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7章 赤い珠が映す空想未来
一寸先は深淵 5
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影弥が紅玉を掴んで庇うように自身の背後に引っ張ると手にしていた刀で上から下までを振り下げた。
どこから現れたのかわからない影弥の斬撃でも男の子はそういった後方に退がって鋭い刃から避ける。
影弥は人食い塀にいたのか、そこから走ってきたのか。
様々な疑問が浮かんで走って過ぎっていく中で大きく目立った疑問は影弥が紅玉の手首を掴んでいることだ。
「かげ、どう」
聞こうとしたときには影弥が後ろ手で紅玉を押した。
そのせい紅玉は尻持ちをして、対して影弥は刀を構えて前進した。ほぼ同時に男の子が野獣のような凶暴さでこちらへと覆い被さってこようとする。
飛びかかるようにして襲ってきたので男の子の胴体はがら空きであった。見ればわかる隙を影弥が見逃すはずもなく、迷いなく胴を一文字に斬った。
胴体の切り口から細やかな蝶々が群がって影弥を覆う。
紅玉は影弥にしがみつき、黒蝶が渦を巻く中でなんとか目を開けようと努める。
見たかったのは斬られて転がった男の子だ。その子は野獣の凶暴さを忘れ、本来の自分を取り戻し、なぜ自分が斬られているのか困惑しているようだった。
「くそが」
影弥が紅玉よりも悪い悪態をつくと懐からあるものを取り出した。それは鬼灯と形が似ていた。
それを握り潰すと薄皮の中にあった玉が月光よりも強い光を放ち、一時的に夜を取り除いた。
紅玉たちを取り巻くように飛んでいた全ての黒蝶がぱらぱらと枯葉のように地に落ちた。
影弥は紅玉の引っ張った。人食い塀を背にするようにその場から逃げる。
逃げる一択しかないと紅玉もわかっていたが、後ろ髪を引かれる気持ちで人食い塀と男の子を見ていた。
男の子はどこから拐ってきたのか。紅玉に触れられたと言うことはもう命を失ったのだろう。それでいて、魂を蝶男に囚われ、影弥に斬られた。
それを考えると心苦しくなる。
また、人食い塀から逃げている。妹を救い出せなかった。あの未来視が正しいなら赤眼の男も蝶男の手の中に落ちた。もう頼れない。
それで、悔しくなる。
「ねぇ、戻ろう、今なら間に合う」
「こうを失うわけにいかない」
弱々しい紅玉の頼みも一蹴されてしまった。それ以上は強く言えなかった。
影弥が紅玉に触れられるのは影弥が現世での器を捨てたからだ。そうしたのは紅玉が黒蝶に捕まりそうになったからだ。
器を用意するのに多くの時間と大変な手間がかかるのを知っている。
紅玉が命を差し出す覚悟で挑めば影弥がそれ以上のものを差し出そうとする。
わかっていたはずなのにわかってあげられなかった。
悔しさをまた一つ積み重ね、夜の森を走る。追ってきているのは夜色に混ざりやすい黒い鬼で、金切り声がどこからか聞こえてくる。
手を離せば速く走れるのに影弥は紅玉を離さないと強固な意志で握っていた。
闇雲に逃げているわけではなく、影弥あるものを思い出していた。
人食い塀の近くには一日で誰もいなくなった廃村がある。民家だけが残るそこには根無し生活をしていた一つの家族が住み着いている。
それは紅玉も知っており、影弥の考えることも悟ってしまった。
「駄目だよ、駄目」
影弥は紅玉を無視する。
廃村が見えてきた。入り口には男の子よりも年下の幼女がある人を待っていた。
幼女に紅玉たちの姿は見えておらず、待ち人を憂う顔の横を通り過ぎる。
「にいちゃん」
通り過ぎてから二、三歩で幼女が呟いた。
見なければいいのに紅玉は幼女に釘付けになりながらも引っ張られ走っていた。
幼女が呟き、見ていたのは例の男の子で、兄弟の絆のせいか幼女にはその子が見えていた。
兄と呼ばれたその子は幼い妹を人でする意識できずに滝のようなよだれを流しながら親指を噛む。幼女が気づいたのだろう。大事な兄の腹に腸が出てきそうなほどの傷があることを。
再会できた感動は一気に青褪めて、兄に駆け寄ろうとしたその刹那に鬼の鉤爪が幼女の首を貫いた。
金切り声の騒ぎにひそんでいた父親が出てきて、自身の娘が狼のような化け物に食われてる様を見せられ激昂する。
化け物に戸惑い、戦い、食われる夜の風景が遠ざかっていく。
紅玉は怒り悲しむ感情を抑えるのに必死で、呆然としたまま影弥に引っ張られていた。
どこから現れたのかわからない影弥の斬撃でも男の子はそういった後方に退がって鋭い刃から避ける。
影弥は人食い塀にいたのか、そこから走ってきたのか。
様々な疑問が浮かんで走って過ぎっていく中で大きく目立った疑問は影弥が紅玉の手首を掴んでいることだ。
「かげ、どう」
聞こうとしたときには影弥が後ろ手で紅玉を押した。
そのせい紅玉は尻持ちをして、対して影弥は刀を構えて前進した。ほぼ同時に男の子が野獣のような凶暴さでこちらへと覆い被さってこようとする。
飛びかかるようにして襲ってきたので男の子の胴体はがら空きであった。見ればわかる隙を影弥が見逃すはずもなく、迷いなく胴を一文字に斬った。
胴体の切り口から細やかな蝶々が群がって影弥を覆う。
紅玉は影弥にしがみつき、黒蝶が渦を巻く中でなんとか目を開けようと努める。
見たかったのは斬られて転がった男の子だ。その子は野獣の凶暴さを忘れ、本来の自分を取り戻し、なぜ自分が斬られているのか困惑しているようだった。
「くそが」
影弥が紅玉よりも悪い悪態をつくと懐からあるものを取り出した。それは鬼灯と形が似ていた。
それを握り潰すと薄皮の中にあった玉が月光よりも強い光を放ち、一時的に夜を取り除いた。
紅玉たちを取り巻くように飛んでいた全ての黒蝶がぱらぱらと枯葉のように地に落ちた。
影弥は紅玉の引っ張った。人食い塀を背にするようにその場から逃げる。
逃げる一択しかないと紅玉もわかっていたが、後ろ髪を引かれる気持ちで人食い塀と男の子を見ていた。
男の子はどこから拐ってきたのか。紅玉に触れられたと言うことはもう命を失ったのだろう。それでいて、魂を蝶男に囚われ、影弥に斬られた。
それを考えると心苦しくなる。
また、人食い塀から逃げている。妹を救い出せなかった。あの未来視が正しいなら赤眼の男も蝶男の手の中に落ちた。もう頼れない。
それで、悔しくなる。
「ねぇ、戻ろう、今なら間に合う」
「こうを失うわけにいかない」
弱々しい紅玉の頼みも一蹴されてしまった。それ以上は強く言えなかった。
影弥が紅玉に触れられるのは影弥が現世での器を捨てたからだ。そうしたのは紅玉が黒蝶に捕まりそうになったからだ。
器を用意するのに多くの時間と大変な手間がかかるのを知っている。
紅玉が命を差し出す覚悟で挑めば影弥がそれ以上のものを差し出そうとする。
わかっていたはずなのにわかってあげられなかった。
悔しさをまた一つ積み重ね、夜の森を走る。追ってきているのは夜色に混ざりやすい黒い鬼で、金切り声がどこからか聞こえてくる。
手を離せば速く走れるのに影弥は紅玉を離さないと強固な意志で握っていた。
闇雲に逃げているわけではなく、影弥あるものを思い出していた。
人食い塀の近くには一日で誰もいなくなった廃村がある。民家だけが残るそこには根無し生活をしていた一つの家族が住み着いている。
それは紅玉も知っており、影弥の考えることも悟ってしまった。
「駄目だよ、駄目」
影弥は紅玉を無視する。
廃村が見えてきた。入り口には男の子よりも年下の幼女がある人を待っていた。
幼女に紅玉たちの姿は見えておらず、待ち人を憂う顔の横を通り過ぎる。
「にいちゃん」
通り過ぎてから二、三歩で幼女が呟いた。
見なければいいのに紅玉は幼女に釘付けになりながらも引っ張られ走っていた。
幼女が呟き、見ていたのは例の男の子で、兄弟の絆のせいか幼女にはその子が見えていた。
兄と呼ばれたその子は幼い妹を人でする意識できずに滝のようなよだれを流しながら親指を噛む。幼女が気づいたのだろう。大事な兄の腹に腸が出てきそうなほどの傷があることを。
再会できた感動は一気に青褪めて、兄に駆け寄ろうとしたその刹那に鬼の鉤爪が幼女の首を貫いた。
金切り声の騒ぎにひそんでいた父親が出てきて、自身の娘が狼のような化け物に食われてる様を見せられ激昂する。
化け物に戸惑い、戦い、食われる夜の風景が遠ざかっていく。
紅玉は怒り悲しむ感情を抑えるのに必死で、呆然としたまま影弥に引っ張られていた。
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