、紅玉はぎゅっと袖を握った。
「でも、それだと彼が死ぬ」
死ぬならまだ良いほうだ。死んだその後もその人の魂は蝶男に囚われ続ける。それこそ永久に。
紅玉の発言に影弥が心底不思議そうに首を傾げた。
「これまでの俺たちは紅柘榴を助ける為のものだろう。それにこうは彼を嫌っていたじゃないか」
「そうだけど、そうだけど」
どんな人でも見殺しはできないとかそういう倫理で反論したいわけじゃない。
「駄目なんだよ。それだと駄目なんだよ。紅柘榴には必要なんだよ」
「どうして、どう必要になる」
「それは」
口籠もってしまう。だって、紅玉の未来視で一番妹が笑っていたのはあの男の隣なのだ。
けど、それを言葉にどう表現すればいいのか。色々なことが起きて頭の中がごちゃごちゃしている。
「それは生きるのに必要ではないだろう」
影弥に問われ、正直に「はい」と答えてしまいそうになる。
そう答えてしまえば影弥は赤眼の男を切り捨ててしまう。
「わからない」
それは「はい」と言っているようなもので影弥はやはり赤眼の男を切り捨てる。
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